“快適”より“楽しい”アウトドアライフにしてくれるMTのミニクラブマン
2022/03/30
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
所有するアドベンチャーバイクとの統一感を狙ったカスタム
約束のキャンプ上に到着し遠くに止まるミニを見たとき、「オーナーの愛車はミニクロスオーバーかな」と思った。でも、その割には全体的に車体が小さい。近づいてみると、それはリフトアップした初代ミニクラブマンのクーパーSであることがわかった。そうか。ミニも少し車高をいじるだけでここまで印象が変わるのか。
オーナーは長谷川鉄馬(けんた)さん(27歳)。名前を伺い、思わず「お父さんはバイク好き?」と聞いてしまった。
「息子に鉄の馬と名付けるくらいですからね。かなりのバイク好きです。僕もその影響でバイクや車が好きになりました。きっかけは父の影響ですが、趣味はかなり違います。父はレーシーなバイクを乗り継いでいましたが、僕はクラシカルな雰囲気のものが好きです」
長谷川さんが現在乗っているバイクは、ベスパとトライアンフのアドベンチャーモデル。
知人がトライアンフのバイクを引き取ってくれる人を探していると聞いたとき、カフェレーサーならぜひ乗りたいと手を上げたが、アドベンチャーモデルと聞いて断ろうと思ったという。
でも、友人から「身体が大きいのだから(長谷川さんの身長は185cmある)カフェよりアドベンチャーの方が似合うよ」と言われ、乗ってみることにした。結果は大正解! 長谷川さんはアドベンチャーバイクの世界観に魅了された。
「このクラブマンはアドベンチャーバイクの雰囲気に近づくようなカスタムを目指しました。駐車場に並んだときに統一感があると面白いなと思って」
以前はZ3でスノボに。だからミニクラブマンは十分すぎる広さ
長谷川さんがミニクラブマンを手に入れたのは2年前。最初は初代ポルシェ カイエンを中心に探していたという。
「小学生の頃に友達の家がカイエンに乗っていて、僕も何度も後ろの席に乗せてもらい『すごい車だなあ』とドキドキしていました。それを鮮明に覚えていて、相場が安くなった今なら僕も手に入れることができると思ったんです」
カイエンの対抗馬として初代ミニクラブマンを考えていたものの、気持ちはカイエンに大きく触れていた。だが、なかなか「これ!」と思えるものに出合えなかったという。そんな時になんとなくミニクラブマンを見に行ったら、たまたま理想的な1台に出合い即決した。それがこのMTのクーパーSだった。グレーのボディカラーも自分の趣味にピッタリだった。
そんな長谷川さんの趣味は、キャンプ、サーフィン、スノーボードなど。ほぼ毎週、冬はゲレンデ、春から秋は海や山に出かけている。
どれも遊びに行くときはかなりの量の荷物を持っていくことになるはずだ。正直、大型のSUVであるカイエンの方が楽だったろうに。コンパクトなミニクラブマンで不便は感じないのだろうか。
「ミニクラブマンの前はBMW Z3に乗っていて、それでスノボやキャンプに行っていました。2シーターで荷室も広くないZ3からクラブマンに変わったので、広くなって超便利という感覚しかありません(笑)」
なるほど! Z3と比べると荷室は数倍の広さだし、人だって4人乗れる。車の使い方は人それぞれ。先入観を持ってはいけないなと反省した。
それにしても、Z3でスノボやキャンプにはどうやって行っていたのだろう。
「スノーボードは短くて太い板が好みなので、助手席にギリギリ積むことができました。キャンプはバンガローを使っていたので、チェアとテーブル、コンロなど最低限煮炊きできるものがあれば楽しめます。もちろんキャンプで不便を感じることもありましたが、そこは不便を楽しもうと(笑)」
不便も楽しむ。その気持ちがあればどんな車でも大丈夫!
大きな車にたくさんの道具を積み、快適な基地をフィールドにつくるキャンプも確かに楽しいもの。でも実際にやってみると、実は持ってきたけれど使わなかったという道具もあったりする。それよりもコンパクトな装備で身軽にアウトドアを楽しみたい。仮に不便があったとしてもそれは経験として今後のアウトドアライフに役立つはずだから。
それよりもせっかく気持ちいい自然の中に出かけるのだから、目的地に向かうまでの道で思い切り走りを楽しみたい。長谷川さんはここに主眼を置いて車を選んでいる。その答えがオープンモデルのZ3、そしてMTのミニクラブマンだった。
「キャンプは車中泊で楽しんでいます。ミニクラブマンは後席を倒せば背が高い僕もちょっと足を曲げれば車内で寝られます。サーフボードやスノーボードも中積みできるし、ボードをルーフに積めばなんとか4人でスノボに行くこともできました。もしどうしても荷物が積めなかったら、一緒に行く友達の大きな車に荷物を載せてもらえばいいし」
Z3からミニクラブマンに乗り替えて、外遊びの楽しみ方はかなり広がった。Z3時代はひとつのことしかできなかったけれど、ミニクラブマンに乗り替えてサーフキャンプを楽しむこともできるようになったという。
サーフキャンプの帰り道、のんびり海沿いを走っていると「この車に乗り替えて本当によかった」と感じるという。街中でも、アドベンチャーバイクとコーディネートする形で手がけたカスタムを見て、「この形にして正解だった」と思うそうだ。
購入時に7万5000kmだった走行距離は2年間で10万kmを超えた。長谷川さんにとって非の打ちどころがないミニクラブマンだが、あえて不満点を挙げるとしたら? 最後にちょっと意地悪な質問をぶつけてみた。
「不満とは違うのですが……。最近、またオープンカーに乗りたいという衝動にかられています。風を感じながら走る気持ちよさはこの車では味わえないので」
これは一度オープンカーの味を知ってしまった人が必ず抱える悩みだろう。でも、長谷川さんにはアドベンチャーバイクもある。オープンカーはもう少し先の楽しみとしてとっておいて、今はミニクラブマンだからこそ味わえるアウトドアライフを満喫してほしい。
長谷川鉄馬さんのマイカーレビュー
ミニ ミニクラブマン(初代)
●走行距離/100,000km
●マイカーの好きなところ/何もかもちょうどよくキビキビ走って長距離も苦にならないところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/時々機嫌が悪くなるところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/こじんまりとしている車内が苦にならない人や変わったモノが好きな人
自動車ライター
高橋満(BRIDGE MAN)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL