専門店が手掛ける極上の物件を見ながら考えた、クラシックミニに今かけるべき予算
2020/04/12
クラシックミニの専門販売店に行ってズバリ聞いてみた
2020年3月19日発売のカーセンサー5月号では、「絶版厳選6モデルを購入目線で徹底リサーチ 今乗ってもカッコいい!」と題した特集を掲載している。
「何事も流行は20年周期で繰り返される」ということで、最近は自動車の世界でも、20年ほど前のモデルに「今乗りたい!」と考える人が増加している。そのトレンドを背景に、人気のネオクラシック系6モデルに関する徹底的なバイヤーズガイドを展開している大特集だ。
とはいえ紙の雑誌にはどうしても「紙幅の制限」がある。そしてなおかつビギナー向けに特化した特集内容であったため、取材はしたものの、誌面では紹介できなかったネタも実は山ほど残っている。
そこでここでは同特集の「エディターズカット/完全版」として、誌面には載せきれなかった内容を、非ビギナーな各位に向けてお届けしたいと思う。
まずは「クラシックミニ」こと元祖ミニについて。
特集の中で取材させていただいたショップは東京都世田谷区の「iR(イール)」。そこの自社工場である「iR MAKERS(イールメーカース)」では、新車時のクラシックミニを知るローバージャパン出身の工場長およびメカニック各氏が日々辣腕をふるっている。
今回、クラシックミニについての話をうかがったのはセールスサブマネージャーの武藤裕輝さん。ご自身もクラシックミニのマニアだという。
たとえ最終年式であっても20年落ちになるクラシックミニって、筆者のような「ミニに関してはほぼド素人」な人間が買っても普通に維持できるものなんでしょうか?
ぜんぜんできると思いますよ。でも……。
でも?
いくつかの注意点はあります。ひとつは、まぁ手前味噌にはなりますが、弊社のような専門店がしっかりと徹底的に整備した個体を選ぶ――ということです。
なるほど。そして次の注意点とは?
ご購入後は「丁寧に扱っていただく」ことが重要です。具体的には、
1. ATをRレンジに入れる際は必ず「停止状態」で行う。つまり、車体がまだ前進している最中にガチャンッ! とリバースに入れたりしない。逆(R→D)もしかり。
2. エンジンオイルは3000kmごとに交換する。
3. 乗る前に、いわゆる暖機を5~10分ほど行う。
という感じですね。
なるほど。自動車ビギナー各位は「……暖機って何ですか?」とか言うのかもしれませんが、中古車道の猛者(?)からすれば「当然ですね」としかコメントしようのない、古めの車を維持するうえでは一般的な話ばかりですね。で、その他の注意点とは?
その他は……特にないです。
へ?
いや、もちろん12ヵ月点検は毎年受けていただかないといけませんが、前述したとおりの「そもそもちゃんとしてる個体を選ぶ」「そしてそれを丁寧に扱う」ということさえ徹底していただければ、本当にぜんぜん普通に乗れちゃうのが「素性の良いクラシックミニ」なんですよ。
そうなんですか……。まぁ古い車ですから、それでも乗ってるうちにどこかの部品が寿命を迎えることもあるのでしょうが、なんか拍子抜けするほどフツーなんですね。
ご購入される際は「クラシックミニを探す」のではなく、「それをちゃんと直せる工場を探す」ぐらいの姿勢で臨むのがいいと思いますよ。弊社自社工場の「iR MAKERS」もそうですが、ちゃんとした工場と巡り合うことさえできれば、そうそう大変な事態にはならない車です。
「ミニ専門店 iR:イール 」のクラシックミニを拝見してみた
ちょっと古い車を購入し、そして維持するうえでは常識と言える注意点さえクリアすればぜんぜん普通にイケるということに気を良くした筆者は、その「iR MAKERS」が手掛けた自慢のクラシックミニを見せてもらうことにした。
まず見せてもらったのは、iRのストックの中では比較的手頃なプライスと、「オールドイングリッシュホワイト」のボディカラーが目を引いた00年式の最終限定車、「40thアニバーサリー」。
武藤さんは「もちろんこれも良い個体なんですが、本当はさらにいいやつがあるんですけどねえ……」とぶつぶつおっしゃっていたが、どうしてどうして、この40thアニバーサリーも「かなりのモノ」とお見受けした。
メイフェアベースの40thアニバーサリー(4AT)で、走行距離は5.7万km。内装および外装のクオリティは(ミニ素人である筆者の目から見て、だが)ほぼ完璧で、整備記録簿によれば2015年からは毎年「iR MAKERS」で点検整備を受けている。
特に、最初に入庫した2015年の記録簿は「バツ」だらけ。説明不要と思うが、記録簿におけるバツ印は「交換」の意味で、替えるべき部品が徹底的に交換されている――ということだ。
ちなみに支払総額は270.6万円也。うむう……。
……これでも十分素晴らしいと思いますが、先ほど武藤さんがぶつぶつおっしゃってた「さらにいいやつ」ってのはどれのことなんですか?
あ、例えばこれです。
……シブい。こちらはいわゆるビスポーク(和製英語で言う「オーダーメイド」を意味するイギリス英語)の99年式クーパー(4MT)で、「もしもクラシックミニをドイツ車として解釈したら?」というテーマでiRが製作した1台。
ボディカラーは往年のポルシェの純正色「ファッショングレー」で、グリルとホイールはグロスブラックおよびマットブラックに塗装。
こういったビスポーク部分がひたすらおしゃれな1台なわけだが、それだけでなく整備履歴もかなりのモノ。2007年以降の整備はすべて「iR MAKERS」で行われており、その整備明細は計9回分がずらりと揃っている。ちなみに走行距離は7.0万kmで、支払総額は368.7万円也。うむう……。
値段は張りますが、それ相応の価値があることは理解しました。
ありがとうございます。
あとは、ココのミニがどうこうというより、安い個体を買って後で整備や修理にお金をかけていくのか、最初の整備にお金をかけて、ある程度の安心感を持って乗るか……という選択でもあると思っていて、うちだと後者にこだわって提供をするというスタンスなので、この価格になるんですよね。
最終的には、どのように買って維持していきたいのか、お客様ご自身でご判断をいただければと思います。
安くはないが決して高くもないクラシックミニ
取材を通しての結論は以下のとおりだ。
状態の良いクラシックミニは本当に素晴らしい。そして美しい。だが昨今の世界的なネオクラシックブームによる相場の高騰と、iRの場合は100万円から200万円級の「徹底整備や全塗装など」を行っている関係で、その車両プライスは決してお安くはない。
もちろん、「徹底整備や全塗装など」が不要と考えている人は、安価なものを選んでいただいて構わないし、その判断は人それぞれである。
一方で、クラシックミニというモデルのこれからの価値を見据えて思うこともある。
漫才コンビ「ぺこぱ」のように「時を戻そう」というのは、実際には不可能なのだ。そのため、「クラシックミニが比較的安価に買えた時代」のことをいつまでも懐かしがっていても意味はない。
今やコンディション良好なクラシックミニは、ナリこそ小さいが、存在としてはビッグな「世界遺産」であることを正面から受け止め、それにふさわしい対価を支払って入手するしかないのだ。
そして「世界遺産級の車」だと考えれば、200万円台や300万円台などといったプライスは決して高くはなく、むしろ「……よく考えたら激安なのかも?」とすら言えるはずなのだ。
▼検索条件
ローバー ミニ×1997年以降モデル×全国▼検索条件
ローバー ミニ×全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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