▲今回試乗したeKカスタム。ボディカラーは新たに追加されたショコラブラウンパール ▲今回試乗したeKカスタム。ボディカラーは新たに追加されたショコラブラウンパール

動力性能以上にボディの組み上げ技術の向上を評価したい

昨年6月にデビューを果たした三菱 eKワゴン/eKカスタム。激化する燃費競争の中でエンジニアは苦労して改善を図ってきた。

メーカーによる一部改良の概要説明はエンジンとトランスミッションの改善、そしてアシストバッテリーを搭載したという、至ってシンプルなもの。さっそく2台を試乗して実力を試してみる。

今回の改良は2WDのNAのみ。そのため試乗したeKワゴン/eKカスタムはともにNA。2車種ともエクステリアの意匠が違う部分はあるが、メカニズム的に基本的な変更はない。

1年前に試乗して以来、あらためて感じたのはシフトレバーの上下操作がリニアでなく操作しづらいという点。もっともDレンジに入れて走り出してしまえば、それほどシフトセレクターは動かさないが、基本的な心遣いはこの手のモデルでは重要である。

▲試乗したeKワゴン。ボディカラーのレッドメタリックはカスタムとともに新たに採用された ▲試乗したeKワゴン。ボディカラーのレッドメタリックはカスタムとともに新たに採用された

次にアクセルを軽く踏んでエンジンとトランスミッションの関係性を見てみる。走り出しに不満はない。できる限りエンジン回転数を上げずにCVTのギア比でトルクを稼ぎ出し、燃料を必要以上に消費しないようにしているが、発進のこの瞬間が燃費を悪くさせる。

そのため、この部分のトルクをトランスミッションで厚くしたいと各メーカーのエンジニアは考える。これは昨年よりも一層顕著に感じた。そして流れに乗ると同時に回転数を抑えながら、CVTは2段飛びのようにギア比をハイギアに移して燃費を向上させる処置が取られている。

アシストバッテリーの威力も試したいところであるが、短時間の試乗なので燃費の方ははっきりとは確認できなかった。しかし、エンジンの吸気の音とノイズも昨年より耳障りな印象はなくなり、車の性能がどこまで変化したのかは分かった。

コースト制御も細かく、少しの間でも前に進ませようとする努力がうかがえる。信号待ちで停止した瞬間にアイドリングストップ機能が働くが、再始動の際のクランキングの音が大きいと感じる。走り出しから一定速度、そして加速のために踏み込むが、レスポンスがワンテンポ遅いような印象もある。

一方、良くなった部分もある。メーカー側はアピールしないが、各部の組み上げ精度を向上させたことでドアとフェンダーのパネルの継ぎ目に違和感がなくなった。最も素晴らしいのは、乗り心地が良くなりバイブレーションが低下した部分だ。たっぷりとしたサスペンションストロークで大らかに路面からのうねりを吸収し、小さな凸凹でもゴツゴツを感じさせずに受け止める。

▲バイブレーションが低下することでコーナー走行時も安定して走れる ▲バイブレーションが低下することでコーナー走行時も安定して走れる

発売当初からeKワゴン/eKカスタムは、サスペンションをよく動かすセッティングだと感じられた。滑りやすい路面や強風による影響を抑えるため、ロールも意図的に作り出している。街中から高速まで乗り心地はとても良好だ。

動力性能の向上という試乗会であったが、私としては組み上げ精度が向上した結果、乗り心地の良さをさらに感じた印象が強い。

【SPECIFICATIONS】
■車名:eKワゴン
■グレード:G ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直3DOHC ■総排気量:659cc
■最高出力:49/6500[ps/rpm] ■最大トルク:56/5500[N・m/rpm]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:CVT
■全長×全幅×全高:3395×1475×1620(mm) ■ホイールベース:2430mm
■車両重量:830kg
■車両本体価格:127万5480円(税込)

■車名:eKカスタム
■グレード:G ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直3DOHC ■総排気量:659cc
■最高出力:49/6500[ps/rpm] ■最大トルク:56/5500[N・m/rpm]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:CVT
■全長×全幅×全高:3395×1475×1620(mm) ■ホイールベース:2430mm
■車両重量:840kg
■車両本体価格:140万7240円(税込)


Tester/松本英雄 Photo/尾形和美