▲新車時でも中古車でも、数多のライバル車があるなかでこれを選ぶということは、粋で大人な行為といえるでしょう ▲新車時でも中古車でも、数多のライバル車があるなかでこれを選ぶということは、粋で大人な行為といえるでしょう

2Lディーゼルだけど高性能ガソリン車のようなアクセルレスポンス!

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2014年12月17日に発見したのは「アルピナ D3クーペ ビタルボ」です。「アルピナ」には“チューナー”という響きがあるかもしれませんが、れっきとしたドイツの自動車メーカーです。

BMW M社の幹部が、7シリーズベースのスポーツモデルの開発があるか取材された際に、「7シリーズはアルピナに委ねた」と答えたことからもアルピナとBMWの親密さがうかがえます。車名にあるビタルボは「BITURBO」を日本語読みしたもので、つまりはツインターボを搭載していることを意味しています。

とはいってもD3クーペ ビタルボは過激なスポーツモデルというわけではなく、それはそれは上品なスポーティクーペに仕上がっています。日本未導入の「123d」と呼ばれる1シリーズが積む2L 4気筒ツインターボディーゼルエンジンをベースに制御系をチューニング。たった2Lながら最高出力214ps、最大トルク45.9kg-m/2000-2500rpmというスペックの持ち主です。

このエンジンはハイパワーで攻めるよりも、小排気量ながら図太いトルクを発生させるというディーゼル特性を最大限生かしているように感じます。0-100km/h加速は6.9秒という俊足ぶりを誇りつつ、ランフラットタイヤではないからか乗り心地も上品で快適です。

▲インテリアの基本デザインはBMW 3シリーズクーペと同じですが、専用の本革、高級な本木目パネル、専用アルピナロゴが奢られていて特別な雰囲気が漂っています ▲インテリアの基本デザインはBMW 3シリーズクーペと同じですが、専用の本革、高級な本木目パネル、専用アルピナロゴが奢られていて特別な雰囲気が漂っています

一般論ではありますが、ディーゼルエンジン搭載モデルの特徴としてアクセルレスポンスの鈍さが挙げられます。もっと言うと、アクセルペダルはドライバーの踏み込み量に鈍感で“ON/OFFスイッチ”に感じられることすらあります。

しかしD3クーペ ビタルボは、ターボラグのなさはおろか、ネガティブなアクセルレスポンスの悪さも皆無です。高性能ガソリンエンジンのようにアクセルペダルの踏み込み量に素直で、5200rpmのレッドゾーンまで一気呵成に吹け上がります。当該中古車はMTですし、“駆け抜ける歓び”全開です!

▲たった2Lながら最高出力214ps、最大トルク45.9kg-mを発揮。最大トルクは同時期のM3に勝ってます! アイドリング時以外はディーゼルであることに気づかないかも ▲たった2Lながら最高出力214ps、最大トルク45.9kg-mを発揮。最大トルクは同時期のM3に勝ってます! アイドリング時以外はディーゼルであることに気づかないかも

D3クーペビタルボの新車時価格は774万円です。他に選択肢はたくさんあったろうに、新車時のオーナーはあえてディーゼルで「スポーツ」ではなく「スポーティ」なこの車を選択したことに拍手喝采です。エコ(低CO2排出、低燃費)でありながらスポーティという“控えめ”な存在……、ゆとりがあってこそ成せる選択です。中古車になっても同じことが言えるでしょう。

当該中古車、4年落ちで車両本体価格は448万円。写真を見る限り、何の文句のつけどころもありませんが決して安い存在ではありませんし、同価格帯での選択肢はメチャメチャ幅広いです。でも、毎日高速道路を走り、長い距離を移動する人にはうってつけな存在でもあります。図太いトルクがもたらす中間加速は追い越し時に本領を発揮しますし、低燃費で経済的。

こういう車を買えるような経済的、精神的ゆとりを手にしたいものです。

■本体価格(税込):448.0万円■支払総額(税込):---
■走行距離:3.9万km ■年式:2010(H22)
■車検:2015(H27)年7月 ■整備:別 ■保証:付
■地域:東京

text/古賀貴司(自動車王国)