父は初代、僕は2代目……実家の古い写真がつないだ、親子のロードスターリレー
2022/03/31
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
父の古い写真を見てロードスターが欲しくなった!
若手インテリアデザイナー、児林幸輔さんが人生初の愛車として選んだのは2代目・NB型 マツダ ロードスター。
聞けば、手元にやってきてからまだ1ヵ月ほどしか経っていないとか。きっと今が一番楽しい時期に違いない。
購入の大きなきっかけは父親がその昔、初代・NA型ロードスターに乗っていたからだ。まだ児林さんが生まれる前のことである。
実家の古いアルバムに黄色と青色のロードスターを駆る若かりし頃の父の写真があり、それをよく見せてもらったのだという。
「2台とも新車で購入したものらしく、当時の彼女とドライブに出かけている様子が写ったものもありました(笑)」
そんな写真を眺めているうちに、ロードスターは児林さんにとって憧れの車になったのである。
社会人になり、仕事も安定してきたところで児林さんはついに自分のロードスターを買う決心をする。
だが、父が乗っていたNA型は購入が非現実的に思えるほどに価格が高騰していた。
現在にはないリトラクタブルライトを採用したスタイルには心惹かれたが、予算が足りないからと状態の悪い個体を買えば苦労するのは目に見えていた。
そこで比較的流通台数が多く、価格も落ち着いていたNB型を探すことにした。その次に登場したNC型も考えたが、どこか「堅い」感じがして自分の理想とは違った。
結局、納得のいくNB型の個体と巡り合うまでに約1年を要したという。
「ベージュのタンカラーの本革内装やナルディのウッドステアリングなどが標準装備された『VS』という特別仕様車です。もともとブリッティッシュスポーツカーが好きだったのでシックなボディーカラーも含めて『これだ!』と思いました」
走行距離は約5万km。乗り出しで約70万円と、現在の市場相場からするとかなりリーズナブルな価格で入手できたという。
VS専用色の「グレースグリーンマイカ」に塗られたボディは少々傷はあるものの大きな凹みなどはなく、内装の状態はまずまず。何よりホイールに至るまでフルノーマルを保っているのが素晴らしい。
トランスミッションはATだが、街を「流す」のが好きな児林さんの嗜好にはむしろマッチしていたそうだ。
父は大喜びだが、奥様は……
「いまはフリーランスでインテリアデザイナーをやっているので、取引先の店舗や商業施設などに車で行くことが多いんです。東京から長野や群馬といった地方にもこのロードスターで行くのですが、運転の楽しさに加えて、この手の車にしてはトランクが広いのが良いですよね。とても実用的なので購入してからほぼ毎日ステアリングを握ってますよ。晴れていれば屋根は常にオープンで走っています」
気持ち良く走れて実用的でしかも安い。商品力が高く、新車が売れるから中古車もたくさん流通して価格も安定する。
これこそロードスターが長きにわたって世界中で愛される大きな理由だが、中古国産スポーツカーが異常な高騰を見せる昨今にあっても何とかそのポジションを堅持しているようだ。
また、愛好者の多いロードスターは、イベントなどによるオーナー同士の交流や、情報共有が盛んであることも魅力と児林さん。
「納車後すぐに父を乗せてドライブしたんです。とても感慨深かったんですけど、やっぱり父も嬉しかったんでしょうね。『オレがお金を出すからMTに載せ替えたらどう?』と言ってくれて(笑)」
それとは対照的に、(とくに車好きではない)奥様を乗せて走ったときの反応はあまり芳しくなかったという。
奥様いわく「目立ちすぎて恥ずかしい」と。典型的な“オープンカーあるある”だ。
今後、子供が生まれて家庭を持ったらますますこういう車には乗りにくくなるだろう、ロードスターの購入を決意した理由のひとつである。
しかし、今となってはセカンドカーを別途購入してでも手放したくないほど気に入っているそうだ。
少し気が早いかもしれないが……将来児林さんのお子さんが、このNB型ロードスターの写真を見て興味を持ち、親・子・孫の3代でロードスターオーナーになることを期待せずにはいられない。
児林幸輔さんのマイカーレビュー
マツダ ロードスター
●購入金額/約70万円
●年間走行距離/買ったばかりでまだわかりませんが、たくさん乗りたいと思います!
●マイカーの好きなところ/曲線の切れ目がないボディ 、カラーリング
●マイカーの愛すべきダメなところ/いまのところ無し!
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/同じ世代の方々
ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌『MOTO NAVI』 、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産 ラルゴの他、バイク2台とたくさんの自転車。