【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】電気自動車の未来について(前編)
2021/03/31
みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。
前回のテーマ(新しい生活様式と自動車について)をまとめる中で「ご無沙汰しております。これからは真面目に原稿に取り組みます」と書いたのに、すっかり時間がたってしまいました。
昨年からバイクに乗り始めまして、今は週末に林道を走るのが本当に楽しい。人は何歳になっても上達を実感すると「もっと、もっと」となるものですね。
さらにスキーのオンシーズンですから、PCに向かって原稿を書く時間がなかなか取れません。
これはカーセンサーだけでなく、他の編集部の担当も待たせておりますのでどうかご容赦を。
・・・とまあこんな感じの元ネタがカーセンサー編集部様から送られてきたのですが、まるで私が丸サボりしていたような書き方じゃないですか。ひでぇなぁ。
対談を放置していた編集部も同罪だと思うのですが。まあ細かいことはどうでもいいや(笑)。
あ、それから今回から担当編集者が代わるそうです。私の投げかける無理難題に耐えかね、編集長に「担当を代えてくれ」と泣いて直訴したそうです。
苦労は金を出してでも買えと言いますが、今の若い方にそんなことを言ったら、パワハラとして速攻で訴えられてしまうのでしょうね。面倒な世の中になったものです。
さ、愚痴は大概にして、本編へとまいりましょう。
西村編集長とEVの未来についてダベり・・・いや真面目に対談いたしました。
電動化の方向に舵を切った日本。 それはありか?
フェルさんご無沙汰しています。緊急事態宣言中ということで今回もオンラインで恐縮です。
フェルさん初めまして。今回から担当させていただきます大津です。よろしくお願いします。
みなさま、ご無沙汰しています。これから、毎月1テーマで語っていけるよう頑張りましょう! 読者諸兄も首を長くして待っているでしょうから。
ぜひ、よろしくお願いします! 連載をアップしていかないと私が編集長に怒られるので・・・。
それはさておき(笑)、今回は「電気自動車の未来」について話をしたいと思います。
それは都合がいい。最近EV に立て続けに試乗したので、そこで感じたことも話ができそうです。
世間で2030年半ば、まだ時期も明確にしていないと思いますが、ガソリン車を廃止にしていこうという話があり、昨年末から業界含めて揺れましたね。
自工会(一般社団法人日本自動車工業会)の豊田章男会長が「待ってくれ、雇用も含めて550万人をどうするんだ」とCMも含めてかなり声を上げたというのがひとつ業界としての象徴的な動きでした。
また、年末には大雪で関越道が通行止めになり多くの車が立ち往生する事態も発生しました。
あれは怖かった。EVだといったいどうなっていたかと思うと身震いしますよ。
お二人は電動化に舵を切った昨年末の流れをどう捉えましたか?
個人的には指針もない中でいつまでも全部に対応しなきゃいけないよりも、ある程度いつまでにどのようにスイッチングしていくかの計画が立てやすいから、アンカーの置き方としてはまあ悪くないと思っています。
区切りを出すことは悪くないということですか?
例えば、「2035年を目安に変えていこうぜ」ってなると、具体的にあと15年だねとか、ということは5年おきにこういうふうに変えていくべきだね、と考えやすくなりますよね。
逆に今までは目安がなかったから、足並みが揃わなかった?
メーカーも行政も、もっと言えば消費者も、いろいろなことを考えながら様々な調整を行う必要があったと思います。
とくにトヨタのような大メーカーは水素も含め、あらゆるオプションをもたなければならなかったはずです。自動車の開発は一般的に5年タームで行われることを考えると、15年くらいのスパンで目印が置かれるのはそんなに悪くはないのではないでしょうか。
確かにメーカーにとってはインパクトがあります。
EVに乗っていて雪で立ち往生したら あなたはどうする?
フェルさんは今の電動化の流れについて、どう感じていますか?
