▲ワイド&ローというスポーツカーのようなフォルムがスカイラインのカッコよさであろう。居住性だけを優先したセダンとは違う、走りを楽しめるモデルだ ▲ワイド&ローというスポーツカーのようなフォルムがスカイラインのカッコよさであろう。居住性だけを優先したセダンとは違う、走りを楽しめるモデルだ

日産製最後のFRプラットフォーム!? その名はスカイライン!

現行型のスカイラインは、2013年11月に登場しているモデル。

スカイラインという名は日本のみで、海外では『INFINITI』からQ45もしくはQ50という車名で販売しているハイブランドモデル。なので、スカイラインのエンブレムはNISSANではなく、INFINITIなのだ。

登場当時はV6の2.5Lガソリンと3.5Lのハイブリッドというラインナップだったが、2014年に2.5Lガソリンに代わり、直4の2Lガソリンターボが追加され現在に至る。

実は、こんなにカッコいいのにスカイラインの販売は芳しくない。両グレード合わせても国内の月販台数は200台に満たないそうだ。何が原因なのだろうか。

今、一番カッコいい日産車はスカイラインだ!!

今の日産車の中で最もデザインが優れているモデルは? と聞かれれば、私は迷わず“スカイライン”と答える。ボディの練り込みは日産の他のモデルとは比較にならないほど優れている。

フロントからリアに流れる造形は、力強く張ったショルダーラインは重力に負けないようなボリューム感がある。

極端に言えば、現行の日産車の中で、スカイラインはズバ抜けて魅力的なスタイリングをまとったモデルと言えるだろう。

地を這うスポーツカーのごとく、ノーズを目いっぱい低く仕上げたフロントデザインは、まるで空気を切るようなダイナミックさがある。

フェンダーアーチの処理も薄く、丁寧に仕上げてある。こういう細かい部分に手抜かりがないモデルは好感が持てる。

ドアパネル上部とガラス窓にある程度の厚みを持たすことで、美しいスタイリングを作り出している。また、空力的にもドアパネルを下に押し付ける効果が得られ、走行安定性も生み出す考えられたデザインなのだ。

小ぶりなキャビン、そしてそれを後方に置くことで後ろに荷重をかけたようなフォルムがFRのスポーツカーに通ずる手法と言える。

内装のステッチなどは特にこだわっている。後発の国産高級セグメントモデルと比べても上質なソーイングが施されていると言えるほど質感は高い。

このように、スカイラインは日本車ではピカイチと言えるスポーツカーのエッセンスと、高級感を高める技術が施されているのだ。

▲大口径ホイールと引き締まったボディラインがマッチしている。そして、乗り心地も損なわないサスセッティングが大人のスポーツセダンと言えるだろう▲大口径ホイールと引き締まったボディラインがマッチしている。そして、乗り心地も損なわないサスセッティングが大人のスポーツセダンと言えるだろう
▲「(松本)このフェンダーアーチの上の部分が薄いでしょ? これが車体の重心を低く見せるスポーツカーの手法だよ」「(編集部 大脇)ナルホド! こんなところにカッコよく見えてしまう秘密があるんすねぇ。やるな、スカイライン……」▲「(松本)このフェンダーアーチの上の部分が薄いでしょ? これが車体の重心を低く見せるスポーツカーの手法だよ」「(編集部 大脇)ナルホド! こんなところにカッコよく見えてしまう秘密があるんすねぇ。やるな、スカイライン……」
▲スポーツセダンではあるが、実は内装の質感が非常に高いモデルだ。ステッチの縫い方などもクオリティが高い。こんなモデルならば、例えばゴルフや旅行など長距離を移動中の空間満足度も一味変わってくるだろう▲スポーツセダンではあるが、実は内装の質感が非常に高いモデルだ。ステッチの縫い方などもクオリティが高い。こんなモデルならば、例えばゴルフや旅行など長距離を移動中の空間満足度も一味変わってくるだろう

スカイラインはGT-Rのデザイナーが手がけたモデルだ

余談だが、現行型スカイラインのデザイナーは日本人で“NISSAN GT-R”をデザインした人だ。

GT-Rのスタイリングは海外で独創的と好評価を受けており、GT-Rファンやオーナーからサインを求められほどの人気デザイナー。彼は人当たりが良く、車を見る目は鋭く探究心が旺盛な人だ。そんな彼の手でデザインされたのがこのスカイラインなのだ。

見た目だけじゃなくその走りがまたすごい

今回あらためて試乗したグレードは350GT ハイブリッド。3.5LのV6ユニットとトランスミッションの間にモーターが組み込まれた走りのパフォーマンスは、はっきり言って素晴らしいの一言に尽きる。この車両本体価格で購入できるセダンとしては最速だろう。高速型ハイブリッドはポルシェのようで、スポーツカーと名乗れるシステムである。

日産車は総じて限界性能を重視しているところがあり、コンフォートはその次という考え方があった。特にFRのモデルにはそんな雰囲気をより強く感じる。少し前のドイツ車のようなフィーリングといった印象だろうか。

ところが、日本発売前にアメリカで試乗したときよりも、スカイラインはサスペンションを含めたチューニングを行っているのか、それよりも若干コンフォート気味のセッティングで乗り心地も良好なのだ。

ちなみにハイパワーな加速性能を何度も確かめながらの燃費でも、軽く10km/L以上を計測したことを考えると、普通に走らせていれば実用面ではかなり納得度の高い燃費で走れていただろう。

また、オプションのサンルーフもコストがかけられている。現在ではルーフをガラスにして開閉する仕組みが主流だ。ところが、スカイラインはルーフの鋼板をくりぬいて作る一昔前のタイプ。工程の多さと複雑さの割に開放面積が小さいと言えばそれまでだが、逆に非常にコストのかかっている、“高級な”装備と言ったら大げさだろうか。

▲試乗したのは3.5LのV6エンジンを主とするパワーユニットだが、組み合わされるハイブリッドシステムは、ポルシェのハイブリッドのようなスポーティテイストだ▲試乗したのは3.5LのV6エンジンを主とするパワーユニットだが、組み合わされるハイブリッドシステムは、ポルシェのハイブリッドのようなスポーティテイストだ
▲今の車のサンルーフとは異なる、今後なくなっていく形状がまた良い味を出している。実はコストがかかってるタイプだ▲今の車のサンルーフとは異なる、今後なくなっていく形状がまた良い味を出している。実はコストがかかってるタイプだ

買うなら今! まだ買える新車と、お買い得感が高い中古車

現在、日産はこのクラスのFRプラットフォームの開発を進めていない。今後のFRモデルは恐らくメルセデスベンツと共用となるのだろう。

ということは、このスカイラインが「技術の日産」が送り込むミディアムアッパーセグメントの中で、新車で買える最後のFRプラットフォームとなるのだ。

一方、現在の中古車市場では、スカイラインはこの性能を考えると破格とも言える価格で販売されている。ハイブリッドの4WD仕様という、パフォーマンスとスタビリティの高いモデルでもだ。

販売が絶好調とは言えない理由を考えてみると、デザインや性能が原因ではなく、登場時の販売戦略や広告戦略の軸がぶれてしまったことが要因なのかもしれない。

車自体はものすごく良いだけに、もっと売れてもいいと思うのだ。

text/松本英雄
photo/篠原晃一

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日産 スカイライン(13代目)×ハイブリッド×修復歴なし×総額表示あり