日本. ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:マティアス・ミューラー)は3月26日、フランスのポール・リカール・サーキットにおいて、ル・マン・プロトタイプカーである919ハイブリッドの第2世代となる2015年仕様を3つの異なるカラーリングで初公開いたしました。
また、ポルシェはLMP1クラスにおける4つのエネルギーカテゴリーのトップカテゴリーへの移行を表明いたしました。エネルギー回生システムの性能を2014年モデル比で約33%向上させることに成功したことで、919ハイブリッドは昨年の6メガジュールから8メガジュールカテゴリーで競うパフォーマンスを得ています。2014年から新たに採用された画期的なFIA世界耐久選手権(WEC)のレギュレーションは、パワフルで革新的なハイブリッドドライブの採用が必要とされています。これはポルシェが世界最高峰のモータースポーツへの復帰を決意した理由でもあります。

ポルシェ チームは、大幅に進化したテクノロジープラットフォームである2台の919ハイブリッドをWECの全8レースに投入します。ボディカラーはホワイトで、「Porsche Intelligent Performance」のロゴがボディに掲げられます。5月2日のスパ・フランコルシャン戦に参戦するチームの3台目の919ハイブリッドもこれと同じ外観となります。ただし、シーズンのハイライトである2015年6月13日/14日に開催されるル・マン24時間レースでは、ホワイト、ブラックおよびレッドのポルシェ919ハイブリッドが登場します。

ポルシェAGの研究開発担当役員であるヴォルフガング・ハッツは、南フランスにおけるLMP1プロトタイプのプレゼンテーションにおいて、次のように語りました。「ポルシェのLMP1プログラムは、私達の革新的なドライブコンセプトに取り組むエンジニア達が広範に張り巡らせたネットワークと集中的な協力体制で運営されてきました。これにより、私達はライバルたちとの差別化を実現しており、このカテゴリーでさらに力を付けていきます」とハッツは述べています。「この目的を達成するためには、社内に相当なノウハウが必要です。WECのトップカテゴリーであるLMP1への参戦は非常に大きなプレッシャーとなり、市販車の開発陣は短時間できわめて多くを学ぶことができます。また、若いエンジニア達にとっては非常に速いペースで最高のトレーニングを受けることになり、後にその知識は非常に効率的に市販車に適用することができます。公道での日常走行のためにサーキットから学ぶことは、ポルシェの伝統です。よって、私達のル・マン・プロトタイプにモータースポーツの伝統的なカラーリングを部分的にも関連付けることは、完全に理に適ったことなのです」。WECのレギュレーションは、最も効率的な車両が優勝するように策定されています。自動車業界全般も、存続するために同じアプローチを取る必要があります。ポルシェは、今日すでに市販プラグインハイブリッドモデル3車種をラインナップしています。

レッドのプロトタイプのカーナンバーとカラーリングは、ル・マンで今日まで16回の総合優勝を数えるポルシェの1970年に初優勝を飾った車両へのトリビュートです。世界で最も過酷な耐久レースであるル・マンで、これほどの多くの優勝を挙げているメーカーは他に存在しません。45年前の1970年6月14日に優勝した「ザルツブルク・ポルシェ917 KH(ショートテール)」のベースカラーがレッドでした。そのときの優勝ドライバーは、現在87歳のドイツ人、ハンス・ヘルマンと今日74歳の誕生日を迎えたイギリス人、リチャード・アトウッドでした。2015年、第83回目の開催を数えるル・マン・クラシックにおいてスターティングナンバー17をつけたレッドのプロトタイプをドライブするのは、ティモ・ベルンハルト(34歳、ドイツ)、ブレンドン・ハートレー(25歳、ニュージーランド)、およびマーク・ウェバー(38歳、オーストラリア)です。

カーナンバー18のブラックのポルシェ919ハイブリッドは同様にハイブリッドドライブを搭載したスーパースポーツカー、ポルシェ918スパイダーをシンボルとしたカラーリングが特徴です。2013年9月4日に、ニュルブルクリンクの20 km以上の北コースで公道仕様車として6分57秒の新記録を樹立したのがブラックの918スパイダーでした。このときのドライバーは、ドイツ人のマルク・リーブ(34歳)でした。リーブは、ロマン・デュマ(37歳、フランス)とニール・ジャニ(31歳、スイス)と共に今年のル・マンでもブラックの919をドライブします。