私はEVにずっと懐疑的です。ただ、昨年末に試乗したポルシェ タイカンは素晴らしかった。
電気自動車なのに、しっかりポルシェで、加速もすごいのにわざとらしくない。
ドライバビリティにも優れているし、4WDでがっちりしていて、バッテリーで重心も低くてスポーツカーにふさわしい、”さすがポルシェ”という作りでした。タイカンに乗って、EVの未来に光を見ましたね。
考えが百八十度変わりましたか(笑)。
はい。タイカンに乗ったらコロッと(笑)。 ただ、今年に入り、別のEV でスキーに出かける機会があったのですが、そこでやっぱりEVは当分難しいなと思い直しました。
スキーということはロングドライブ。ということは充電問題ですね。
ええ。今回は輸入車のEVで出かけたのですが、東京から苗場まで行くのに2回も充電。帰りのPAでは、充電設備が試乗車に対応していなくて充電できないという”事件”まであったんです。
しかも2か所で! 幸い次のPAまで走れる余力があったので事なきを得ましたが、残りの電気が少なかったら万事休すです。
EVガソリンに比べて残量があと何%ってすごく可視化されやすいですよね。ガソリンもメーターやインジケーターが減りますが、EVは数字が減ってカウントダウンされていくから、より一層恐怖を感じますよね。
あれは死へのカウントダウンですよ。年末の関越道を襲った大雪では幸い立ち往生した車の中にEVがいたという報道はなかった。これは不幸中の幸いです。
逆に僕は今のEV普及率を考えれば1台もいなかったというのはちょっと考えづらいと思っているんですよ。不便はあったと思いますが、幸いにも大きな事件に発展しなかったので報道されていないんじゃないかなって。
そうですか。1台でもいたら「やべぇ死ぬ。あと10%・・・。マジ死ぬ・・・」とかTwitterなどに書くと思うんですよ。しかもそういうのってやっぱやばいねってバズるでしょう。そういうのを探す人はいますからね。だから、本当に1台もいなかったと思いますよ。
もし、フェルさんがEVに乗っていて立ち往生した場合、どうしますか?
私なら迷わず車を捨てて「自分の車はEVで、このままだと凍え死にそうなので泊めてもらえませんか?」と、近くのトラックに手持ちのジュースか何かを持っていって泊めてもらうと思います。
向こうも退屈だと思うから、「大変だな、乗りな」って言ってくれると思うんですよね。
僕も全く同じ考えです。今は何かが起きたときに車だけで100パーセント人命を守ることができるかどうかの極端な議論がされているじゃないですか。それはちょっと違うんじゃないかと思いますね。
もし、その場にEVが2台いたら、半分ずつ乗って、前半はお宅の車に乗りましょう、切れたらうちの車に乗りましょうというふうに他人と乗り合いすることができれば電気は2倍持つ。共助の考えですね。
雪の中でそれが機能するかは別ですが、EVが増えていったらガソリンスタンドのように道端で当たり前に充電できるところが増えるはずです。EVは電力を確保できればいいですよね。つまり、車だけですべてを担保するという話はあまりにも無責任だと思います。
もっとインフラを整備させていく必要があるということですか?
ええ。そうしないと万が一のときのために普段使わない大きなバッテリーを積むことになったりします。
車重が増えたら逆に日々の効率が悪くなる。「本当にそれは得策ですか?」という話ですね。
車はあくまで人々の生活をバリューアップさせるために作るという前提にあるので、極端に右に左に振れて粗探しをするのではなく、フラットに考えることが必要だと思います。
先ほどフェルさんは高速道路での充電で苦労したという話をされていましたが、今はアプリで充電スタンドの空き状況をリアルタイムに確認できるから楽になったという話も聞きますよ。
そう! そのアプリの存在、試乗車を返却するときに係の人に聞いて初めて知ったんです。先客が充電中でも、あと何分で充電が終わるか、ということまで分かるんですね。それがあると話はだいぶ変わってきます。
もうすぐ電気がなくなるから、次のSAで充電してその間に食事をしようと思っていたのに、充電渋滞ができていて食事ができず、旅の予定が狂ったなんてことも少なくなるはず。
さっき電気残量の可視化の話が出ましたが、EVは電気の残量メーターが急激に減ることもあるから困ります。さっきまで50%くらい残っていたのに急に半分になっていたり。
ガソリン車の燃料計は良くも悪くもアナログでアバウト。デジタルで電気残量が表示されるEVは分かりやすい反面、そこに振り回されるというのもありますね。
(次回へ続く!)
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。
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