富士通研究所は、ドライバーの視界を補助する機能として、モニターに車周辺の人や物などの立体物を歪みなく高い精度で表示する車載向け3次元映像合成技術を世界で初めて開発した。

バックモニター、サイドモニター、フロントにつくブラインドモニターなど、運転をしやすくするための映像表示機能は急速に普及している。近年は日産のアラウンドビューモニターやメルセデス・ベンツの360°カメラシステムなど、車両を俯瞰で見たように周囲の映像を表示できる「マルチカメラシステム」と呼ばれる技術も登場している。

車に搭載されるカメラは近距離でも広範囲を映すために広角レンズが搭載される。アラウンドビューモニターなどで上空から俯瞰したように見えるのは、前後左右に付けられた4個の広角カメラで斜め上から撮った映像を「視点変換技術」を利用して真上から見たような映像に修正して合成しているから。

これまでの技術では、映ったもの全てが修正されるため立体物が歪んでしまい、駐車車両や歩行者などが見にくくなるという問題があった。また超音波センサーなどと組み合わせて車両近くの障害物を映し出すシステムでは、歪んだ合成映像の中で大まかな目安を示す程度にとどまっていた。

そんな課題を解決するため、富士通研究所は前後左右の4台の車載カメラに加え、超広角で高密度な測距情報が得られる3次元レーザーレーダーを複数併用。レーザーレーダーの測距情報に基づいて立体物を模した細かな投影面を生成した上でカメラ映像を映し出す技術を開発した。

これにより、駐車時や狭い道でのすれ違いなどの様々な運転シーンで、車両や歩行者などの立体物が込み入った状況でも、ドライバーにとって距離感がわかりやすい映像を表示できるという。

今後は多様な運転シーンで3次元映像合成技術による効果を検証するとともに、この技術を用いた運転支援システムの製品化を目指す予定だという。

時間貸し駐車場を運営するタイムズ24の調査によると、毎日運転する人でも4割近くが駐車に自信がないと答えている。ドライバーを支援する技術が進歩し、多くの人が安心してドライブを楽しめるようになる日がくるのを心待ちにしたい。

従来の全周囲立体モニター技術では、映像変換の際に立体物が歪んでしまうため、状況を直感的に把握しにくいという課題があった

従来の全周囲立体モニター技術では、映像変換の際に立体物が歪んでしまうため、状況を直感的に把握しにくいという課題があった

富士通研究所の新技術では、レーダーレーザーの測定データをもとに微細な投影面を生成。そこに映像を表示するので立体物が歪まない

富士通研究所の新技術では、レーダーレーザーの測定データをもとに微細な投影面を生成。そこに映像を表示するので立体物が歪まない