ホンダ シビックタイプR▲中古国産スポーツカーが軒並み値上がり傾向にある中、先代となるFK8型シビックタイプRの平均価格が下がってきている

ホンダスポーツの頂点に位置するタイプRの名を冠したシビックの先代型

スポーティな車づくりに定評のあるホンダの中でも、“本籍地はサーキット”と評されるほど、切れ味抜群のスポーツモデルに仕上がっているのが「タイプR」シリーズです。

1992年に初代NSXに設定されたのを皮切りに、インテグラ、シビックと設定され(欧州ではアコードにも設定)人気を博しましたが、現在はシビックにのみ設定されているのはご存じのとおり。

シビックは現在、タイプRとしては通算6世代目となるFL5型が最新型となっており、いまだ(執筆時点)受注停止が続く人気車種となっています。

その一方で、先代型のFK8型の平均支払総額が順調に下がってきているのです。
 

ホンダ シビックタイプRの中古車価格推移グラフ ▲1年で約30万円も平均支払総額がダウンし、過去最安となっている

新車時価格はおよそ450万~475万円、リミテッドエディションが550万円でしたが、平均支払総額は2024年秋ごろまでは500万円前後と、新車価格を考えると高値安定となっていました。

しかし2024年末ごろからグッと下がり、2025年6月には470万円を下回り、過去最低水準にまで至っているのです。

この価格は200台限定ということで、いまだに1000万円前後のプレミア価格が付けられているリミテッドエディションも含んだものとなっているため、通常モデルであれば総額300万円台中盤から後半で狙えるものも存在するようになってきました。

近年、国産スポーツモデルの価格高騰は顕著な状態で、シビックタイプRも現行型含め高値安定となっている中で、この先代型の価格の下落はスポーツモデルを狙っている人にとっては朗報と言えるのではないでしょうか。

そこで今回はFK8型シビックタイプRの現状をチェックしつつ、どのあたりの物件が狙い目なのか考えてみたいと思います。
 

 

モデル概要:開発段階から「タイプR」を考慮して生まれたFK8型シビックタイプR

5世代目となるFK8型シビックタイプRは、2017年7月に通常のシビックと同時に発売を開始。

これまではベースとなるシビックがリリースされた後に、走行性能を高めたタイプRが追加されるという形でしたが、このFK8型は開発当初からタイプRとして目指す理想の姿をゼロから追求したことで、大幅なスポーツ性能の向上を実現していました。
 

ホンダ シビック ▲シビックの1グレードとして開発されたのではなく、「理想のタイプR」という思想で開発された

搭載されるエンジンは4代目シビックタイプRから採用されているK20C型の2L 直列4気筒VTECターボエンジンですが、最高出力は4代目の+10psとなる320psを発生し、その出力を6速のマニュアルトランスミッションを介してフロントに伝えます。

このマニュアルトランスミッションにはホンダ車としては初となるレブマッチシステムが搭載され、シフトダウン時には自動でブリッピング(空ぶかし)をして回転を合わせてくれる機能も備わりました。

そして足回りも一新され、フロントには「デュアルアクシス・ストラット式サスペンション」と名付けられたものが与えられ、リアはマルチリンク式サスペンションを採用。さらにアダプティブ・ダンパー・システムも採用することで、運動性能を大幅に向上させたのもポイントです。
 

ホンダ シビック ▲K20C型エンジンは最高出力320psを発生
ホンダ シビック ▲設定されるのは当然MTのみ。歴代のタイプRのシリーズ同様、赤を貴重にしたインテリアやレカロシートも備わる

また、街中からサーキットまで、様々な走行シーンを想定して足回りやステアリング、スロットル、レブマッチシステムなどの制御デバイスの特性を切り替えるドライビングモードも用意され、サーキット向けの「+R」、スポーティな走りを味わえる「SPORT」、快適な乗り心地を実現する「COMFORT」の3種類から選ぶことができます。
 

