Q.購入した車が盗難車だったことが発覚!
    一体これってどうなるんですか?

買った車が雑誌で紹介されました。するとそれを見た読者から「この車は盗まれた自分の車に似ている」との連絡がありました。実際に会って車を見てもらったところ、所有者しか知らない場所にサインが…。返してくれと言われているのですが、返す必要はありますか? また販売店に損害賠償を請求することはできるのでしょうか?

A.現時点で所有権を持っている人が
    車の持ち主となります

車は不動産と同じく法的な登録が必要です。不動産に登記簿があるように車には車検証があります。ですから、車検証に所有者として明記されている人間に権利があるということです。もし、悪徳販売店に騙されて購入しており、車検証の所有権登録が前オーナーのままならば返還の義務が生じます。しかし、普通は車と車検証はセットで売買されるので、前オーナーが所有者のままということは考えづらいでしょう。所有者がアナタの名前ならば前オーナーに返す必要はありません

やっかいなのは、その車が盗難にあっており、偽造された印鑑や委任状などで車検証を取得している場合です。この場合はいくら名義変更されていても買い主は保護されません。それでは無条件で車を返さなくてはいけないのか? 実はそういうことでもありません。
盗まれたほうは、盗まれたことを証明しなければなりません。偽造された名義変更の書類などを取り寄せ、署名が自分のものでないとか、印鑑証明が偽造されたものだと立証する必要があるのです。その立証が認められれば前オーナーに返還することになりますが、プロの窃盗団などが意図的に偽造したものだと個人レベルで証明するのはなかなか難しいでしょう。

また、販売店に対しての損害賠償ですが、販売店に過失がなければ難しいでしょう。盗難車であることを見抜けなかったことの過失を追及することはできますが、過去に遡って盗難届けが出ているかなどを調査する義務はないと思われます。

盗まれたほうも知らずに買ったほうもやっかいな盗難車。見分けるのは難しいかもしれませんが、車台番号が意図的に削り取られて職権打刻してある車などは避けたほうがよいかもしれません

第32回 法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

車台番号(しゃたいばんごう)
車両を識別する固有の識別番号。同じものは2つと存在しない。フレーム部分など、事故を起こしても修理されにくい場所などを選び1カ所にのみ刻印される。ダッシュパネル部にある場合が多いが、車種やボディタイプにより場所は異なる
職権打刻(しょっけんだこく)
盗難など何らかの理由で車台番号がなくなったり読めなくなった場合に、陸運事務所において新たに車台番号を打刻すること