仕事は大きな車、プライベートは小さな車。バス運転手の愛車はルノー 4(キャトル)
2025/02/06

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
いきなり目の前に現れた片思いの相手
「古い車って、オーナーを選ぶと思うんだ」
愛車を眺めながら、田口さんは答える。
昔から乗りたいと思ってはいたものの、なかなかタイミングがなかった。それでもずっと頭の片隅に置いていたというルノー 4(キャトル)。
ある日、いつもお世話になっている行きつけの車屋から、「乗りたいと言っていた車が入ったんだけど見る?」と連絡が入ったのだ。ひょんなことから、長年片思いだった相手がいきなり目の前に現れた。

“俺のことを選んでくれたのか……仕方ねえな、付き合ってやるよ”
そんな出会いから5年。今日もルノー 4で出勤する。
田口さんはとあるバス会社の運転手。毎日決まったルートを計60kmから多くて100kmほど運転している。
以前は大手企業のサラリーマンとして働き、毎日が激務の日々を送っていたが、10年ほど前に退職。
サラリーマン時代に何気なく見ていた会社近くの“運転手募集”のポスターから応募し、バスの運転手になった経歴を持つ。
「バスの運転手ってどれだけ大変でも、その日のうちに仕事が完結しますよね。前職のように次の日に仕事を持ち越さないのがすごく自分に合っていましたね。その分、1日1日は必死ですけど」
バスの始発は早いため、車通勤は必須である。ルノー 4は趣味としてドライブするだけに使うのではなく、なんと通勤車として毎日乗っているというから驚きだ。そして、「運転すること」が仕事である田口さんだが、このルノー 4は毎日運転しても飽きることがないのだとか。
大切な旧車は土日の晴れの日にサラッと乗りこなしたい、オフ会あるから動かします……という人も多いが、田口さんの場合は逆で、乗りたい大切な旧車だからこそ、メンテナンスをしっかりとしながら毎日をともにしたいのだという。


自分の元に来て最初の1年は故障はもちろん、メンテナンス箇所が多く手を焼いた。が、それはそれで愛着が湧いた。
それから今日までの4年間は、約3000kmで1回オイル交換をしたり、オイル交換3回につき1回のプラグ交換などのメンテナンスだけで済んでいて調子がいい。
おかげでちょっとそこまでの買い物から、長距離ドライブまでふらっと行けてしまう。北は青森、西は出雲までドライブしたことがあり、趣味の登山もこの車で行くほど、ルノー 4を信頼している。
「近いうちに愛車で四国を巡る旅をしたいですね」

登山の他にもうひとつ趣味がある。それは中古のCDショップに出向いてジャケ買いすること。
包み込まれる感覚のルノー4の落ち着くシートに癒されながら、実際にどんな音楽なのか吟味する時間がたまらない。
古い車ゆえ、どうしても走行中はガタガタと鳴り響いてしまうので、「せっかくの音楽鑑賞を邪魔しないでくれよ(笑)」と思うが、ルノー 4だったらまあしょうがないよなと、ひとりで愛車にしみじみする時間も良い。


そんな田口さんは根っからの車好きで、現在はルノー 4の他にもホンダ シティ、三菱 タウンボックス、ローバーミニを所有する。
以前から初代フィアット パンダやプジョー 404にも乗ってきており、 “とにかく小さい車”が大好き。プジョー 404に関しては状態がとても良く綺麗だったため、トヨタ博物館に寄贈したりと貢献もしている。
「仕事で毎日大きい車に乗ってるから、プライベートでは小さい車に惹かれちゃうのかもね(笑)」
「車は乗ってなんぼ」と田口さんは言うものの、それはメンテナンスが行き届いてるからこそ。旧車を現代車のように不自由なく乗れているのは、車愛が表現できないほど大きいからだろう。
最後に、ルノー 4は自身にとってどんな車か尋ねてみた。
「乗っている自分のことが好きになれる、素敵な車だよ」
これからも大好きな愛車と、1日1日を大切に過ごしていくのだろう。

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ルノー 4(初代)×全国
田口一郎さんのマイカーレビュー
ルノー 4(初代)
●マイカーの好きなところ/かわいい。乗っている自分のことが好きになれる
●マイカーの愛すべきダメなところ/走行中にガタガタ鳴って音楽の邪魔をするところ(笑)でも、それも含めて愛らしい
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/かわいい車を探している人。見た目以上に乗りやすくトラブルも少ないので、旧車に慣れていない人にもオススメです

自動車ジャーナリスト
瀬イオナ
車メディアの雑誌編集部員を経て、2024年にフリーランスとして独立。「走って書ける」自動車ジャーナリストを目指して修行しながら、若手ジャーナリストとして活動中している。車業界に入ったきっかけは、某動画で中谷明彦師匠を見つけたこと。現在に至るまで「ドライビング」はもちろん「ジャーナリスト」の心得など業界におけるすべてを教わりながら日々鍛錬中である。趣味はドライブ、レーシングカート、サウナ。