ホンダ シビック ▲「+R」モードはサーキットでの走行を想定したモード

このように究極のFFスポーツに仕上がっていたFK8型シビックタイプRですが、2020年10月にはマイナーチェンジを実施し、エクステリアの変更によって冷却性能の向上とダウンフォースの強化を実現。

サスペンションのリセッティングや2ピースフローティングディスクブレーキの新採用に加え、運転支援システムの「Honda SENSING」が搭載されたこともトピックでした。
 

ホンダ シビック ▲マイナーチェンジを受けた後期型

さらに、専用セッティングの足回りと電動パワーステアリング、20インチのBBS製鍛造アルミホイールにハイグリップタイヤを装着してピュアスポーツ性能をさらに向上させ、初代シビックタイプRをほうふつとさせるサンライトイエローIIのボディカラーをまとった「リミテッドエディション」が200台限定でリリースされて話題を集めました。
 

ホンダ シビック ▲サンライトイエローIIが特徴的な「リミテッドエディション」

では実際にFK8型シビックタイプRを狙うのであれば、どのあたりが狙い目となるのでしょうか?
 

 

狙い目は「総額400万円台前半までの低走行車」

前述のとおり300万円台で乗り出せる物件も増えてきているとはいえ、この価格帯のものは走行距離が10万kmに近い多走行車や修復歴のあるものが中心です。

チューニングやカスタマイズのベース、サーキット走行をするためのベースとしてであればなくはない選択肢ではありますが、ファーストカーとしてメインで使うのであれば、もう少しコンディションの良いものを狙いたいところ。
 

ホンダ シビック ▲車の性格上、サーキットなどで酷使された個体も多い

そこでオススメしたいのが、予算総額430万~440万円程度で狙える走行距離5万km以下の物件です。比較的ノーマル状態で乗られていたと思われる車両も多く、そこまで荒い乗り方をされてきたものも少ないと考えられるので、状態の良い車両を長く乗りたいと考えている人にもオススメできます。

またこの条件では、保証が手厚いディーラー系中古車店の物件も射程圏内となりますので積極的に狙ってみてはいかがでしょうか。
 

▼検索条件

ホンダ シビックタイプR(FK8型)×総額450万円以下×走行距離5万km以下
 

進化した「後期型」の中古車状況は?

せっかく買うなら、より進化した後期型を狙う人も多いのでは? FK8型シビックタイプRは、マイナーチェンジで走行性能だけではなく、安全装備面も進化しました。

後期型にはHonda SENSINGが搭載され、衝突被害軽減ブレーキやアダプティブクルーズコントロール、車線維持支援システムなどが備わります。

ただ、マイナーチェンジ後のモデルは2020年10月から2021年7月までという短期間しか販売されておらず、非常に希少となっているのが難点。

そのためどんなに安い物件であっても総額500万円前半からとなっており、走行距離1万km未満の物件ともなると総額は600万円台となってしまい、最新のFL5型も十分狙える価格となってしまうので、なかなか悩ましいというのが実際のところ。

そしてリミテッドエディションは、前述したように総額900万~1000万円台のプレミア価格となっています。

そのため、「どうしても後期型のFK8型が欲しい!」という人は、粘り強く中古車物件をチェックし、自分の条件に合った物件を探す必要がありそうです。
 

▼検索条件

ホンダ シビックタイプR(FK8型)×2020年10月以降生産モデル

逆に「シビックタイプRがほしいがFK8型にはこだわらない」ということであれば、最新のFL5型も含めて検討するのが現状では良さそうです。
 

ホンダ シビック ▲FK8型の後期を狙っているなら、最新型FL5型も同時に検討するのが良さそうだ

▼検索条件

ホンダ シビックタイプR(FL5型)

▼検索条件

ホンダ シビックタイプR(FL5型)
文/小鮒康一 写真/ホンダ
※記事内の情報は2025年7月23日時点のものです。
小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車のリーフを買ってしまう暴挙に出る。現在はリーフを手放し3代目インサイトをメインに、NA、NB2台のロードスターや初代パルサー、シビックタイプRに17系クラウンなど雑多な車種を所有中。

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