トヨタ×スバルの特性を生かした走りを体感! 発売が待ち遠しい!!
トヨタ 86|日刊カーセンサー
短時間かつ、速度制限がかけられた特別コースでの試乗ではあったが「そんなことは関係ない」と思えるほど、スムーズに車は旋回する。水平対向エンジンによる低重心のコーナリングは、どの速度域でも誰でもが体感できるほど

ついにこの日がやって来た。2009年の東京モーターショーで「衝撃」と言えるデビューを飾ったFT-86。あれから2年、来年の発売を目指すその86(ハチロク)のプロトタイプに試乗するチャンスがやってきた。

私事で恐縮だが、筆者はもとAE86(スプリンタートレノ)のオーナーだった。チーフエンジニアの多田哲哉氏は「過去86に乗っていた40~50代の人はもちろんターゲットですけど、若い人にも車を操る楽しみを感じてほしい」と言う。話を聞いているだけでも86に懸ける情熱がビンビン伝わってきて、こちらも胸が熱くなる。

そして、ついに実車とご対面。見るだけでわかるロー&ワイドフォルム、フロント回りはあの「レクサスLF-A」を彷彿させる、今にも走り出しそうな躍動感あるデザインだ。ちなみにパッと見ただけでこの車は3ナンバーだとわかる全幅なので、5ナンバーだったAE86ユーザーは一瞬「ちょっと大きい?」と思うかもしれないが、実は取り回し性能にも優れており、ボディの大きさはそれほど感じない。

トヨタ 86 リアスタイル|日刊カーセンサー トヨタ 86 インパネ|日刊カーセンサー

4300mmを切る全長、3ナンバーボディ、そして1300mmないであろう全高など、すべてが走りの楽しさのために設計された。リアスポイラーは、おそらくオプション設定となるはずだ。インパネはシンプルな造形だが、随所に走りのためのこだわりが感じられる。ステアリングを握った感覚では、トヨタ車の中では最も小径なのでは?という印象を受けた。フィーリングも悪くない
事前レクチャーを受け特別コースに車を進める。最初のコーナーを抜けて驚いたのが、コーナリングの時の車の動きだ。速度制限のある特別コースでの試乗のため、大した速度ではないが、とにかく重心が低く、車の動きが自分がイメージしたとおりにスムーズなのである。

連続するコーナーをあくまでもスムーズに駆け抜ける86。軽量ボディ&FR駆動に、スバルとの共同開発による水平対向エンジンの組み合わせは、1+1を3にするほど、時代に合った進化が感じられるのである。

トヨタ 86 ヘッドライト トヨタ 86 サイドエンブレム|日刊カーセンサー トヨタ 86 リアデザイン|日刊カーセンサー
エクステリアまわりのパーツは、左右2本出しマフラーなど、スポーティな印象を受けるアイテムばかり。サイドのエンブレムは、「86」という車名と水平対向エンジンのピストンを合わせたもの
試乗では6速MT&6速ATの両方に乗る機会に恵まれたが、MTは適度なストローク感でギアがどのポジションに入っているかがわかりやすい。こういう性格の車だと、「ATは…」とか言う人もいると思うが、心配は無用。このATはマニュアルモードにするとロッ クアップ(直結)制御が積極的に働くようなので、MT車的なダイレクト感を味わうことができる。

そして、最後はエンジンである。元々振動の少ない水平対向エンジンゆえに、「7000回転までは余裕で回る!」とキッパリ宣言しよう。音のチューニングも最終型ではないにしろ、結構気持ちがいい。

トヨタ 86 エンジン|日刊カーセンサー トヨタ 86 シフト|日刊カーセンサー
エンジンを見て何よりも驚くのが上下に並んだ「TOYOTA」「D-4S」「BOXER」「SUBARU」のロゴ。トヨタとスバルのもつそれぞれの技術がフュージョン(融合)した瞬間を感じた。プロトタイプとして用意されていたボディカラーは7色だった。市販モデルもこのままのはず
この86は、東京モーターショーでいよいよ実車を目にすることができる。発売は来年2月でほぼ間違いないだろう。価格は中心価格帯が230万円前後と言われている。あくまでもこれらは予想だが、予想したくなるほど、ワクワクさせてくれたのこの86。期待していいと断言できる。

この車の登場によりスポーツカーの中古車市場も活性化されることを期待して◎(二重丸)を付けておこう。



Report/高山正寛 Photo/篠原晃一