マセラティの世界観を体現する横浜の新ショールームに並ぶ、見たことがないMC20とグレカーレは一体ナニ?
2025/03/09

新CIは「イタリアンラグジュアリーとクラフトマンシップ」
ゼロから新規建築されたマセラティ横浜港北ショールームのお披露目には3台の魅力的なマセラティも集結し、盛大なる門出を迎えた。マセラティが近年進めている新しいグローバルCIによるショールームとしては国内3店舗目となり、国内最大規模になるという。
新CIは「イタリアンラグジュアリーとクラフトマンシップ」をテーマとする。洗練されたサルトリア(Sartoria=仕立て屋)とオフィチーナ(Officina=工房)が融合されたスタイルを具現化したシックな装いが特徴的だ。従来の「明るく無機質」かつ、デモカーが並ぶカーショールームとは一線を画すもので、1台の“ヒーローカー”がフィーチャーされ、カッシーナのカスタマイズプログラム「カスタム・インテリア」で制作された家具が並ぶ。そして、このマセラティの世界観を表現する空間の中で「フォーリセリエ」、つまりカスタマイズのアイデアを見いだしてもらうことが大きなミッションでもある。
これは、マセラティがこれまで行ってきた多彩なオーダーメードシステムの集大成であり、顧客の好みに合わせてマセラティを思うままにカスタマイズすることを可能とするもの。そもそもマセラティには世界の名だたるデザイナー10名余りの競作により、顧客の好みに合わせてゼロからスタイリング開発を行った5000GTをはじめとして、長い歴史をもったオーダーメードのDNAが存在することも忘れてはならない。


さて、今回はそのフォーリセリエから3台の特徴的なモデルがショールームを飾った。1台目は日本の顧客のためにチェントロスティーレ(デザインセンター)が特別にデザインした「MC20チェロ ロッソ ヴィンチェンテ」だ。こちらはマセラティワークスチームで活躍した代表的モデル450Sのプロトタイプともいえる350Sに採用されたリヴァリーを採用したもの。日本専用限定モデル2台。
もう1台は、世界20台限定の「MC20 レッジェンダ」。こちらはヴィタフォンレーシングチームの「MC12 GT1」のボディカラーを踏襲したもので、ネロ・エッセンツァとデジタル・ミント・マットのカラーリングが施されている。日本導入は1台限定だ。
フォーリセリエとKen Okuyama Designがコラボ

最後の1台はKen Okuyama Design 監修のもと、フォーリセリエとのコラボレーションで制作された特別モデル「グレカーレ トロフェオ ピュアネス オブ アジア」だ。
シックな質感を誇るマット系パールホワイト“ビアンコアウダーチェ”(MC20のテーマカラーでもある)をベースに、トライデントをちりばめたユニークなエクステリアを備える。各所にブランドのキーカラーであるブルーのアクセントが加わり、高い質感の中にスポーティで個性的なテイストが加味されている。インテリアも同様にブルーカラーが用いられ、シート生地にはMC20チェロに採用されたスポーティなパターンをもつアルカンターラが採用されている。こちらも世界限定1台である。
「このグレカーレは街の中でスポーティなサルーンとして乗っていただきたいというイメージで完成させました。ですからエクステリアには自動車のショーカーとかコンセプトカーによくある派手なグラフィックは採用していません。ボディサイドに洗練されたスタイルでロゴをレイアウトしました。このグラフィックに関しては、どちらかといえば、アパレル的なアプローチであり、典型的なカーデザインのアプローチではないところに魅力があると思います。非常に乗りやすく、なおかつエレガントで洗練されたブランドのバリューを表現する1台を仕上げるという、私たちに与えられた課題を満足させるものに仕上がりました。長年マセラティファンである私自身も乗りたい1台ですね」と当日、ゲスト参加した奥山氏は語った。
また、奥山氏は「重要なのはこのまま実際にオーダーできるフォーリセリエの一例であることであり、量産モデルとして作ることのできる内容だけでデザインしたことです」と加えた。
“1台限定”と発表されているが、マセラティのフォーリセリエのフォーマットに基づいて製造された1台であるから、これと同じ仕様を発注することも可能であるし、このモチーフを部分的にフォーリセリエとして発注することも可能であるのだ。この展示車両も、もちろん販売車両としてのプライスタグが付いてる。

ちなみに奥山氏はピニンファリーナにて、5代目クアトロポルテ、そして先代グラントゥーリズモのスタイリング開発の当事者であったから、今回、約20年ぶりにマセラティのスタイリング開発に関わったことになる。考えてみれば、マセラティはピニンファリーナ以降、自動車を主とする外部デザインオフィスとのコラボレーションは行っておらず、フォーリセリエとしても、社内のチェントロスティーレ以外が、関わったことはない。今回のKen Okuyama Designとのコラボレーションはかなり画期的なことであろう。
当日、奥山氏は“動態保存している”と語っている自らスタイリングを手がけた5代目クアトロポルテGT Sで登場した。 “自分が乗りたい車しか手がけない” と公言する氏のことだ。この「グレカーレ トロフェオ ピュアネス オブ アジア」が近い将来、自らのガレージに収まるのかもしれない。





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自動車ジャーナリスト
越湖信一
年間の大半をイタリアで過ごす自動車ジャーナリスト。モデナ、トリノの多くの自動車関係者と深いつながりを持つ。マセラティ・クラブ・オブ・ジャパンの代表を務め、現在は会長職に。著書に「フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング」「Maserati Complete Guide Ⅱ」などがある。