▲写真は本文に登場する東京都武蔵野市の吉祥寺ではなく、筆者が2年前まで住んでいた世田谷区の下北沢。こちらも「住みたい街ランキング」では常に上位に入る、やや下町っぽい街だ ▲写真は本文に登場する東京都武蔵野市の吉祥寺ではなく、筆者が2年前まで住んでいた世田谷区の下北沢。こちらも「住みたい街ランキング」では常に上位に入る、やや下町っぽい街だ

重要なのは「おしゃれだけど、おしゃれすぎないこと」

リクルートの住宅情報サイト・SUUMOの「住みたい街ランキング2014 関東編」によれば、関東の人々が住みたいと思う街はぶっちぎりで東京都武蔵野市の吉祥寺なのだそうだ。同ランキングは「シングル」「DINKS」「ファミリー」に分かれているのだが、3カテゴリーすべてで吉祥寺がナンバーワンであった。

その人が長い時間を過ごすことになるのが「住む街」なわけだが、それと同様に車も、人は比較的長い時間をその中で過ごす。ということで、ぶっちぎりの第1位となった吉祥寺に学べば、「心地良い車、長く乗りたい車」を探すためのヒントが得られるに違いないと考えた筆者は、「吉祥寺」について考えを巡らせることにした。

JR中央線の吉祥寺駅は、東京23区の西端を通り過ぎてすぐの場所にある。街の様子と雰囲気をざっくりご説明すると、吉祥寺とは「都会と田舎、そして下町風情と現代的風情とがうまいことミックスしている街」である。かなり栄えているが、23区内ではなく「都下」と呼ばれるエリアに位置するため、中心部からちょっとだけ足を伸ばせば十分以上の緑がある。そして下町風の個人商店や闇市的な横丁が人気を集めるかたわら、今どきの若人諸君が好みそうな小ぎれい系ショップも多数点在している。

それらが混然一体となった結果の「吉祥寺の魅力」をもしも一言で述べるならば、それは「キメキメすぎではないこと」であると、筆者は考える。

キメキメすぎ。例えば東京の住宅街で言えば「白金」だろうか。白金はおしゃれで文化的なエリアだが、おしゃれすぎて息が詰まる気もする。たまに出向く分にはいいが、もしも24時間・365日白金で暮らせと言われたら、筆者ならば潔く自決したい。人間は、もっとこう「下町的な何か」「田舎っぽい何らか」を感じられる場所の方が暮らしやすいと、ある程度言い切ることができるはずだ。

しかし、逆に「徹底的な下町、圧倒的な田舎」というのも考えものだ。あまりに徹底的に下町でも米国生まれのコーヒーチェーン店が恋しくなるし、圧倒的な田舎で「巨大ショッピングセンターとパチンコ店のほかは山しかありません」という場所にも、言っては何だが住みたいとは思わない。

キメすぎず、でもダサすぎず、独特のエッジ感がある車とは?

吉祥寺の場合は、このあたりのバランスが偶然にも非常に良好なため、人は「ここで暮らしたい!」と思うのだろう。つまり、人が暮らすにあたって重要なのは「キメキメすぎず、かといってダサすぎず」ということだ。もちろんそれだけだと中途半端な街になってしまうが、吉祥寺の場合はそこに「独特のエッジ感」がプラスされているのがポイントだ。この「独特のエッジ感」というのは長い時間(歴史、伝統)によって自然に醸成されるものゆえ、歴史の浅いニュータウンではなかなか持ち得ないものである。

さて、住みたい街ランキング第1位の吉祥寺について考えてみたことで、「心地良い車、長く乗りたい車」のランキングも何となく見えてきた。それはおそらく街と同じで「キメキメすぎず、かといってダサすぎず、そして独特のエッジ感(歴史、伝統)がある車」なのだろう。

キメキメな車(例えばだがアストンマーティンや最近のアウディなど)はもちろん素晴らしいし超スタイリッシュだが、スタイリッシュすぎて疲れる面もなくはない。「まるでお気に入りの街で暮らすように、車と生きる」という観点を重視するなら、ブランドやモデル、デザインはそこそこ庶民派でありたい。かといって庶民派すぎても生活に勢いがなくなる恐れがあるため、ある程度のおしゃれ感は絶対に欲しい。「独特のエッジ感」というのは定義づけが難しいところで、各人が各人の基準に従って判断するほかないだろう。

ということで、さしあたって筆者が判断した「まるで吉祥寺のように心地良い車、長く乗りたい車」は、下記物件リンクにある「高効率直噴ターボエンジン+個性派デザインの異色クロスオーバー、プジョー3008」と「フツーなのに、ほんのちょっとだけフツーじゃない現行シトロエンC3およびルノーキャプチャー」「一見地味だけど、走らせると実はかなり気持ちいいVWゴルフカブリオレ(現行と初代限定)」の計3ブランド/5モデルだ。

▲得も言われぬ造形をしたコンパクトクロスオーバー、プジョー3008。このちょいブサイクな(?)ところが逆に、キメキメすぎる車以上に長~く愛せる理由……かもしれませんよ! ▲得も言われぬ造形をしたコンパクトクロスオーバー、プジョー3008。このちょいブサイクな(?)ところが逆に、キメキメすぎる車以上に長~く愛せる理由……かもしれませんよ!

▲言ってみればごく普通のコンパクトカーなのだが、内外装のデザインや足回りの感触などがいちいち「ちょっとだけ普通じゃない」点が好ましいシトロエンC3 ▲言ってみればごく普通のコンパクトカーなのだが、内外装のデザインや足回りの感触などがいちいち「ちょっとだけ普通じゃない」点が好ましいシトロエンC3

もちろん、これはあくまで筆者の勝手なセレクションであるため、様々な異論反論はあるだろう。これをとっかかりに、あなたならではの「心地良い車、長く乗りたい車セレクション」を完成していただけたなら幸いだ。

text/伊達軍曹