車検証とは? 住所変更や再発行手続き、電子車検証などをわかりやすく解説

公道で自動車を運転する際、必ず車内に携帯しておかなければならない「車検証」。いったい何のためにあるのかご存じだろうか?

この記事では、車検証に記載されている内容や変更・再発行したい場合の手続き、昨今進むオンライン化などについて解説する。
 

 

車検証とは?

車検証とは、自動車が「道路運送車両法」の保安基準に適合し登録されたことを証明する書類で、運輸支局や軽自動車検査協会から交付される。正式名称は「自動車検査証」だ。

車検証に記載されている内容は「登録された車両の情報」と「所有者及び使用者の情報」に大別できる。それぞれ詳細は以下のとおりだ。

登録された車両の情報

・自動車登録番号/車両番号
・車台番号
・初度登録年月/初度検査年月
・自家用・事業用の別
・用途
・車名
・型式
・自動車の種別
・長さ/幅/高さ
・車体の形状
・原動機の型式
・燃料の種類
・総排気量または定格出力
・乗車定員/最大積載量
・車両重量/車両総重量
・軸重(前前・前後・後前・後後)


所有者及び使用者の情報

・交付年月日
・自動車検査証の有効期間
・帳票タイプ
・所有者の氏名・住所
・使用者の氏名または名称
・使用者の住所
・使用の本拠の位置

 

 

車検証の種類(Aタイプ、Bタイプ)

実は車検証にはA、Bの2種類が存在する。両者の違いは、所有者情報の記載方法だ。

Aタイプの車検証

一般に交付されるのがAタイプの車検証。書類左上にAと記載されている。所有者と使用者の情報欄があり、それぞれ記載されている。

Aタイプの車検証▲車検証Aタイプ(国土交通省より引用)。マーカーが引かれた箇所がBタイプとの主な違い

Bタイプの車検証

Bタイプは自動車を大量に保有するリース会社など向けの車検証。

オートローンやリースなどで車の所有者と使用者が異なる場合、所有者の名義や住所などの変更があると使用者も記載変更申請の手続きをしなくてはならない。その手間を無くすために設けられた形式なので、一般ユーザーはそこまで意識しなくても問題ないだろう。

Bタイプの車検証▲車検証Bタイプ(国土交通省より引用)。マーカーが引かれた箇所がAタイプとの主な違い

Bタイプ車検証は、国土交通省に申請することで発行される。左上にBと記載されている。使用者の情報欄は設けられているが、所有者欄はない。代わりに所有者情報は備考欄に記載されることになる。

また、Bタイプで手続きを行う際は6桁の英数字からなる「登録識別情報」が必要。所有者のみに通知されるので、使用者が手続きを行う際は確認する必要がある。

 

2023年から始まった「電子車検証」とは?

電子車検証とはその名のとおり、電子化された自動車検査証。2023年1月4日より開始され、以降に新しい車検証の交付を受ける場合は電子車検証となる。

記載事項は必要最低限で、ICタグに詳細情報を記録。ICタグに格納された情報は汎用のカードリーダーや、読み取り機能付きスマートフォンの「車検証閲覧アプリ」を介して参照できる。大きさも、A6サイズ相当になりコンパクトになった。
 

電子車検証▲電子車検証(国土交通省より引用)。紙による従来の車検証より、だいぶ小さくなった

電子化のメリットは、運輸支局へ行く必要がなくなること。手続きをオンラインで行うなど簡略化が可能で、車検に要する時間が短縮できる。ただし、任意のタイミングによる電子化は対応していないので、電子化したくても、次の車検まで待つしかない。

なお、電子車検証も従来と同様、車内に常備する必要がある。しかし、ダッシュボードの上など高温となる場所に置いたり、ICタグ部分を折り曲げたりすると、ICタグを破損する恐れがあるので注意が必要だ。