チームの3台目の車両、カーナンバー19の919ハイブリッドのホワイトのボディカラーは、16年のブランクを経て最高峰のレースへの復帰に向けてポルシェが選んだカラーです。ホワイトは、ドイツのレーシングカーの伝統的なカラーで、GTE Proクラスに参戦する2台のポルシェ911 RSRワークス車両にも使用されます。このホワイトカラーを纏った919ハイブリッドはル・マンでは、アール・バンバー(24歳、ニュージーランド)、F1ドライバーのニコ・ヒュルケンベルグ(27歳、ドイツ)およびニック・タンディ(30歳、イギリス)がステアリングを握ります。

919の進化:より効率的、より堅牢、よりコントロールしやすいハンドリング、より軽量、そしてよりタフ

ル・マン・プロトタイプクラス1(LMP1)の基本コンセプトは、919ハイブリッドの第2世代にも引き継がれていますが、事実上すべてのコンポーネントが改良されています。次の進化段階に対する野心的な目標は、車両をより効率的、より堅牢、よりコントロールしやすいハンドリング、より軽量としながら、よりタフなものとすることでした。

919ハイブリッドには、リアアクスルを駆動する500PS以上を発揮する2リッターV4ターボガソリンエンジンと、フロントホイールを駆動する400PS以上を発生するモーターが搭載されています。モーターには、2つのエネルギー回生システムから電力が供給されます。液冷リチウムイオンバッテリーが、フロントアクスルの制動エネルギーから変換されたエネルギーと、排気ガスから変換されたエネルギーを一時的に蓄積します。見直された駆動システムは、よりパワフルでより効率的なものとなっています。ポルシェ919ハイブリッドは、2015年、初めて最上位のエネルギー回生カテゴリー(ル・マン1周あたり8メガジュール)のホモロゲーションを受けました。

車両の軽量化と総合的な剛性アップ、さらにサスペンションとエアロダイナミクスの最適化により、ハンドリングが向上しています。大幅な軽量化に成功すると同時に、エンジニア達は特定の主要コンポーネントの強度を高めることに成功しました。

2015年のFIA世界耐久選手権(WEC)、4月12日から開催

3月27日/28日にフランスのポール・リカール・サーキットでWECのフルメンバー参加で行われるテスト、いわゆるプロローグが開催され、これに続き4月12日にはシルバーストーン(イギリス)でWECの2015年シーズンが開幕します。すべてのWECレース(ル・マンを除く)は、6時間レースとなります。チャンピオンシップは、5月2日のスパ戦(ベルギー)、6月13日/14日のル・マン(フランス)と続きます。新たに追加された8月30日のニュルブルクリンク戦(ドイツ)の後、WECは欧州を離れ、9月19日にテキサス州オースチン(米国)で開催されます。その後の2戦は10月11日に富士スピードウェイ(日本)、11月1日に上海(中国)でそれぞれ開催されます。そして、11月21日のバーレーン戦でフィナーレを迎えます。

LMP1担当副社長であるフリッツ・エンツィンガー(オーストリア)が率いるチームは、ヴァイザッハのポルシェ研究開発センターに拠点を置き、230名以上の従業員を擁します。そのうち100名以上がエンジニアで、テクニカルディレクターであるアレクサンダー・ヒッチンガー(ドイツ)の下で働いています。チームディレクターであるアンドレア・ザイドル(ドイツ)は、運営に関する総責任者です。「チーム全員が、2回目のシーズンを興奮のうちに心待ちにしています」とエンツィンガーが語ります。「私達は、4つのサーキットで合計26,675 kmにもおよぶ新型ポルシェ919ハイブリッドの単独テスト走行を行いました。現在、私達はここポール・リカールのプロローグでFIA WECのすべてのライバル達と会うのを大変愉しみにしていました」。