【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】キャンピングカー界の新たな試みについて(前編)
2021/12/03
みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。
キャンプを楽しむ際、ほとんどの人はキャンプ場にテントやタープを張って基地を作るはずです。
でも、楽しみ方はそれだけではありません。代表的なのは車中泊。荷室をフラットにして、そのスペースで寝起きする方法ですね。
以前私はもともとキャンプにそれほど興味がなかったのですが、オフロードバイクのトランスポーターとしてハイエースを手に入れてからは、息子とちょいちょい車中泊でキャンプを楽しむようになりました。
クルマの横にタープを張り、車内にコットを用意して寝るだけの簡素なものですが、これを突き詰めていくとキャンピングカーに行き着くのでしょう。他人を気にせずいつでも好きな場所で寝泊まりできるキャンピングカーはコロナ禍になってから注目が高まり、新車は長期の納車待ち、中古車相場も上昇していると聞きます。
今回は、そんなキャンピングカーのシェアリングサービスを手がけている『Carstay』CEOの宮下晃樹さんに、キャンピングカーの最新事情を聞きに行きました。
キャンピングカーはシェアする時代
フェルさん、今回はいつもと趣向を変えて、西村編集長のクルマ好きのご友人に来ていただきお話を伺いたいと思います。テーマは、『キャンピングカー』です。
いいですねえ、キャンピングカー。大いに興味があります。最近は愚息とキャンプに行く機会が増えたのですが、大きなテントを立てるのも面倒なので、クルマの中にコットを置いてグースカ寝ています。キャンピングカーならもっと快適なのでしょうが、たまにしか行かないので、高いお金を出して買うのもどうかな、と。
今回お邪魔するのはそんなフェルさんにピッタリのサービスを展開している会社です。
フェルさん、はじめまして。今日はよろしくお願いします。
さっそくですが、『Carstay』ではどのようなサービスを手がけているのですか?
フェルさん、西村さんは『Airbnb』というサービスをご存じですよね?
サイトに登録したホストから空いている部屋を借りられる、民泊のマッチングサービスですね。
もちろん知っています。海外では何度も利用しています。
我々が手がけている事業は、簡単に説明するとキャンピングカー版の『Airbnb』になります。ご登録いただいたオーナーさまのキャンピングカーを利用者がいつでも好きな時に予約できる。そんなポータルサイトです。
ということは、登録されているキャンピングカーは個人所有のものなのですか?
『Airbnb』には個人の自宅はもちろん、ホテルも掲載されています。それと同じで個人所有のキャンピングカー、キャンピングカーのレンタカー、どちらも登録可能です。
先ほどフェルさんも話していましたが、ほとんどのキャンピングカーオーナーはせっかくキャンピングカーを手に入れても動かすのは多くても月に数回です。大半の時間は駐車場に止められていて、せっかくキャンピングカーを手に入れても活用できていない。その時間を乗りたい人に貸すことで有効活用しましょうという発想ですね。
『Carstay』ではどんなキャンピングカーが借りられるのですか?
小さな軽キャンパーから大型のキャブコンまで、いろいろな種類がありますよ。
せっかくだから実車を見てみたいな。
お客さまにご登録いただいたものではなく弊社所有のものになりますが、1台ありますのでご覧になりすか?
見たいです! よろしくお願いします。
これが弊社所有のキャンピングカーです。
キャンピングカーってどんな人が乗っているの?
マツダ ボンゴフレンディのOEMモデルだったフォード フリーダじゃないですか。珍しいなあ。
オレンジ色っていうのがいいですね。これは目立ちそうだ。
実はこのクルマはカーセンサーで見つけたんですよ(笑)。車両本体価格60万円で売られていたのを手に入れて、自分たちで内外装に手を加えました。この色も自分たちで塗ったんです。
みなさんでキャンピングカーに改造したのですか?
いえ、もともとキャンピング仕様だったものをシートの配列を変えたりしました。もちろん構造変更は行っています。
外装の塗装は手作り感満載ですが、こういう感じでも借り手はつくのでしょうか。
逆に初めてキャンピングカーを運転する若い子だと、ピカピカの高級車よりも気軽に運転できるかもしれないですよ。
先日は、あるレーベルに所属している歌手の方がこのクルマで30日間かけて九州までご自身で移動されたりもしています。
楽しそうですね。
それにしても背が高いクルマだな。全高はどのくらいですか?
これはベース車両のルーフを切ってバンクベッドをつけているので、約2700mmあります。
室内高もかなり高い。1900mmは余裕であるんじゃないかな。私が余裕で立てますから。
車内で真っ直ぐ立てるキャンピングカーは楽ですよね。これはキャブコンタイプならではのメリットです。
手に入れた時はリアシートが前向きでしたが、横向きに改造して構造変更を行っています。この方が“映える”と思いませんか(笑)。
エアコン完備だし、テーブルを引き出せばリアシートをソファ的に使って仕事もできる。今流行のワーケーション対応。
ちなみにお値段はどれくらいで……?
車両価格が60万円。電気関係などは後から手を加えて、改造費は全部で100万円くらいかかっています。バッテリーが高かったですね。ルーフにはソーラーパネルも設置してあります。
この手作り感がいい雰囲気ですね。
実はそこをわざと残すようにしたんです。古いゲストハウスに泊まるような感覚を楽しめたらと思って。こういうバンっぽいクルマは、ネオヒッピー的な感覚をもった若い人たちが盛り上げているので、そこにうまくマッチすればと思いました。このクルマの特等席はルーフの上なんですよ。せっかくだから上ってみませんか?
いいんですか? うわ、これはすごい! いい眺めだ。
朝、自然の中でここに上ってコーヒーを飲むのは最高ですよ。このクルマ一番のチルスペースです。夜、星を眺めるのも気分がいいですよ。
宮下さんたちは、確か以前『モバイル・オフィス・プロジェクト』というものも行っていましたよね。
はい。コロナ禍になり急にテレワークが推奨された時、自宅に仕事ができる個室がないという問題が発生しました。その時、大手不動産ディベロッパーとタッグを組んで、「個室がないなら僕らが必要な場所に“個室”を持っていきますよ」と、住宅街やオフィス街にキャンピングカーを持っていくプロジェクトでした。
通信環境は?
もちろん、全車Wi-Fiを完備していました。
それは面白いプロジェクトですね。単に仕事をする場所が確保できるだけでなく、普段触れることのないキャンピングカーを使うことで、未来の需要を掘り起こせる可能性もある。
そうですね。次回は宮下さんたちがどういう経緯でこの事業を手がけ始めたかなどを教えてください。
(次回はオフィスにお邪魔します!お楽しみに~!)
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。