登録された車両の情報

・自動車登録番号/車両番号
・車台番号
・交付年月日
・使用者の氏名または名称
・車名・型式
・自動車の種別
・長さ/幅/高さ
・車体の形状
・原動機の型式
・燃料の種類
・総排気量または定格出力
・自家用・事業用の別
・用途
・乗車定員/最大積載量
・車両重量/車両総重量
・軸重(前前・前後・後前・後後)
・初度登録年月/初度検査年月
・車両識別符号(車両ID)
※車両ごとに不変の番号。電子化に伴い付与

ICタグに記録される事項

・自動車検査証の有効期間
・使用者の住所
・所有者の氏名・住所
・使用の本拠の位置
・帳票タイプ


 

車検証の名義変更

車検証の名義変更が必要になったら、乗用車の場合は管轄の運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会で手続きをする。車の所有者の変更なら「移転登録」、使用者の変更なら「変更登録」が必要だ。

買取店への売却やディーラー・販売店などでの下取りはお店が行うことが多い。しかし、個人間の売買や家族や友人からの譲渡といったケースでは、自分で名義変更を行うこともある。逆に、中古車を購入した場合などは、自分で名義変更などの手続きを行えば代行費用を節約することにつながる。

いずれにせよ、名義変更には以下の書類などが必要。併せて費用も確認しておこう。

普通自動車の名義変更に必要なもの

車両に関するもの・書類
・車検証
・手数料納付書
・変更登録申請書(第1号様式)
・ナンバープレート(管轄地域が変わる場合)

旧所有者のもの・書類
・印鑑証明書(発行3ヵ月以内)
・実印
・委任状(代理人が申請する場合)
・譲渡証明書

新所有者のもの・書類
・印鑑証明書(発行3ヵ月以内)
・実印
・委任状(代理人が申請する場合)
・車庫証明書

軽自動車の名義変更に必要なもの

・軽自動車
・車検証
・自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)
・新旧所有者それぞれの印鑑
・新使用者の住所を証する書面(発行3ヵ月以内)
・ナンバープレート(管轄地域が変わる場合)

名義変更時にかかる費用

・移転登録手数料:500円
・車庫証明書の取得費用(普通自動車):2500円程度(都道府県によって異なる)
・移転登録申請書:100円(地域によって異なる)
・ナンバープレート:1500円~1万円程度(希望するナンバーの種類によって異なる)
 

 

車検証の住所変更

引っ越しなどで住所が変わった場合、原則として15日以内に車検証の住所変更手続きが必要になる。

住所変更を怠ると、自賠責保険が適用されなかったり税金の通知書が届かなかったり、何より法律違反で50万円以下の罰金が科される場合がある。必ず手続きを行おう。
 

道路運送車両法 第十二条第一項
自動車の所有者は、登録されている型式、車台番号、原動機の型式、所有者の氏名若しくは名称若しくは住所又は使用の本拠の位置に変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う変更登録の申請をしなければならない。ただし、次条の規定による移転登録又は第十五条の規定による永久抹消登録の申請をすべき場合は、この限りでない。

「道路運送車両法 - e-Gov法令検索」より引用(※外部サイトへ遷移します)

普通自動車の場合は運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会で手続きをする。以下の書類などが必要になるため、きちんと把握しておくこと。

住所変更に必要なもの

普通自動車の場合
・車検証
・車庫証明書(発行1ヵ月以内)
・住民票(発行3ヵ月以内)
・手数料納付書
・委任状(代理人が申請する場合)
・ナンバープレート

軽自動車の場合
・車検証
・住民票または印鑑登録証明書(コピー可)
・自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)
・ナンバープレート

住所変更にかかる費用

普通自動車の場合
・変更登録手数料:350円
・車庫証明書の取得費用:2500円程度(都道府県によって異なる)
・ナンバープレート(必要な場合):1500円~1万円程度(希望するナンバープレートによって異なる)

軽自動車の場合
・標章交付手数料(保管場所届出が必要な地域の場合):500~610円(地域によって異なる)
・ナンバープレート(必要な場合):1500円~1万円程度(希望するナンバープレートによって異なる)
 

 

車検証のオンライン手続き「ワンストップサービス」とは?

