随所にBMW流を感じる乗り味、 CVTの出来は秀逸

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コンセプト

ひと目でそれとわかるミニの遺産は偉大だけど

なぜかわからないが、可愛いという感情がわき上がる。それはまるで、ウェルシュコーギーの子犬を見た時の感覚にも似ている。愛嬌いっぱいだけど、ただの愛玩犬ではないという目的意識を感じさせる体つき。どこか郷愁を誘う姿は、それだけで価値があると言えるのではないだろうか?

ミニワン/クーパーは、クラシックと表現されるアレック・イシゴニスのミニを、BMWのクオリティをバックに現代流に表現しようとしたものだ。乗るとまったく異なる感覚の持ち主であることがわかるのだが、見た目やタッチなどの随所にオリジナルミニのモチーフがうまく織り込まれている。

これを新展開と取るかレトロと見るか。とらえ方は様々だろうが、気分や雰囲気を最新技術で再生させるいき方は、基本的にありだ。
室内&荷室空間

パッケージングよりも外観のデザインを優先

率直に言って、パッケージングについてはあまり見るべきところはない。2465mmのホイールベースと1425mm(ワン)、1690mmの全高、全幅をもつFF2ボックスとしては、もっと室内空間の余裕を実感させる努力がなされてもいい。この21世紀のミニをオリジナルと同じ視点で評価しようとすると、どこか脆弱な車に見えてしまう。それはたぶん、コンパクトなボディに最大限の居住空間を得るという近代合理主義とはまったく別の、“んなことよりまずカッコ良くて上質で楽しく過ごせる空間であればそれでいいじゃん”という現実主義に基づくものだ。

哲学的思想的深みこそないが、ここで難しいことを言ってもあまり意味がない。スペースの有効利用に汲々としていない分、デザイン的に余裕が感じられるからだ。
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ドライブフィール

基本グレードのワンで走りは必要十分楽しめる

CVTのラインナップは朗報。新生ミニは、ドライビングインターフェイス回りがタイトに仕上がっている。わたしとしては、コンパクトカーは基本的にマニュアルで走らせたいと思っているが、フットスペース不足は気になるところ。またクラシックミニのラバーコーンサスによる走りをモチーフにしたハンドリング(カート感覚の味わい)とのバランスを考えても、シフトフィールはもう一つ雰囲気が良くないのだ。だから出来の良さも含めてCVTを勧める。

動力性能的にはワンでも十分軽快な走りが楽しめるはず。クーパーとのパワー差は26psということだが、体感的には違いはない。むしろパワー感を強調したエンジンの演出や10mm車高を下げて固めたサスペンションのセットアップなどは、やりすぎの感さえある。
こんな人にオススメ
今度のミニは基本的に指名買いの車。スタイリングを見て良いと感じたかどうかが第一の関門で、OKなら自分の感覚を信じて積極的にアプローチすればいい。競合他車を設定して、細々と横比較をして選ぶ車ではない。ワンにもクーパーのカラーリングを用意してほしいなあ。
SPECIFICATIONS
グレード COOPER
駆動方式 FF
トランスミッション CVT
全長×全幅×全高(mm) 3625×1690×1415
ホイールベース(mm) 2465
車両重量(kg) 1140
乗車定員 4人
エンジン種類 直列4気筒SOHC
総排気量(cc) 1598
最高出力 85kW(116ps)/6000rpm
最大トルク 149N・m(15.2kg-m)/4500rpm
車両本体価格 235.0万円
写真:渡邉英昭 文:伏木悦郎