【オンリーワンを探せ】世界最初で最後の画期的な空冷エンジン搭載
カテゴリー: クルマ
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2013/01/29
原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2013年1月22日に発見したのは「ホンダ 1300クーペ」です。今回は43年前のクラシックカーなんですが、実はこれ、かなりエポックメイキングな車だったんです!
今でこそホンダといえば日本の主要自動車メーカーのひとつですが、4輪市場に参入したのは1963年のこと。翌年にはF1に参戦し、1965年に初勝利を飾っていますから、その勢いたるや、昨今の中国経済よりすごかったのかもしれません。
さて、4輪市場に参入したホンダが初めに出したのは、小型スポーツカーのS500と軽トラックのT360。本格的にコンパクトセダン市場への参入を始めたのが、今回ご紹介する車のベースになっている「1300」です。
車名どおり、搭載していたのは1300㏄直4エンジン。当時のホンダは「2000ccクラスのパワー、1500ccクラスの居住性、1000ccクラスの経済性を兼備した車」とうたっています。この車の最大の特徴は、デュオ・ダイナ・エア・クーリングシステム(DDAC)と呼ばれる空冷エンジンです。世界初の技術でしたし、後にも先にもこれだけしか量産されていません。水冷エンジンにおける冷却水が水路を通るように、空気がファンによって強制的に送られ冷却するほか、走行中に導入された外気がエンジンの外壁を冷却するんです。
当該モデルであるクーペは、セダンのシャシーを流用しエンジンをデチューン。あえてパワーダウンさせ、ハンドリングを向上させています。内装は専用設計で、特にユニークだったのは「フライトコックピット」と呼ばれたインパネ。ドライバーに向かって湾曲したデザインになっています。これ、BMWが好む「人間工学に基づく設計」と同じ思想なんです。
1300 クーペは稀少すぎて中古車相場は存在しません。世界最初で最後のユニークなエンジンを搭載した“ホンダの歴史の1ページ”を手に入れたいと思うか否かが購入基準になります。生産台数は少なく商業的には失敗作でした。しかし、ホンダの偉大なる創業者、本田宗一郎肝入りのモデルです。ホンダの魂が味わえる1台と言っても過言ではありません。いや、かなりの見っけもんだと思う次第です!
Text/古賀貴司(自動車王国)