【図説で愛でる劇中車 第21回】「トリプルファイター」「怪奇大作戦」「ジャンボーグA」に登場する、個性豊かな車たち
2021/09/08
国内外問わず様々な映像作品(アニメも含め!?)に登場したあんな車やこんな車を、イラストレーター遠藤イヅルが愛情たっぷりに図説する不定期連載!
第21回は、「ウルトラマン」でおなじみの円谷(つぶらや)プロダクションが製作した「ウルトラシリーズ以外の昭和の特撮作品」に登場する、印象的な劇中車をピックアップ。その第一陣では、「トリプルファイター」「怪奇大作戦」「ジャンボーグA」の3作を取り上げます!
ポインターにも負けない名デザインの「SATカー」と、悪路もへっちゃらの「SATバギー」
1972年に放映されたテレビ番組「トリプルファイター」。主人公は、M星人の子孫である早瀬3兄妹です。
彼らは、デビル星人に故郷の星を滅ぼされた宇宙人で結成するSAT(=Space Attack Team)の日本支部に所属し、侵略してくるデビル星人たちと戦う、という設定でした。
早瀬3兄妹はそれぞれ「グリーンファイター」「レッドファイター」「オレンジファイター」に変身し、さらに3人が合体して「トリプルファイター」に変身可能でした。彼らは巨大化せず、武器も持たずに戦っていたのが特徴です。
劇中では、SATの専用車としてトヨタ クラウン(3代目といわれています)を改造した「SATカー」が登場します。フロントドアは運転席側だけ、リアドアはガルウイング式で、SF感が溢れる優れたデザインをもっていました。
「ウルトラセブン」の「ポインター」にも負けないその存在感で、隠れた名劇中車としても知られています。
しかし、元がクラウンで撮影現場の悪路に向かず、手作りの木製ボディが壊れやすかったことから、第10話から登場の「SATバギー」も活躍するようになりました。
「トリプルファイター」で敵が使用した「デーモンカー」と、「怪奇大作戦」の名車「トータス号」
一方、「トリプルファイター」の敵である、デーモンに率いられるデビル星人軍団も、活動に車を使用していました。それがなんと、可愛らしい「スバル360」! 地球を滅ぼそうという悪の宇宙人なのに、つつましやかな車種選択ですよね(笑)。
一応、悪者の車に見せるため、黒一色の装い(マットカラーは植毛によるものだったらしい)で、場合によっては屋根上に武装をすることも。それでも集団で現れ、2ストエンジンのサウンドをBGMにわらわらと画面内を走る姿は、やはりコミカルで愛らしいものでした。
なお「トリプルファイター」は、月曜~金曜の決まった時間に10分ずつ放映する、という変則的な帯番組方式を採っていました。
続いては、デーモンカーと同じく、スバルの360cc軽自動車をベースにした劇中車をご紹介。それが、1968年に放映を開始したテレビ番組「怪奇大作戦」の「トータス号」です。
科学による怪奇現象に立ち向かう科学捜査研究所(SRI=Science Research Institute)の活動を追うこの作品では、変身ヒーローや怪獣、宇宙人などは登場しませんでしたが、ショッキングでグロテスクな映像表現もあり、折しも妖怪ブームだったことから人気を博しました。
トータス号は、商用車の「初代スバル サンバー」を改造した小粋な2ドアクーペで、小型ロータリーエンジンを積む堅牢な特殊車という設定。しかし実際の劇中では、3代目トヨタ クラウンそのままだった「SRI専用車」が多く見られました。もったいない!
水上や空でも活動できた「バモス」と、ロボットに変身する「ジャンカー」
続いては、1973年放映のテレビ番組「ジャンボーグA(エース)」の劇中車に登場していただきましょう。
巨大変身ヒーローものであるジャンボーグAは、主人公が変身するのではなく、主人公の立花ナオキの乗り物が巨大ロボットに変身する、という異色の作品でした。
放映スタート時はセスナ機が「ジャンボーグA」に、そして後半の27話からは、なんと主人公の愛車(初代ホンダ Z)が「ジャンボーグ9(ナイン)」に変身! 操縦方法も車と同様に、ステアリングホイールとペダル、さらにマニュアルシフトを使用していました(ザブングルかっ!)。
さらにその後、オーバーフェンダーを装着したようで、その姿も画面内に確認することができます。
車も大活躍する昭和の特撮には、夢がいっぱい!
ひとえに特撮作品といっても、作品自体の世界観や設定は様々。それに合わせ、登場する劇中車も実にアイデア豊かで個性的です。
無茶な設定もたくさんありますが、未知の技術がまだたくさんあった昭和40年代では、それも未来の夢のひとつでした。
特撮番組に出てくる車にワクワクするのは、きっとその夢を現代でも感じられるからに違いありません。
それでは次回の「図説で愛でる劇中車」をお楽しみに!
イラストレーター/ライター
遠藤イヅル
1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はサーブ900、VWサンタナほか実用的な車ばかり。