トヨタ プログレ

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseがカーセンサーで気になる中古車を探して実際に見に行く本企画。

今回は“小さなセルシオ”と呼ばれた名車をチェック。イメージ的にはおじさんカーなのに、なぜ……?

Bose

スチャダラパー

Bose

1990年にデビューし、1994年「今夜はブギー・バック」が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。11月13日にスチャダラパー2年ぶりとなる新曲『ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ』が配信リリース! 詳しくは公式HPへ。愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノターボ

色を変えるだけでおじさん臭が一気に払しょくされる!?

当時のトヨタのフラッグシップモデルだったセルシオ並のラグジュアリーなインテリアが与えられたことで話題になった“小さな高級車”プログレ。内外装はコンサバティブだが、密かに注目されているモデルなんです。

編集部 今日お邪魔するBU-BUコレクションというお店は、低価格で買える国産セダンを得意としているのですが……。Boseさんにセダンのイメージってあまりないですよね。

Bose 今の愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノ。その前もフィアット パンダやルノー カングーなど、ハッチバックばかりだからね。

編集部 なぜ突然、セダンを見たくなったのですか?

Bose 最近、友だちから相談を受けたの。「プログレってどう思う?」って。

編集部 プログレって、トヨタが昔作っていた、あのプログレですか?

Bose そう。「あれに色を塗るとイケてる気がする」と言われて、面白いかもと思ったの。純正の色はかなりおじさんっぽいけれど、例えば赤にしたらアルファロメオっぽくなりそうでしょう。

トヨタ プログレ▲グリルにトヨタのエンブレムが付いていないトヨタ プログレ

編集部 数年前くらいからデザイナーなどファッション系の仕事をしている人の間で、プログレがちょっとしたブームになっているなんていう話も聞きますよ。

Bose わかるなあ。人と同じ車に乗るのはちょっと抵抗があるという人たちだよね。プログレはメジャーではないし「あの車、なんだろうって」なるでしょう。その感覚がいいんだよ。しかも、グリルにトヨタのエンブレムが付いていないから、一瞬「外国の車?」ってなるわけ。

編集部 確かに。車に詳しくなかったらどこのメーカーかわからなそう。

Bose そこが面白いと思ってね。

軽の中古車と同じくらいの予算で思い切り遊んじゃおう

トヨタ プログレ▲安いセダンを自分好みに仕上げるのも楽しそう。車趣味の奥深さを感じたBoseさん

BU-BUコレクション 川原店長(以下、川原店長) Boseさんいらっしゃいませ。プログレに興味があるんですって?

Bose プログレって乗り方次第ではかなりオシャレになるんじゃないかと感じて、実車を見たいなと思ったんだよね。このプレグレは、走行6万6000kmで支払総額約36万円って……相当安い!

川原店長 うちで普段から扱っている車ではないのですが、たまたま下取りで入ってきたので並べてみているんですよ。これは、フロントのレザーシートだけで元が取れそうですよね(笑)。

Bose 家のソファより肌ざわりが良さそうだもんね。

編集部 当時のカタログを見てみると、インテリアは木目調ではなく本木目。ウインカーとワイパーレバーにもウォールナットの無垢材から削り出した本木目が使われています。

トヨタ プログレ▲「インパネにアナログ時計が設置されるなんて当時は珍しかったのでは?」とBoseさん。その上には収納が備わります

Bose 凝っているなあ。今もラグジュアリーセダンといえばLサイズのドンとしたやつだけれど、当時は高級=デカイという意識が今以上に強かっただろうからね。5ナンバーサイズ(プログレの全幅は1700mm)で高級感を出すために、凝った作りにしたのだろうな。

川原店長 プログレが商売として結果的に成功しなかったのは、“サイズ”という理由が少なからずあったでしょうね。

Bose 僕は小さな車が好きだから、逆にこのサイズ感がちょうどよくて好き。形は少し昔っぽいコンサバなデザインで、サイズも小さめというのが好きだな。

編集部 こちらに先代のポロがありますが、全幅があまり変わらないですもんね。

Bose 友人とも話していて、インテリアのキレイなプログレの色を塗り替えたら面白いと思う。

川原店長 こういう車は新車からずっと大事に乗っている人が多いから、インテリアの状態もいい掘り出し物が見つけやすいんですよ。社用車として使われるケースは少ないでしょうから走行距離も少なめで、それでいて整備はディーラーでしっかり受けているという。

トヨタ プログレ▲エンジンは2.5L直6。ゆったり乗るのに最高のエンジンです

Bose 本革の色がアイボリーだから、最初は真っ赤にしてスポーティな雰囲気にすると面白いと思っていたけれど、実車を見たらあえてくすんだえんじ色で渋めに乗るのもよさそう。車両価格が安いから、オールペン代を入れても60万円くらいで仕上げられるんじゃない?

編集部 メタリックが多い感じで“くすんだ”とは言えないですが、えんじ色は純正色でもありましたね。ただ、カーセンサーには掲載されていません。

Bose ホイールまで換えても全部で100万円もしないでしょう。これくらいの予算だと軽自動車やハッチバックが定番の選択になるけれど、あえてこういう楽しみ方をするのも悪くないと思うな。「おじいさんが運転していると思ったら、若い人が乗ってるんだ!」というギャップを楽しんでほしいな。

クセが凄すぎるグロリアを発見!

日産 グロリア▲助手席に昔の警察車両などについていた補助ミラーがある以外は地味な雰囲気のグロリアですが……

編集部 Boseさん、すごいグロリアがありますよ……。せっかくだからちょっと見てみません?

Bose あの昔の警察車両みたいなフェンダーミラーのやつ? なにが凄いのさ……。うわ、ナニこの内装!!!!!!!!!!

川原店長 凄いでしょう(笑)。これ、前オーナーがワンオフで仕上げているんですよ。

Bose 外観は少し車高を落としてあるけれど、いたって地味だよね。なんで内装だけこんなに手を入れたのだろう。しかも手を入れているのは天井とドアトリムだけで、シートはまったくのノーマル。前オーナーの執念を感じるな……。

日産 グロリア▲刺繍が施された分厚い布に貼り替えられています。これ、相当お金かけてます!!

編集部 いわゆる“族仕様”っていう作りではないですよね。どちらかというとペルシアじゅうたんみたい。

Bose このグロリア、危険だ……。うちの奥さんに見せたら“ダサイ”を通り越して“カワイイ! 欲しい!!!”って言うぞ。間違いない……。

編集部 L.A.のオールドスクールのラッパーも自分の車を派手にしているイメージですが、同じような感じですかね?

Bose インパラなんかをいじるやつね。でも彼らはこういう内装にはしないと思うな。

川原店長 どちらかというとデコトラとかの文化に近いですよね。オークションで見つけたときに内装の仕上げの技術の高さに驚き、思わず仕入れちゃったんです。これ、かなりの腕の職人がお金と時間をかけて、ていねいに仕上げていますよ。

Bose ちなみにこの車はいつ頃仕入れたの?

川原店長 半年くらい前ですかね。このときは3台仕入れたんだけれど、これだけ残っています(苦笑)。

Bose これだけいじってあると、普通はなかなか手が出せないけれど、逆に言うと、うまくハマればカスタム代が丸々浮いちゃうし、ハマる人にはたまらない1台になると思う。これを買った人には、ぜひ会ってみたいよ。

文/高橋 満(BRIDGE MAN)、写真/早川佳郎