▲「ユーグレナ社」と「いすゞ自動車」は、ミドリムシを原料とした軽油を開発。自動車向け次世代バイオディーゼル燃料として実用化を目指し、共同で研究している ▲「ユーグレナ社」と「いすゞ自動車」は、ミドリムシを原料とした軽油を開発。自動車向け次世代バイオディーゼル燃料として実用化を目指し、共同で研究している

CO2を循環させる、とってもエコな燃料が生まれるかも

一時の高値からすると、ほんの…ほんの少しだけ価格が下がってきたガソリン価格。とはいえ、ガソリン価格比較サイト「gogo.gs」によると、原稿執筆時、レギュラーガソリン平均価格は155.6円とまだまだお高い水準です。あー、100円を切っていた1999年頃が懐かしい…。

しかし、過去を懐かしんでいても進歩はありません。大事なのは未来。もちろん、ハイブリッド車やダウンサイジングターボで燃費をよくするという考え方もありますが、せっかくの未来。ガソリンではない新しい燃料に思いをはせてはどうでしょうか。

現在、ガソリン以外を燃料としている主な車は、

1 充電した電気で走る「電気自動車」
2 タクシーなどに多い、LPガスを燃料とする「LPG自動車」
3 バスなどに使われている天然ガスを燃料とする「CNG自動車」
4 植物性の物質を使って作られるバイオ燃料を使った「バイオ燃料車」
5 メタノールを燃料とする「メタノール自動車」
6 トヨタが2014年度内に発売すると発表したことでにわかに注目を集めている、水素を燃料とする「水素自動車」


などがあります。

しかし、ここに食い込まんとする新勢力があるんです。まさか、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンよろしく、生ゴミを燃料に核融合を起こす技術が現実に……。なんて、このご時世に議論を呼ぶような燃料ではありません。その燃料とは、なんと「ミドリムシ」。

正確には、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)から作られたバイオディーゼル燃料「DeuSEL(R)(デューゼル)」を使って走るのですが、現時点では、いすゞ自動車が藤沢工場から湘南台駅を結ぶシャトルバスの定期運行に使用しています。そうなんです! 実際に走っているのです。

この、藻類・ミドリムシを世界で唯一、屋外大量培養する技術を持ち、デューゼルの開発に成功した会社が、その名も、「株式会社ユーグレナ」。東京大学内に本社を置き、東京大学OBや大学院生らにより経営されるベンチャー企業です。

しかしなぜ、ミドリムシからディーゼルエンジンを動かせる軽油を取り出せるのでしょうか? 実はミドリムシ、体内に油脂を作ることができるのだとか。この油脂を抽出し精製することで軽油に近い成分を抽出し、トラックやバス、飛行機などの燃料を作り出すというわけです。

ちなみに「DeuSEL(R)(デューゼル)」は、「DIESEL(ディーゼル)」の「IE」の部分に、「euglena(ユーグレナ)」の頭文字「eu」を差し込んだ造語。いすゞとユーグレナ社が共同で取得した商標だそうです。

▲色合いは東京都の都バスに似ているが、側面にはミドリムシの写真を大きく掲載。神奈川県藤沢市のいすゞ工場と湘南台駅の間を結ぶシャトルバスとして運行されている ▲色合いは東京都の都バスに似ているが、側面にはミドリムシの写真を大きく掲載。神奈川県藤沢市のいすゞ工場と湘南台駅の間を結ぶシャトルバスとして運行されている

さて、このデューゼルは、一体どんな特徴があるのでしょうか。ひとつは、CO2の削減です。ミドリムシは、CO2を吸収して酸素を生み出す光合成で育ちます。この過程で油をつくりだすので、デューゼルを燃やしてCO2を排出しても、それは元々、ミドリムシが吸収したCO2。簡単に言えば、CO2がグルグル回っているだけで、理論上は増えないということです。

また、現状のバイオ燃料と違い、農地で作る必要がないので、食料を無駄にすることもありません。さらに、敷地面積当りの油脂生産量も高いのだとか。ちなみに、ミドリムシは59種類にも及ぶ豊富な栄養素を備えており食用にもなります。ユーグレナ社は、クッキーやサプリメントも販売しています。人間の燃料にもなるわけですね。

▲ユーグレナ社は石垣島に生産拠点を設け、豊かな自然環境の中で育ったミドリムシを「石垣産ユーグレナ」と名づけた。写真はミドリムシの粉末とそこから生成された燃料 ▲ユーグレナ社は石垣島に生産拠点を設け、豊かな自然環境の中で育ったミドリムシを「石垣産ユーグレナ」と名づけた。写真はミドリムシの粉末とそこから生成された燃料

デューゼルのような次世代ディーゼル燃料は、2018年までの技術確立を目指しているとのこと。電気に水素にミドリムシ、少し未来になるかもしれないけど、もしかしたら、ガソリンと並んで、色々な燃料がスタンドに並ぶ日が来るかもしれません。

text/コージー林田