もはやアッパーサルーンの領域。M3、洗練極まれり

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コンセプト

BMWの激速仕様にしてプレミアムたる存在

現行E46型3シリーズクーペのプラットフォームをベースとして、BMWの関連チューナーであるMGmbH社の手によるハイチューンドNAエンジンを突っ込んだ激速仕様。もちろん車体もそんなエンジンに合わせたリセッティングが施され、ポルシェ911をも射程に収めるコンパクトFRスポーツに仕上げられている。

E30型から始まった歴代のM3はその圧倒的な走りのパフォーマンスに加え、一見フル装備の3シリーズという冷静な佇まいももち、“羊の皮を…” 的情緒を醸し出すことから、日本でも数多くの固定客を獲得した。今やブランドイメージという面においてもBMWのアイコンとなりつつある。今回国内デビューを果たした新型は、そんなM3の3代目モデル。
室内&荷室空間

素モデル比でかつてない差別化を図った外観

通常グレードに「M-Sport」仕様を用意するなど、“M”がもつスポーティなイメージを積極的に拡販に利用しているBMWだけに、通常グレードに比べて室内で大きく変わる点はない。素の3シリーズオーナーが注文装備でも手に入れることのできないモノは、エンジンの使用状況に応じてレッドゾーン領域をLEDで示すタコメーターや、専用意匠のホイールくらいだろう。もちろん、居住性や積載性などのユーティリティも全く犠牲になっていない。

ただし、冷静な佇まいを持つ歴代M3とは違い新型は、外観が通常グレードに対して明確に違う。大きく盛り上がったエンジンフードやワイドタイヤを収めるフレアーフェンダーが、自らが“真性M”であることを果敢にアピールしている。
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ドライブフィール

意外なほどに使いやすい上質のスポーツサルーン

試乗は雨の富士スピードウェイ。当然僕の手に負えるタマではないだけに、恐らく能力の半分も出し切れていないことはお詫びしたうえで、一番びっくりさせられたのは、改良を加えられた伝統の直6ユニットが前型比で大きく洗練されていたことだった。

例によってウルトラスムーズなエンジンは、排気量3.2Lにして343psというハイチューンがウソのように扱いやすい。相当ずぼらなシフトワークでもそれを受け止める柔軟性を持ち合わせつつ、アクセルを踏み込めばそのまま250km/hのリミッターまで、実にクリーンな加速を披露してくれる。このドライバーを選ばない間口の広さは、M3をアッパーサルーンとしてとらえる層を囲い込むうえでは、大きな材料となるはずだ。
こんな人にオススメ
いわゆるキレた走り屋好みのわかりやすいソリッド感は薄らいだものの、万人を受け入れる寛容さは大きく向上した。ただし相変わらず100km/hからの車であることに変わりはなし。大の大人がすべてをまかないながらハメも外せる1台としての存在感は唯一無二にして絶大という印象。
SPECIFICATIONS
グレード M3
駆動方式 FR
トランスミッション 6MT
全長×全幅×全高(mm) 4490 x 1780 x 1370
ホイールベース(mm) 2730
車両重量(kg) 1550
乗車定員 5人
エンジン種類 直列6気筒DOHC
総排気量(cc) 3246
最高出力 252kW(343ps)/7900rpm
最大トルク 365N・m(37.2kg-m)/4900rpm
車両本体価格 786万円
写真:武田忠廣 文:渡辺敏史