THE!対決

PART1 走行性能が優れているのはどっち?

ホンダ アコード
ホンダ アコード 走り|THE!対決
↑パドルシフトやドライブ・バイ・ワイヤなど、スポーティな走りを際立たせる装備が満載。SPORTS STYLEはエアロパーツだけでなく、タイヤも1サイズ大きな235/45R18を装着
ホンダ アコード ドライビングポジション|THE!対決 ホンダ アコード リアシート|THE!対決
日産 ティアナ
日産 ティアナ 走り|THE!対決
↑スポーティさよりもOMOTENASHIを前面に押すティアナだが、走りの質感は高い。低速から高速までフラットライドな走りは変わらず、高速道路などでの直進安定性も非常に高い
日産 ティアナ ドライビングポジション|THE!対決 日産 ティアナ リアシート|THE!対決

走りも乗り心地もキャラどおりスポーティなアコード

今年で実に33年/8世代目! シビックより上級クラスのミドルセダン(当初はハッチバックで登場)として生まれたアコードは、いつの間にか日本車のなかでも長寿と呼んでもいい車に成長した。一方のティアナも同名義では2世代目だが、さかのぼればセフィーロ、マキシマなど中核をなす日産のセダンの系譜を今に引き継ぐモデルだ。

全幅が1850mm(アコード)、1795mm(ティアナ)と両車とも今や立派な体格の持ち主。しかし、仮にきょうび主流のミニバンをセダンに置き換えて考えるなら、実用面、居住性など、我慢を強いられない“妥当な受け皿”ではないだろうか? 今回の検証は、そんな思いを念頭に臨んでみた。

アコードは新型ではワゴン(ツアラー)が、プジョー407、アルファ159らと渡り合えそうなスタイリッシュさだが、セダンのほうも欧州車さながらの存在感があり、街中で見かけるとハッとさせられる。唯一、ホイールアーチに沿った“幅広”なプレス処理は、時流に迎合したかのようで、あらずもがな、だ。けれど車幅が利き、先代より堂々とした佇まいではある。

では、走らせた印象は? 今回の2車はキャラクターの違いが大きいのだが、その打ち出しどおり、アコードは第一印象からスポーツセダンの雰囲気がプンプン。試乗車は24TLのSPORTS STYLEで、235/45R18-94Wサイズのタイヤ(ベースの24TLは17インチ)を装着することもあり、路面の荒れ、ワダチにやや敏感なところや、日常領域でややピッチングを意識する乗り味に仕立てられている。サスペンションもストロークしてくれる量が、実用セダンとしては少なめにも感じる。

またステアリングのパワーアシスト量も全体にやや重め。総じて、先代のユーロR(洗練された走りのスポーツセダンだった)よりも「スポーツセダン度」は上回っているのでは!? とさえ思える走りっぷり。今回は試せなかったが、山道、高速道路などへ足を延ばしたときに、安定した走りっぷりがより実感できるのではないだろうか。

ちなみに206ps/23.7kg-mの性能をもつ4気筒の2.4Lのi-VTECエンジンは、5速ATとの組み合わせで、可もなく不可もなく…といったところ。パドルシフトによるシフト操作もキレよく実行される。ドライブ・バイ・ワイヤのアクセル感覚もドライバーの意思にごく忠実だ。

フル乗車試乗でも、スポーツセダン方向に狙いがあるせいか、どちらかといえば室内空間をあまり欲張って作っていない…そんな印象だった。前席でさえ「シート座面を高くしていないのに頭上がギリギリ、スライドが前寄りだと、足元もきつい」といった声が。後席も「肩口のドアまでの距離、空間はあるが、体全体はなぜかギュウギュウ感がある」の声が上がった。「いろいろなものが付いている感じのコテコテしたデザインが広さを生かしきっていないのでは?」との、最近のホンダ車のインテリアデザイナーにぜひ聞いておいてほしい意見も出た。

乗り味は現代的な表現で「足回りが“無理クリ”硬い気がする」との指摘があった。「中央席の座面はティアナより平らで座りやすいが、走行中の微振動は気になる」「低速ではやや硬い」「運転席に座ったほうが楽しそうな車かも」といった意見が、この車の評価の着地点のようだ。

