現役歯科医はカーレーサー! 愛車のヴィッツ RSレーシングで、世界進出に挑戦中!
2024/11/13

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
世界中を回ることを夢見る、現役歯科医のレーサー
「世界中のラリー大会に出て、多くの子供たちに歯磨きの仕方を教えたいんです」
そう語ってくれたのは、関東在住の及川紗利亜さん。正直、美しく端正な見た目からは想像できない「ラリー」という言葉に意外性を感じ、そして「歯磨き」という言葉に疑問が浮かぶ。
及川さん、実は現役歯科医師であり、かつカーレーサーでもあるのだ。

モータースポーツに参加するほど車が好きになったのは、大学入学時に自動車部の勧誘を受けたのがきっかけだった。
「誘われるがままカート場に行き、走ってみたらバトルする楽しさに目覚めてしまいました(笑)!」
大学に通った6年間は歯科医師になるための勉強の傍ら、手に入れたマツダ ロードスターで運転技術を学んだ。
そのかいあってか、電動レーシングカートレースシリーズではシリーズ優勝を飾ることができた。
歯学生がカートレースで優勝……それだけでも十分なインパクトだが、彼女の活躍はそれだけでは終わらない。実は幼少期からの憧れであったミス・ユニバースジャパンにも挑戦し、準優勝に輝いたという実績も持っている。
歯科医にレースにミス・ユニバース、一見すると全くバラバラなことのようだが、「どんなに高い目標でも諦めずに挑戦する。やるからには全力を尽くす」どれも、そんな人柄が伝わってくるエピソードだ。

今年は女性同士がイコールコンディションで競い合う女性限定のカーレース「KYOJO CUP」にも挑戦。さらに、来年は国内ラリーの「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ」参戦も目指し、着々と大きな目標に向けてステップアップしている。
そんな及川さんが今の愛車に選んだのは、トヨタテクノクラフト(TRD)が手がけるモデルで、2014年に発売したNCP131型「トヨタ ヴィッツ RS レーシング」。
「購入の決め手はロールバーが装着されていたからです! これならレースにも出れるので」とはにかむ。いえいえ、車好きにはお気持ちよ~くわかります!
大学時代の愛車であるロードスターにもロールバーが装着されていたので、未装着の車に乗ると不安を覚えてしまうという。サーキットはもちろん、勤め先の病院までの通勤や、ちょっとした買い物もこれ1台。
「5人乗りだし、家族や友人を乗せることもできますよ!」

前述のとおり、来年は「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ」に出場することを目指しており、レギュレーションに合わせた車両に仕上げている最中だ。はたから見るとノーマル然としているヴィッツだが、BRIDE製のフルバケットシートや、クスコのLSDを装備するなど、細かなカスタムは多岐にわたる。
また普段も使用しているので、もともと未装着だったサンバイザーを後付けしたり、窓に遮熱フィルムを貼ったりとDIYする箇所もあり、車の趣味に没頭している場面も見えて親近感が増してくる。



将来的には、日本のみならず、世界中のラリー大会に出場したいと意気込んでいる。
もちろん、「世界でも通用するレーサーになりたい」というストイックな理由もあるが、もうひとつ大きな理由がある。
それは、学生時代に知った「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」という先天性疾患。日本人の約500人に1人の割合で出現する比較的頻度の高い疾患で、近年は適切な時期に適切な治療を受けることができれば、機能的な障害がなく通常の社会生活を送れるほど治療方法が確立されているという。
だが、世界に目を向けるとまだまだ治療が行き届いていない地域もあるそうで、赤ちゃんで上手くミルクを飲めずに命を落とす事例や、いじめの対象となってしまう事例も起きている。
及川さんは、ラリーを通して世界中を回りながら、この口唇口蓋裂をもっと幅広く知ってもらう啓蒙活動をし、さらには子供たちに正しい歯磨きの仕方や重要性を教えることを目標としているのだ。
同時に、ミス・ユニバースジャパンでの経験を生かして、世界各地の子供や女性たちに「アジアには女性が輝けるレースがある」ことを知ってもらい、楽しさを伝えていきたいと熱く語ってくれた。
彼女の大きな挑戦は始まったばかりだが、世界中で活躍する姿が目に浮かぶ。

▼検索条件
トヨタ ヴィッツ(3代目)×全国
及川紗利亜さんのマイカーレビュー
トヨタ ヴィッツ(3代目)
●購入価格/約90万円
●グレード/RSレーシング
●マイカーの好きなところ/目立たないのに、実は本格的に走ることができる。ちなみに決め手はロールバーが入ってたこと
●マイカーの愛すべきダメなところ/この個体はちょっとキズが多いので、余裕があったら直したい(笑)!
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/モータースポーツを始めようとしている人にオススメです!

自動車ジャーナリスト
瀬イオナ
車メディアの雑誌編集部員を経て、2024年にフリーランスとして独立。「走って書ける」自動車ジャーナリストを目指して修行しながら、若手ジャーナリストとして活動中している。車業界に入ったきっかけは、某動画で中谷明彦師匠を見つけたこと。現在に至るまで「ドライビング」はもちろん「ジャーナリスト」の心得など業界におけるすべてを教わりながら日々鍛錬中である。趣味はドライブ、レーシングカート、サウナ。