ミニという車がちょっとぐらい大きくたっていいじゃないか!
2014/11/07
いつまでも懐メロを歌っていてもしょうがない
「オマージュ」「リミックス」「パロディー」「本歌取り」と、その名称や目指すところの微妙な差異はさておき、要するに「もともと存在している非常に有名な何かを下敷きに、新たなモノを作る」という行為はなかなか難しい。なぜかといえば、そのオマージュなりパロディなりで人を感心させたり笑わせたりするには、もともとの作品に迫るほどの、下手をすればそれ以上のクオリティを、オリジナルとは違う新機軸に基づいて見せる必要があるからだ。単なる模倣に近いオマージュや出来の悪いパロディーほど、見るに耐えないものはない。
と、そんなことを思ったのは過日、明治神宮外苑絵画館前にて開催されたTOKYO DESIGNERS WEEK 2014で「北斎漫画インスパイア展」を見て、なぜかBMW製ミニのことが思い出されたからだ。
このインスパイア展は、江戸の風俗文化や全国の名所風景を葛飾北斎が描いた「北斎漫画」にインスパイア(霊感を与える、示唆する、喚起する)された53人のクリエイターが「その人なりの2014年版北斎漫画」を制作し、それを展示するというものだった。
53人ともなると(全員がプロとはいえ)作品の出来は玉石混交で、大変素晴らしいと思えるものからそうでもないものまで様々であった。「そうでもないもの」についての論評はここでは差し控えるが、「大変素晴らしいと思えたもの」というのはやはり、冒頭で申し上げた「もともとの作品に迫るほどのクオリティか、下手をすればもとの作品以上」という基準を満たしたものばかりであったように思える。
亡き人の言葉を勝手に推測するのもアレだが、もしも葛飾北斎先生が過日の優れたインスパイア作品を見れば「うんうん、なるほどそうきましたか。これはこれで大変素晴らしいですねぇ……!」とお喜びになるだろうと愚考する。かたや「不出来なパロディー」でしかないような作品については「出直してきやがれ!」と怒るか、もしくは「……」と静かに絶句するか。そのあたりは実際のお人柄を存じ上げないので何とも言えないが。
で、BMWのミニである。現代版のミニが元祖ミニへのオマージュなのかリミックスなのかパロディーなのか、それとも本歌取りなのか、あいにく筆者は知らない。しかし、とにかく「もともと存在していた非常に有名な元祖ミニを下敷きとした、新たなミニ」であることだけは間違いないだろう。
それに対する好き嫌いはかなりハッキリしていることも知っている。現代版ミニを嫌う人の言い分は様々であろうが、要約すると「あんなのはミニじゃない」というあたりに落ち着くのではないか。
確かにそうだ。簡素な点こそが魅力だった元祖ミニと比べると、現代のミニは何かと豪華&華美に過ぎる。また「そもそもサイズ的に全然ミニじゃないじゃないか!」というシンプルな意見もあろう。それもまた、そのとおりだとしか言いようがない。
しかし筆者は、断固として現代版のミニも支持したい。
確かに豪華かつ華美であり、確かにサイズ的に「ミニ」ではないかもしれない。でも別にいいじゃないか。時代が違うんだから。それとも、過日トヨタ自動車がリリースしたランクル70的に「ほぼ昔のままの姿」で再登場すれば良かったのだろうか?
まぁ、それはそれでステキな気もしないではないが、しかし、そうなるとそれは単なるリバイバルというか懐メロであり、新しい何かを創造するほどのパワーは持ち得ない。時代を作るのはいつだって新しい歌手の新しい歌であり、ビール片手に郷愁にひたるための懐メロ番組ではないのだ。
現代版のミニ一族はデカくて豪華になったからこそ、一つの新しい世界を作ることに成功した。あれがもしも「クラシックミニほぼそのままの姿でBMWジャパンから限定再発売!」みたいな話であったなら、2~3年もすれば盛り下がる花火で終わっていただろう。というかそもそも、現代版ミニはさしてデカくもない。もちろん元祖ミニと比べればかなりデカいが、5ドアのクロスオーバーでも全幅1790mmに過ぎず、1800mm超が当たり前となった昨今の輸入車のなかでは比較的スリムな部類だ。そして走りも十分ナイスである。それでいいじゃないか。
ということで今回のわたくしからのオススメは現代版ミニ一族、それも、今中古車として好バランスだと筆者が判断する支払総額200万円前後のミニ一族だ。
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