リーフ▲自動車・中古車に関する調査・研究を通じ業界の発展を目指すリクルート自動車総研が、調査データと独自の考察をお届け。今回のテーマは「電動車の普及」について(写真は中古車市場で最も多く流通するEVの日産 リーフ)

伸びるハイブリッドと伸びない電気自動車

「 初期市場」から「メインストリーム」に市場が移行していくには、キャズムと呼ばれる溝を越える必要がある、といわれています。理論上、この溝は市場シェアの16%ライ ン。

では、世のニュースで盛んに報道されるように新車販売がどんどん電気自動車(EV)に置き換わっていくとして、現状、中古車市場におけるEV購入者の割合はどれくらいでしょうか。

直近2021年の数字だとまだ全体の0.4%、そして、この数字が伸びているかというと、ここ5年はほぼ横ばいなのです。

2017年の0.3%を母数に0.4%までの成長を指数化すれば、およそ30%の伸びとも言えてしまいますが、実数で購入者全体における0.1%の伸びをカウントすると台数影響は極小となります。
 

リクルート自動車総研グラフ

とはいえ、“電動化”という大きなくくりでは引き続きハイブリッドがけん引、この5年間で約2倍となる14.3%まで増加しました。ここに先ほどのEVとさらにはその中間的な存在であるPHEVを加えれば、合計で15.9%。

どうでしょう、恐らくですが2022年の調査結果では、「電動車全体」でキャズム越えとなることは間違いないはずです。
 

ハリアー ▲近年、人気モデルにPHEVが設定されることも増えてきた(写真はトヨタ ハリアー)

最重要指標は「エコ」じゃなく、見た目磨きが躍進のカギか

21世紀に入り、ハイブリッド車がここまでスタンダードとなったのは、燃費という経済性に加えて、ハリウッドセレブがトヨタ プリウスを購入して世に示したような地球環境への配慮が大きな要因として挙げられます。

ですが、今、車を買う際に最も重要視されているのは「見た目、外装」。ちなみに「価格が安いこと」は4位、「燃費性能や環境負荷」に至っては11位とかなりの開きがあります。
 

プリウス ▲「環境車」のアイコンとして国外でも大ヒットとなったハイブリッドカー、トヨタ プリウス(2代目)

もちろん、燃費性能や環境負荷を軽視しているわけではなく、最低限の性能をクリア(例えば、20km/L走る、とか)すれば、それ以上を過剰に追い求めてはいない、ということでしょう。

つまり、今後EVが名実ともに主役に躍り出るためには、まずは「欲しい!」と思わせる見た目が必要条件になるはずなのです。
 

ポルシェ ▲スポーツ&プレミアムな個性際立つスタイルのポルシェ タイカン(現行型)
文/西村泰宏 写真/日産、トヨタ、ポルシェ
西村泰宏(にしむらやすひろ)

リクルート自動車総研所長

西村泰宏

カーセンサー統括編集長 兼 リクルート自動車総研所長。自動車メディアを車好きだけでなく、車を購入するすべての人のエンターテインメントに変革すべく日々の仕事に従事している。