最近では、自動車にまつわる手続きをオンラインで一括して行えるようになった。オンラインで手続きするためには、マイナンバーカードなどの電子証明書が必要で、加えてICカードリーダーや対応のスマートフォンを用意しなければならない。

24時間365日申請ができ、代行費用も節約できるなどありがたいだろう。
 

ワンストップサービス▲自動車保有手続きである「ワンストップサービス」の一連の流れ。国土交通省より引用

主に以下の手続きをオンラインで行うことができる。すべての手続きがオンラインに対応しているわけではないので注意しよう。

(1)警察署へ申請する自動車の車庫証明に関する手続(保管場所証明)
・保管場所証明申請
・保管場所標章交付申請

(2)運輸支局等へ申請する自動車の登録に関する手続(自動車検査登録)
・新車新規登録申請

(3)都道府県税事務所へ申告する税に関する手続
・自動車税(環境性能割・種別割)申告
 

 

車検証が必要となるタイミング

車検証は公道を走行する際に携帯が必須なのはもちろん、様々なタイミングで必要となる。例えば下記の手続きには、必ず車検証の提示が求められるので覚えておこう。

・自動車検査証の更新
・売却
・廃車
・任意保険加入

 

 

車検証を紛失してはいけない理由

車検証は、道交法によって公道を運転する際の携帯が義務付けられている。当然、不携帯や紛失した状態で公道を走ると道路運送車両法違反となり、最大で50万円の罰金が科せられる。
 

道路運送車両法 第六十六条第一項
自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。

「道路運送車両法 - e-Gov法令検索」より引用(※外部サイトへ遷移します)

道路運送車両法 第百九条第九項
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
九 第六十六条第一項(第七十一条の二第四項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定に違反して、自動車検査証若しくは限定自動車検査証を備え付けず、又は検査標章を表示しないで自動車を運行の用に供した者

「道路運送車両法 - e-Gov法令検索」より引用(※外部サイトへ遷移します)
 

車検証を「再発行」する方法

万が一、車検証を紛失したり破損してしまった場合、再発行の手続きをすること。管轄の運輸支局、または自動車検査登録事務所で手続きを行おう。そのときに必要な書類は下記のとおりだ。

・申請書(第3号様式)
・理由書(遺失などの理由を記載。使用者のサインが必要)
・手数料納付書
・自動車検査証(破損で識別困難な状態の場合)
・使用者の委任状(代理人が申請する場合)
・使用者または代理人の本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)

なお、理由書については申請書に理由の記入があれば提出は不要。使用者の委任状も申請書に使用者の記名があれば不要となる。
 

 

車検証に関するQ&A

Q.車検証はいつもらえる?
A.車検後に発行される。流れとしては、車検を依頼した業者が点検整備を行った後、必要な書類を運輸支局に提出、審査に通ったら車検証がもらえる。

Q.車検証はどこでもらう?
A.車検を業者に依頼した場合は、車検から1週間程度で届くはずだ。もし届かない場合は依頼した業者へ確認しよう。自分で車検を通す場合は、運輸支局もしくは軽自動車検査協会で車検時に交付される。

Q.黒ナンバーの軽バンって何?
A.通常、軽自動車のナンバープレートは乗用も貨物も黄色地に黒文字(一部の記念ナンパ−プレートは白地も存在)。一方で、「貨物軽自動車運送事業」用として届け出た車は、黒地に黄色文字の通称「黒ナンバー」となる。黒ナンバー車は税制面で優遇されるが、陸運支局に経営届出書や運賃料金表などを提出して、新たに登録する必要がある。

Q.車検証と車検標章(車検シール)の違いは?
A.車検シールの正式名称は車検標章。車検証と同様に、その車が保安基準を満たして登録されたことを証明するものだ。車両情報や所有者、使用者の情報といった詳細が記載される車検証に対し、車検シールは有効期間が満了する時期が記載。車検の更新忘れを防止する役割を担っている。なお、車検シールの貼り付けも道交法で義務付けられており、違反した場合は50万円以下の罰金が科せられる。
 

文/綱島剛(DOCUMENT) 写真/Adobe Stock、国土交通省

※記事内の情報は2023年3月13日時点のものです。