島下泰久▲島下さんが中学生ぐらいだった頃に、初めて読んでみたら自分が好きな車のことがケチョンケチョンに書かれていて一時期は疎遠になった本……、だとか。それを今はご自身が執筆しているという不思議!

最新の2022年版、みなさん読んでますか!?

激動の車業界のイマ、と、その年に発売された車のことがよく分かる、でファンにはお馴染みの『間違いだらけのクルマ選び』の2022年版、車が大好きなみなさまはモチロンすでに購入&読了されてますよね?


毎年発売されたら欠かさず読んでいる! という方も

あっ、新しいやつはまだ読めていない! という方も

今回はどんな内容だろうか? という方も

その本知ってるけどちゃんと読んだことないかも……という方も

著者である島下泰久さんに、気になることをアレやコレやと直接伺ってまいりましたので、ご紹介したいと思います。

島下泰久さん

『間違いだらけのクルマ選び』著者

島下泰久さん

走行性能だけでなく先進環境・安全技術、ブランド論等々車を取り巻くあらゆる事象が守備範囲。『間違いだらけのクルマ選び』は、2011年から徳大寺有恒氏とともに、2016年版からは単独で執筆。YouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」主宰。

西村泰宏(にしむらやすひろ)

インタビュアー

カーセンサー編集長 西村泰宏

カーセンサーおよびCarSensor EDGE編集長 兼 リクルート自動車総研所長。自動車メディアを車好きだけでなく、車を購入するすべての人のエンターテインメントに変革すべく日々の仕事に従事。家の本棚には当然『間違いだらけのクルマ選び』が何冊も並んでいる。

西村
西村

イキナリですが気になることからドンドン伺わせてください! 車に関する情報を日々たくさん発信している島下さんにとって、あえて毎年1冊の本にまとめるってどういう意味があるのでしょうか?

島下さん
島下さん

そうですね、まずはメーカーや車格、ボディタイプなどの縦横斜めを1人の人がすべて網羅的に評価できるもの、というのがこの本の特徴でしょうか。1台1台の情報はwebでいくらでも検索できる時代ですからね。

西村
西村

「選び」って名前のとおり、様々な車を一気に比較できるバイヤーズガイドと理解すれば良いでしょうか?

島下さん
島下さん

はい。例えば、ライバルって呼ばれる同じ車格のミニバン同士を比較する単品の記事とかは雑誌でもよくやるじゃないですか。

西村
西村

しょっちゅうやりますね(笑)!

島下さん
島下さん

でも、意外と一般消費者の思考ってそこまでシンプルに絞れてないことも多くって、検討状況を聞くとコンパクトカーとミニバンとSUVを同時に検討していたりする人が決して少なくはありません。

西村
西村

それ、分かります! 自分もカーセンサーの人間なので購入の相談にはよく乗るのですが、おや? っと話が飛ぶように感じることって結構な頻度でありますね。

島下さん
島下さん

そんな人にとっても、その年発売された車を網羅的に紹介してあげることって少なからず意味がある行為だと思っています。なので、ノアヴォクを比べつつ、同じ値段でミニも買えるかな? って検討しちゃうようなどこにでもいる読者をイメージして書いています。

西村
西村

なるほど。

島下泰久 ▲専門家の僕らだって買おうとしている車を突然変えて別のやつ買ってることがあるじゃないですか、今だったら……と、話は欲しい車談義に楽しく脱線していきます
島下さん
島下さん

そして、すべての内容を秋から冬にかけて一気に書くってことも重要でして……。

西村
西村

毎年、大変そうですよね……。本当におつかれさまでございます!

島下さん
島下さん

これは決して夏までサボっているわけではなくって、ちゃんと理由があるんです! 1台新しい車が出るじゃないですか、そうするとそれまでの車のポジショニングが相対的に置き換わることがありますよね。これはベスト! と思っていてもさらにベターな1台が出てきちゃうと今までの評価軸はガラッと変わるんです。

西村
西村

まさに日進月歩!

島下さん
島下さん

となると、年初から乗った順に書きためるのではなく、本の完成時に網羅的に紹介するためにも鮮度が重要になります。結果、後から一気に書くことになるのは仕方がないんです。

西村
西村

なんと、読者思いのご苦労だったんですね(涙)!

