BMW 3シリーズ 【プレイバック試乗記】
カテゴリー: BMWの試乗レポート
タグ: セダン
2009/07/17
※この記事はカーセンサー関東版2号(2001年1月11日発売)に掲載されていたものをWEB用に再構成したものです
ライバル達に差をつける次世代のM54型エンジン
↑新型6気筒エンジンとATの賢さでどのグレードも“十分”な仕上がり(左)オフロード走行などで、ボディ下部への損傷を防ぐため、最低地上高は330iセダンに比べて20mm高くなっている。また、車両重量は80kg増加している(右)
従来の328iや323i、320iのM52型に変わるBMWの次世代エンジンM54型は、大幅な出力アップはもちろん、アメリカやヨーロッパの厳しい環境基準をいち早くクリアした低公害な高性能エンジンだ。M3を除くと3シリーズ最大の直6DOHC24バルブユニットで、330iに搭載される3LのM54型が一足早く発表されていた。その330iの後を追うように、今回のビッグマイナーチェンジでM54型を搭載するのが2.5Lの325iと“2.2L”の320iの2車種だ。これで6気筒モデルはすべてM54になったわけだが、これは続々とデビューしてくる多くのライバル達に対する先制パンチともいえよう。また、エンジンの世代交代と同時にATミッションのシフト制御も見直されて、さらにドライバーの意思に忠実になった。心臓部の変更がメインだが、細部ではドアハンドルが従来までの手前に引くタイプから上方向に引き上げるタイプに変わった。
先代のM3を思わせるパワフルな走りのxi
↑xiのインテリアはウッドパネルを採用するなど、セダンと同様となる
(左)新型M54エンジンは平成12年排出ガス規制をクリアしている。写真は3Lモデル
(右)
まずは330xi。3シリーズとしては2世代ぶりに復活したフルタイム4WDセダンだ。このクラスで4WDというとアウディA4が代表格だが、やはりBMWならではのハンドリングをもった4WDに乗りたいという需要に応えたラインナップだ。
前後50対50の優れた重量配分が成せる業か、駆動力は前輪に38%、後輪に62%を配分する。前後で配分が違う理由は、駆動する前輪からの影響を最小限に抑えて、BMWらしいハンドリングを得るためだ。乗ると、感覚的にだが、3L時代のM3と大きな違いはないな……、と思わせるほどM54型3Lは低回転から驚くほどトルクがあり、しかも回せばパワフルだ。ノーマルセダンより80kgの重量増加だが、クロスレシオの威力で並べて加速競争してもその差は体感できないレベル。
試乗コースに滑りやすい場所はなかったが、ノーマルよりも明らかに4輪で路面をとらえている感覚が強い。コーナーでアクセルを踏んでいっても、ロールは増えるが4WDを意識させるアンダーは出ない。約20mm車高は高いが、見た目の不安定感とは違い前後輪で吸いつくように走る。残念なのは最大の3Lエンジンと左ハンドルのみということ。ボディもツーリングのほうが需要は多いだろう。
どの排気量に乗っても“これで十分”の仕上がり
↑スポーツは専用エアロパーツ、ホイールやサスペンションなどが装着される
(左)燃費も向上し、10・15モードで旧2Lの9.7km/Lから2.2Lは9.8km/Lへと向上した
(右)
330i、325i、320iの順で試乗したが、普通、最もパワフルなエンジンに乗った後では、それ以下の排気量はどれも物足りなく感じるものだ。しかし325i、320iのその都度に「これで十分じゃないか」というのが正直な感想。M54型の特性がそうなのだろう。出足からの軽快さは排気量が小さくなっても衰えるどころか同じ感覚。そこから上、つまり中速トルクにそれぞれの差はあるが、6気筒サウンドを含め魅力のユニットには違いない。パワーだけで判断するのは正しくないが、325iは従来の328iに1ps差に迫る192ps。320iは従来の323iと同じ170psと十分なパフォーマンスを実現している。
また、従来の328iに代わりツーリングの6気筒は325iになっている。新エンジンとともにATミッションの制御もより洗練されている。街乗りの渋滞でも素早く加速したい場合はアクセルを踏み込む速さを敏感に感じ取って、ギアを選び出す応答の速さは、MTのようにダイレクトだ。出足がトロかったが後伸びの328iが街乗りでは決して乗りやすいとはいえなかったことに比べれば、325の低中速域のアクセルに忠実なダイレクト感は実に気持ちいい。
今までより小排気量で同等のパフォーマンスに
↑Mスポーツのインテリアはカーボン調パネルなどが装備されスポーティな印象に(左)Mスポーツはレザーとアルカンタラを使用したシートが標準装備される(右)
4気筒の318iにはノーズの軽さによるハンドリングの軽快さがあって、それはそれでいいのだがBMWといえば6気筒という人には、320iで十分だ。従来のM52よりもワンランク下の排気量で同等のパフォーマンスが得られるだけに、ベストといわれた323の代わりが6気筒としてはベーシックな新型320iに相当する。328iに代わる330iはというと、よほど“速さ”にこだわるオーナーでなければ、3のボディに対してはオーバークオリティにすぎない。ベストは325i。というのが今回のエンジンメインのマイナーチェンジのボクの総括。この驚くほどの違いはぜひ自分の手で確かめてほしい。
SPECIFICATIONS
主要諸元のグレード | 330xi | 320i |
駆動方式 | 4WD | FR |
トランスミッション | 5AT | |
全長×全幅×全高(mm) | 4470×1740×1435 | 4470×1740×1415 |
ホイールベース(mm) | 2725 | |
車両重量(kg) | 1600 | 1440 |
乗車定員(人) | 5 | |
エンジン種類 | 直6DOHC | |
総排気量(cc) | 2979 | 2171 |
最高出力[kW(ps)/rpm] | 170kw(231ps)/5900rpm | 125kw(170ps)/6100rpm |
最大トルク[N.m(kg-m)/rpm] | 300N.m(30.6kg-m)/3500rpm | 210N.m(21.4kg-m)/3500rpm |
10・15モード燃費(km/L) | - | |
ガソリン種類/容量(L) | 無鉛プレミアム/63 | |
車両本体価格 | 562.0万円 | 418.0万円 |
桂 伸一の責任採点
コンセプト | 5点 | 取り回し | 5点 | 加速性能 | 5点 | ブレーキ性能 | 4点 |
フィニッシュ | 5点 | 操作系の使い勝手 | 5点 | 乗り心地 | 5点 | 環境対策 | 5点 |
前席居住性 | 5点 | ラゲージルーム | 5点 | 操縦安定性 | 5点 | 燃費 | 4点 |
後席居住性 | 5点 | パワー感 | 5点 | 高速安定性 | 5点 | ステータス | 5点 |
内装の質感 | 5点 | トルク感 | 5点 | しっかり感 | 4点 | コストパフォーマンス | 3点 |
得点合計 | 95/100 |
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