コンフォートながら走りの質感も高いティアナ

一方のティアナは、全幅を1800mm以内に収めながらクラス相応の豊かさがうまく表現されている。“先代イメージ踏襲型”なのは最近の日産車の傾向だが、ティアナに限って「悪くないんじゃない!?」と思えるのは、ボディサイドのキャラクターラインなど、先代にはなかった新しい表現が苦肉の策ではなく、前向きで豊かな個性を感じさせてくれるせいか。

試乗車は、250XVに6万3000円の工場オプションのVDCなどがプラスされた個体だった。アコードから乗り替えたせいか、コチラはグッとコンフォートなセダンの印象が強かった。 

といっても、決してヘナッ!と腰抜けなセダンという意味ではないので誤解なきよう。改めて走らせてみれば乗り味は十分にフラットで、ブレーキング時のノーズの沈み込みなどもしっかり抑えられているのに好感がもてた。フラットライドはスピードを上げても変わらないし、高速領域での直進安定性の高さにも安心感がある。またステアリングの操舵力も適切で、フィールもなめらか。ついでにいえばコーナリング中の姿勢も、大柄に思えるボディの割に安定感が実感できる。

またエンジンも良い。搭載するのは185ps/23.7kg-mのスペックをもつV6で、これにCVTが組み合わされる。エンジンはどの回転域でもレスポンスが良く、CVTのマナーがエンジンの特性をいささかもスポイルしないため、結果、常に気持ちよく走らせていられる。また室内に聞こえるエンジン音も音量は十分に抑えられながら、なかなか小気味いい“快音”となって聞こえて良い。

フル乗車での評価も、後席では「中央席の居心地も悪くない」「至って普通な空間。狭くはない」といった声が。またフカッとした座面クッションは「座った瞬間“おっ、柔らかい!”と思うが、好みが分かれるかも」といった意見も(実用性の回で補足しておきたい)。対して前席は「硬くてしっかりしている。オットマンは確かにあると便利」と評価された。

「窓が大きい、室内が明るい」「窓を閉めると“静かだ”と実感できる。エンジン音もガサツな感じがしない」など、セダンとしての資質の高さを証明するような発言もあった。
今回のまとめ
アコードと比べて、ことさらスポーツセダンを標榜しているわけではないティアナだが、日常的な走りの気持ち良さは評価したい。よってティアナに軍配が上がる。
今回のテスト車両
ホンダ アコード フロント|THE!対決
ホンダ アコード リア|THE!対決
ホンダ アコード インパネ|THE!対決          
ホンダ アコード
テスト車両 24TL SPORTS STYLE
316.0万円
駆動方式 2WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4730×1850×1440
ホイールベース(mm) 2705
車両重量(kg) 1520
最小回転半径(m) 5.7
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHC
総排気量(cc) 2354
最高出力
[kW(ps)/rpm]
151(206)/7000
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
232(23.7)/4300
使用燃料 無鉛プレミアム
燃料タンク容量 65L
10・15モード燃費
(km/L)
11.4
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
現在調査中
タイヤサイズ 235/45R18
※実用燃費のデータはe燃費の提供です
日産 ティアナ フロント|THE!対決
日産 ティアナ リア|THE!対決
日産 ティアナ インパネ|THE!対決
日産 ティアナ
テスト車両 250XV
337.05万円
駆動方式 2WD
トランスミッション CVT
全長×全幅×全高(mm) 4850×1795×1475
ホイールベース(mm) 2775
車両重量(kg) 1510
最小回転半径(m) 5.7
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 2495
最高出力
[kW(ps)/rpm]
136(185)/6000
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
232(23.7)/4400
使用燃料 無鉛レギュラー
燃料タンク容量 70L
10・15モード燃費
(km/L)
12.0
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
現在調査中
タイヤサイズ 215/55R17
※実用燃費のデータはe燃費の提供です
Report/島崎七生人 Photo/小林岳夫