デザイン、走り、その存在自体が真のグランツーリスモと呼べる出来

(Tester/西川淳 Photo/向後一宏)

コンセプト
11年ぶりに市場へ投入する流麗なボディをもつクーペ

アウディ A5 フロントスタイル|ニューモデル試乗アウディ A5 リアスタイル|ニューモデル試乗アウディ A5 インパネ|ニューモデル試乗
 アウディにとっては久方ぶりとなる欧州Dセグメントクラスの2ドアクーペである。ライバルはもちろん、BMW3シリーズクーペやM・ベンツCLKクラス。スカイラインクーペあたりも同格である。
 このA5は、遅れて登場する新型A4のクーペ版。新プラットフォーム採用の恩恵で、“FFクーペ”にはあるまじきクーペスタイルを実現できたことが最大の特徴だ。
 新プラットフォームでは、ドライブシャフトをクランクケース下まで約100mm前進させ、前軸位置をほぼエンジン重心にもってくることに成功した(昔のホンダアコードインスパイア風)。故にフロントオーバーハングが抑えられ、サイドシルエットと前後タイヤの位置関係がまるでFRクーペのようにまとまったというわけである。

室内&荷室空間
所有する喜びに十分浸れる高い質感をもつ内外装

アウディ A5 フロントシート|ニューモデル試乗アウディ A5 リアシート|ニューモデル試乗アウディ A5 ラゲージ|ニューモデル試乗
 デザインだけではない。内外装の見映え質感の仕上げはアウディの得意とするところだが、さらに磨きがかかった。エクステリアでは、パネル合わせなどといった細かな話ではなく、デザインで質感豊かにする工夫がなされている。見るたびに違う表情を見せる凝ったライン構成はクーペを所有する喜びに直結するものだ。
 インテリアはデザイン、マテリアル、機能などすべてにおいて、決して新しくはないけれども非常に高いレベルでまとめられた。正直、Dセグメントでここまで隙なく仕立てられると、ライバルはおろか上のクラスでも歯が立たない。
 着座位置が低くゆったりと座れる点も、ラグジュアリィクーペらしくていい。コンテンポラリーな内外装だけでもA5には価値がある。

ドライブフィール
アウディらしさを残しつつ、上質感もプラス

アウディ A5 走り|ニューモデル試乗アウディ A5 エンジン|ニューモデル試乗アウディ A5 トランスファーレバー|ニューモデル試乗
 試乗車は3.2LV6FSIエンジン+ティプトロニック付き6速AT+クワトロ(4WD)搭載車。他にV8FSIクワトロを積むS5が存在する。
 走り出してすぐに感じるのがフラットなライド感覚。凸凹のある路面をさらっとなでるような乗り心地で、小気味よく心地もいい。
 街中で感心したのは乗り心地だけでなく、取り回しの良さもだった。あごの出っ張りがそれほどない、という精神的な余裕と、リニアなノーズの動きが相乗して、これまでのアウディにはなかった扱いのやさしさを実現している。
 基本的には極めて現代アウディらしい、節々のかっちりしたメリハリの利いた走りを見せるが、上級モデルのようなしなやかさも加わった。もちろん、定評あるV6エンジンは十二分にパワフルである。

こんな人にオススメ

上代約700万円ですから贅沢なクーペですね。その贅沢さが高いレベルの満足度に至るという点で、ライバルより勝っていると思います。アウディが好きな人、よりも今何か上質なパーソナルカーが欲しいと思っている人にこそ乗ってほしい。3分の2でスカイラインクーペが狙えますが、予算に余裕があるのであれば一考の価値アリだと思います。いいクーペです。
主要諸元のグレード 3.2FSI クワトロ 
駆動方式 4WD
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4625×1855×1375
ホイールベース(mm) 2750
車両重量(kg) 1670
乗車定員(人) 4
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3196
最高出力[kW(ps)rpm] 195kW(265ps)/6500rpm
最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 330N・m(33.7kg-m)/3000~5000rpm
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/63
車両本体価格 695万円