パワー十分、フィールは絶品。伝統の直6を載せたベストX5

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コンセプト

サルーン並みの快適性+スポーツカー並みの走り

見た目はベタな4駆車。でもハンドルを握れば、走りは呆れるほどスポーティ。もちろん、全世界の自動車屋さんにとって最大のマーケットであるアメリカに、受け入れてもらいやすい品物をという商売的な都合はあるにせよ、X5はBMWらしいプレミアムをそのまま保ちつつ、爆発的な動力性能と緻密な運動性能を最大のウリとする、実に“らしい”高速型SUVとしてデビューした。

が、ポルシェに噛みつこうかといわんばかりの馬鹿力、286psを放つ、4.4LV8エンジン搭載の4.4iの1グレードではいくらなんでも物騒すぎるだろう、ということで追加されたのが、マイルドにして廉価な3.0i……、と考えて間違いはないと思う。実際、日本での価格設定も戦略的なもの。つまり、こちらが本筋と。
室内&荷室空間

実用性<スタイルというBMWならではの物差し

室内構成は先発した4.4iとほぼ同一。装備品に関しても見劣りしないが、レザーシートはオプションパッケージとなる。標準装備されるナビは、DVDロムを用いたものだが、使い勝手がいま一つなのは、輸入車の常。それでもBMWの使い勝手は他の輸入車に比べて幾分はこなれている。

このテの車種にしてはやや低い室内高の影響から、X5は確かに乗降性や居住性の面で若干泣いている感はある。また、リアの荷室も膨大なほど大量に確保されているわけではない。

もちろんこれらがX5の真価を直接測る問題ではないことは、あまたある同系車の中からあえてこれを選ぶお客さんが一番よく知っているはず。要は走ってナンボやねんということである。
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ドライブフィール

動力性能に全く不足なしむしろ積極的に選びたい

BMWご自慢かつ世界的名器である3L直6が、2t超の巨体を実に気持ちよく走らせる。緻密かつ繊細なフィールにして、全域で骨太なトルクを湧き出させるその裏腹ぶりには、驚かされることしきり。街中でも山道でも悪路でも、すべてのシーンで全く不足がない。豪傑ぶりが目立つ4.4iと比べて、かえって3.0iのほうが躊躇なく、心地良く使えるはずだ。

もちろん3.0iはノーズ回りが劇的に軽い分、運動性能も輪をかけて清々しくなっている。特にブレーキを使うときや下り坂でのコーナー進入時に感じる、フロントにドサッとのしかかる荷重移動の圧迫感が4.4iに比べて随分軽減された点は、一般ドライバーのストレス軽減という意味においても、大きいと思う。
こんな人にオススメ
パワーにまかせてガンガン飛ばせる分だけ、万一足をすくわれたときの危険も大きい、というのが高速型SUVに対する僕の自論。でも3.0iは、そんな心配を忘れさせるほどの好バランス。“流行り&イバリモノ”だからと乗るのではなく、飽きずに長くX5を使いたい方に、マジでお勧めします。
SPECIFICATIONS
グレード 3.0i
駆動方式 4WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4665×1870×1705
ホイールベース(mm) 2820
車両重量(kg) 2080
乗車定員 5人
エンジン種類 直列6気筒DOHC
総排気量(cc) 2979
最高出力 170kW(231ps)/5900rpm
最大トルク 300N・m(30.6kg-m)/3500rpm
車両本体価格 648.0万円
写真:桜井健雄 文:渡辺敏史