島下さん
島下さん

車だけじゃなくって世の中もドンドン変わります。例えば、ガソリンの価格だって半年どころか1ヵ月でもだいぶ変わるじゃないですか。そうすると「燃費」って話に言及するのにもその重みが変わってしまいます。メカ的な性能の話だけでなく、世の中的な視点で語っていることもこの本のウリだと思っています。

西村
西村

そういった意味でも毎年定期的に同じタイミングで発売してすることってすごく価値ですね。

島下さん
島下さん

はい、最近だとYouTubeなんかで乗った瞬間の感想はすぐにお届けできていますが、年末にもう1回棚卸されたアップデート版としてこの本は十分に機能していると思います。なのでぜひ毎年買ってください(笑)!

島下泰久 ▲アーティストじゃないけどライブのようなもの、なんだとか。サブスクやCDでも曲自体はいつでも聴けるけど、全体構成があってその空気感も含めたテンションの中でその時だけに伝えられるものがある。この本はそんな楽しみ方をしてもらえれば嬉しい! とのことです
西村
西村

本の中身ですが、1台1台を紹介するだけじゃなくって、特集も組まれてますよね?

島下さん
島下さん

2022年版だとホンダとスポーツカー、そしてVW ゴルフの3つですね。

西村
西村

これはどうやって決めているのですか?

島下さん
島下さん

この本は車マニアだけに読んでほしいものではありません。単純にメカとして良い車だけピックアップしてると、4桁万円いくような車ばっかりになってしまう。でも、多くの人が乗る可能性があるものをできる限り扱いたいんです。

西村
西村

だからホンダとスポーツカーとゴルフ???

島下さん
島下さん

2021年はスポーツカーが豊作でしたし、ゴルフの世代交代も世界中みんなが注目するところですよね。そして、フツーのビジネスパーソンなんかにも読んでもらいたいのでホンダというメーカー全体にも注目しています。実はこの本、新幹線の駅とかでよく売ってるんですよ。

西村
西村

新幹線ですか? サービスエリアじゃなくって?

島下さん
島下さん

移動時間の暇つぶしに、雑誌や本を買ったりする出張中のビジネスマンっていますよね。そういうときに、車の比較だけじゃなくって業界全体を俯瞰して見られるようなものになっているといいなと思っています。これ1冊をパッと読んでおくと、ニュースで断片的な情報が出てきたときにも、自分なりに解釈できるようになるはずなんです。

西村
西村

だから特集主義なんですね!

島下さん
島下さん

さっきのweb記事の話じゃないですけれど、どうしてもニュース性の高い情報って断片的につままれがちなので。イチ専門家としては、車のことでも業界のことでも少しでも背景含めて知ってもらって、自身で考えてもらうきっかけになれると嬉しいんですよ。

西村
西村

いや確かに、自動運転とかEVとか正直ピンキリなのに言葉だけ独り歩きするので、普段自動車業界に接してない人が聞くと瞬時に詳細を理解するのは難しいですよね、きっと。

島下さん
島下さん

はい、なので車を購入する際に役に立てていただいても、仕事をするうえで車業界を俯瞰してインプットする目的でも、車好きが飲み屋トークの肴にするために読んでもよいと思える本を目指しています!

西村
西村

SUVばりに万能な本ですね! スーパーユーティリティブック、SUBだ。

島下さん
島下さん

最近だとwebでやるとPVだの再生回数だのコメントだったり、便利なんですけどどうしても直接的なリアクションに左右されやすくなります。でも、せっかく1人で本を1冊書けるんだから、やっぱり自分が言いたいことを思いっきり言い切るってことを大事にしたい! どんな車も賛否はあると思いますが、あくまで個人の見解を言い切る、です。

島下泰久 ▲今のテンションで言いたいことを1冊で伝えきるってのは、こうズバッと読者に向かって自分の狙ったコースに決め球を投げ込むような感じでしょうか! とジェスチャーを交えて説明中の島下さん
西村
西村

島下さんも中学生の頃は好きな車が悪く書かれていてアンチになってしまったわけですし(笑)。

島下さん
島下さん

何かを世に出す時点で、100%批判されないってことは無理なのは分かっています。少し前までは徳大寺さんと一緒に書かせてもらっていたのですが、その時もお互いに意見を合わせて書くことはありませんでしたね。まぁたとえ意見が食い違っても、それはそれでいいじゃないか、と。書き手すら意見が食い違うのですから読み手なら当然です。

西村
西村

おっと、過去のシリーズに関することもぜひお聞きしたいです! ので、そのあたりはもう1本の記事で詳しく紹介させてください!

島下泰久 ▲自分で書いてるのに、数ヵ月時間が経つだけでまた別のことを考えているから面白い。毎年苦労しても書き続ける理由はそこにもありますね、と書いていた時を思い出しながらページをめくる島下さん

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文/西村泰宏、写真/稲葉 真