昭和時代の商店がユニークなガレージに変貌

商店街の一角にあった空き店舗を利用してガレージハウスへと変貌させるそんな新築よりもローコストで理想の暮らしを手に入れたコンバージョンの好例をリポート。

空き店舗を使った理想のガレージハウス

私事で恐縮だが、数年前から事務所近くにシャッター付きガレージをレンタルしている。中にはオートバイ2台、自転車数台をはじめ、遊び道具を見境なく放り込んでいる。

興味のない人には、ただのガラクタ倉庫にしか見えないだろうが、私にはライフスタイルを支える大事な基地だ。そんなとき、今回のガレージハウスに出会った。そのコンセプトを聞き実物を見た瞬間「これだ!」と思った。日々の仕事に追われ、ふと肩の荷を下ろして『素』に戻れる瞬間を求めている人には、まさにピッタリの「物件」である。

ここ数年大型ショッピングセンターに押され商店街の顧客数が激減、商売継続を断念せざるを得ない店舗が増え、シャッターを閉じたままの状態となってしまう。いわゆるシャッター商店街は、増加の一途を辿っている。建築家の川田さんは、その存在に着目した。

「機能していない商店街にある、5年ぐらい放っておかれた物件を借りてコンバージョン(店舗から住宅へ転用)しています。商店街側にしてみても、空き家状態よりは防犯上のメリットがあります」

古きよき面影を残す商店街に人の動きを蘇らせ、活気を取り戻すことにも一役買っているこのプロジェクト。川田さんは、自身がそこに住むことでコンセプトを体現している。

下目黒K邸
建築家:川田健太郎

ブリコルール一級建築士事務所
tel.03-5773-8910  http://www.bricoleur.jp
所在地:東京都目黒区 主要用途:住居 家族構成:1人
構造:木造 規模:2階建 敷地面積:29.0㎡ 延床面積:46.0㎡
設計・監理:ブリコルール一級建築士事務所/川田健太郎

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村 博道 photos / KIMURA Hiromichi
構成・石井 隆 editorial / ISHII Takashi

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建物正面のシャッターを開いた先のガレージは、土間のように使えるのが特徴。休日には友人が集ってパンダのあるスペースにテーブルを置き、パーティをすることもあるという

外観をコンバージョン前のままとすることで、シャッターを閉めれば商店街に馴染んだ風景となる。だからこそ秘密基地のような雰囲気を醸し出しているといえる

上の写真はコンバージョン前の1階部分で、下が現在のものだ。ガレージ脇にバスルームやリビングスペースを設け、照明にもこだわることで、同じ建物とは思えないほど雰囲気がガラリと変わっている。バスルームの上部には2階へと繋がる階段があり、その下のスペースを有効活用することで、無駄のない空間を創造している