「ワクドキ…」なんてベタなネーミング

どうもですっ! 大分涼しくなってきましたが、今年の夏は“猛暑”を超えてもはや“酷暑”でしたな。そんな「クソ暑」中、富士スピードウェイにて、トヨタがメディア向けに『トヨタ ワクドキ体験会』なるイベントを行いました。

簡単に言ってしまうと国内で販売していない、つまり海外向けのトヨタ車や、コンセプトモデルが試乗できるというもの。国際C級ライセンス所有者はあのレクサスLFAの『GAZOO Racing仕様』もテストできるとのことでしたが、私、当然そんなたいそうなものは持ち合わせておりません!まあ、それでもスケジュール的には盛りだくさんだったので、早速試乗してみることにしました。
  • トヨタ ワクドキ試乗会 サイオン tc 走り|日刊カーセンサー
  • トヨタ ワクドキ試乗会 リア|日刊カーセンサー
↑全体的に乗り味は「おおらか」な印象。それでもステアリングの操作に関しては鼻先がよく動く。こういう味つけの車、日本に一台あってもいいと思うんですが・・(左) ボディのサイドラインからリアフェンダーにかけての造形はなかなか美しい。ラゲージスペースも実用的(右)

本当に欲しくなった!サイオンtC

まずは最初から目をつけていたのがサイオンブランドのスポーツクーペである“tC”。北米ではこれから投入される2代目モデルとのこと。実は個人の方が輸入された初代に乗ったことがあるんですが、エラく良かったんですね。読者の方ならわかるでしょうが、日本においては今やクーペは“絶滅危惧直前車種”。「モテ車」として栄華を極めたクーペも、もはや昔のハナシ。で、サイオンブランドは若者向け、カッコつけて言うと「ジェネレーションY」っていうターゲット向けに開発されている車です。

サイズはこちらも絶滅してしまったセリカクラスと言えば近いでしょうか。で、北米などで売っている他社も含めたクーペの美点って…あるんですね。それは「後席にもきちんと人が座れるのにデザインがイイ」ってこと。つまりtCは5人乗り、もちろん後席真ん中はかなりきつい(頭上回りなど)のですが、ヘッドレストも3人分、シートベルトだって法令化されているからではありますが、全席3点式が装着されているわけです。

現実は4名って感じですが、ちょっとした遠出でも十分行けるレベルの居住空間を確保しています。彼女と2人でもOKですが、2組のカップルでドライブするっていうにもオススメですな。
  • トヨタ ワクドキ試乗会 インパネ|日刊カーセンサー
  • トヨタ ワクドキ試乗会 エンジン|日刊カーセンサー
↑コストとデザインの絶妙さ加減が光るインパネ回り。シボの使い方とか結構ウマイと思いますよ。ただエアコンは操作はしやすいけど高級感とかなく、フツーの印象です(左) 日本には未導入の2AR-FE型エンジン。これが最終型かどうかはわからないけど、エンジンルームはちょっと素っ気ない(右)
で、デザインですが、居住性を確保しようとするとCピラーのラインとかが妙に重くなる感じを受けるんですが、これがまたなかなかにスタイリッシュじゃありませんか! ウインドウの切り方なんてレクサスっぽいぞ(褒めすぎ)。

エンジンは初代の2.4Lの直4(エスティマやイプサムに搭載)から新たに2.5Lの直4に変更。日本ではこのエンジンを搭載している車種は現在ありません。パワーも海外のサイトなどで見ると旧型より20馬力ほど向上しています。

試乗車は左ハンドルの6MT車。割とストロークはあるんですが、サクサク入るシフトを操作して走ると、まあ「気持ちイイっ」たらありゃしない。全域のトルクの太さはもちろんですが、意外なまでにアクセルのピックアップも良い。来年トヨタは「FT-86(仮称)」っという、いわゆるFRスポーツカーを世に送り出すと言われていますが、このtCもFFとはいえ、前述したボディサイズも含めて、昔自分が乗っていたAE86を彷彿させる楽しさをもっています。

世界共通!若者は“ドンシャリ”がお好き!

エクステリアが旧型より大人びた印象になったのに対し、内装は割と「若者向けにふりました!」って感じが出ているデザインです。部分によっては「コスト意識してますよ~」的なチープさもにじみ出ているんですが、まあ若者よ、そのくらいはガマンせいっ!ってところでしょうか。

で、今回試乗後にこの車を開発を担当したトヨタ第2乗用車センターの岡本浩一さん(とてもエライ人です)にお話を聞かせていただけたんですね(私のような人間に…恐れ入ります)。ドアを見て驚いたのがオーディオのスピーカーが左右それぞれに3個!これが高・中・低音用の3ウェイスピーカーであることは十分予想がついたんですが、逆にこういうものが必要なのか、と思い岡本さんに聞いてみると、「必要です(キッパリ)」と力強いお言葉。

実際、聴いてみて驚いたのが高音と低音がガンガンに強調された、いわゆる「ドンシャリ系」のメリハリの聴いた音づくり。これに関しても「いやいや北米を含め、海外の若者もドンシャリ系は実は大好きですよ。オーディオ自体はトヨタの販売部門にまかせていますが、音づくりもこのヘッドユニットはパイオニアとの共同開発で行っています」とのこと。実際、前述したほどオーバーではなく、どんなジャンルでも聴ける味つけになっていますが、やはりHIP-HOPとかに合いそうな商品でした。

素晴らしいサイオンtc!でも日本では…

試乗して「これは欲しい」と思ったtCですが、まあたぶんダメもとで岡本さんに聞いてみました。「あのー、これ日本に右ハンドル入りませんかね…」。岡本さんはちょっと困った顔をして「すみません。入りませんね、たぶん…」。ガーン!希望という言葉が一気に崩れ落ちる瞬間とはこのことだ。

「実は初代は右ハンドル仕様もあったんですが、この2代目からは左ハンドルのみで作ると会議で決まったんですよ。本当に欲しいという声が上がれば…とは思うんですが、設計は残念ながら左ハンドルのみです」とのこと。ううっ、残念。ってことは「もう今日、この試乗会以降、tCと会えなくなるってことなのね」と記念写真も撮ってしまう私。
  • トヨタ ワクドキ試乗会 サイオン tc|日刊カーセンサー
  • トヨタ ワクドキ試乗会 レクサス LFA|日刊カーセンサー
↑フロント回りはオーソドックスな造形だが、ボンネットが低く室内から視界も良い(左) GAZOO Racing仕様のLFA、搭載されるV10エンジンのサウンドは「ひょえ~っ」って体がシビれるくらい官能的(右)
しかし、改めて感じたのが、日本においてクーペというマーケットは本当にシュリンクしてしまったんだなあ、ってこと。“ミニバン天国”が悪いとは言わないですが、tCを見ると海外の若者に嫉妬(?)してしまいます。まあ、こういう時は「カーセンサーnet」でクーペのカテゴリーから検索するのが一番! 中古車ならば結構まだありますからね。クーペ好きの筆者としてはしばらくここで楽しむことにします。

さて、今回はあまりにも思い入れが強かったので、ワクドキ試乗会のリポートがtCのみの話で終わってしまったのですが、他の車種も面白いのがありましたよ。それはまた来週ってことで! ではまた!!

Text/高山正寛 Photo/尾形和美