フォーミュラ1▲F1(フォーミュラ1)は、1950年に始まったFIA(国際自動車連盟)が主催する世界最高峰のレースカテゴリー

パワーユニットは4社のみが供給

F1(フォーミュラ1)は、1950年に始まったFIA(国際自動車連盟)が主催する世界最高峰のレースカテゴリーだ。現在直下にはF2、F3、F4といったステップアップ用のカテゴリーが用意されており、熾烈な争いが繰り広げられている。

F1と下位カテゴリーとの大きな違いは、下位カテゴリーではシャシーやエンジンがワンメイクなのに対して、F1ではシャシー、そしてPU(パワーユニット)がチームによって異なる点だ。

2021年シーズン時点では、シャシーはチームごとにオリジナルのものを使用するよう規定されている。そしてPUは、メルセデス、フェラーリ、ルノー、そしてホンダの4社のみが供給している。ウイリアムズとマクラーレン、アストンマーティンにメルセデスを加えた4チームはメルセデスのPU。アルファ ロメオとハース、そしてフェラーリの3チームはフェラーリPU。アルピーヌは自社のルノーPU。そしてレッドブルとアルファタウリの2チームはホンダのPUを搭載している。

現代のF1マシンは、2014年に始まったレギュレーションによって、カーボンファイバー製のシャシーに、1.6L V6エンジンとターボチャージャー、そして、熱エネルギーを回生するMGU-Hと、運動エネルギーを回生するMGU-Kの2つのシステムを組み合わせたエネルギー回生システム(ERS:Energy Recovery System)という、いわゆるハイブリッドのPUを搭載する。最高出力は公表されていないが、エンジン単体で約850馬力、PUトータルで約1000馬力ともいわれている。

シャシーもPUも、すべての開発を自社でまかなうことはコスト負担が大きく、それを実現できているのは、メルセデス、フェラーリ、アルピーヌ(ルノー)の3チームのみというのが現状だ。

また、新PU導入以降はメルセデスの強さが際立っており、2014年シーズンからコンストラクターズ選手権とドライバーズ選手権においてダブルタイトル7連覇を達成。今シーズンの第15戦ロシアGPでは、ルイス・ハミルトンが勝利し、通算100勝を達成。これは、ミハエル・シューマッハの通算91勝を追い抜いたF1史上最多記録である。
 

RB16B▲ホンダのPU「RA619H」を搭載するレッドブル レーシング ホンダのRB16B
W12 Eパフォーマンス▲メルセデスのPU「M12 Eパフォーマンス」を積むメルセデスAMG ペトロナスのW12 Eパフォーマンス
SF21▲フェラーリのPU「065/6」を積むスクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウのSF21
A521▲ルノーのPU「ルノー E-テック 20B」を搭載するアルピーヌF1のA521

2021年シーズンは、鈴鹿での日本GPはあいにく中止になってしまったが、全22戦でスケジュールが組まれている。

また、レース中にアクシデントが発生した際などに先導するセーフティーカーやメディカルカーだが、今シーズンはメルセデスとアストンマーティンがオフィシャルカーを提供している。ちなみに、メルセデスのセーフティーカーは「AMG GT R」、メディカルカーは「AMG C63 S ステーションワゴン」だ。アストンマーティンのセーフティーカーは「ヴァンテージ」、メディカルカーは「DBX」となっている。レースごとに振り分けられているというので、こんなところに注目してみても面白いかもしれない。
 

メルセデス AMG GT R▲1996年からセーフティーカーとメディカルカーを提供するメルセデス。セーフティーカーには現在、AMG GT Rが用いられている(写真は2020年シーズン仕様)

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アストンマーティン ヴァンテージ▲2021年からアストンマーティン ヴァンテージもセーフティーカーとして登場。特別な改良が施されている

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そして、来年2022年シーズンは、レギュレーションが大きく変更される。マシンの底面に段差の付いたステップドボトム方式は、来年よりフラットな形状でマシンの底面と路面との間を流れる空気を制御してダウンフォースを生み出すグランドエフェクト方式へと変更される。これにより、ウイング類などマシン上面にあるエアロパーツを簡素化でき、マシン後方で発生する乱気流を抑制する。これは、レース中にオーバーテイクがしやすくすることが狙いだ。

また、長年F1では13インチタイヤを採用してきたが、2022年シーズンより18インチにサイズアップ。すでにフォーミュラEではミシュランが供給する18インチタイヤを装着しており、市販タイヤへの技術転用がしやすくなるといったメリットがある。

パワーユニットに関しては、2021年シーズンをもってホンダがF1パワーユニットサプライヤーとしての参戦を終了する。ホンダはPUに関する知的財産権の使用許諾をレッドブルに与え、同社はPUを製造するRed Bull Powertrains(レッドブル・パワートレインズ)を設立。現在、ホンダの英国におけるF1参戦活動の拠点であるHonda Racing Development UK(ホンダ・レーシング・ディベロップメント・ユーケー)の従業員はレッドブル・パワートレインズへ転籍となる。また、現在ホンダの二輪レース活動を運営するHRC(ホンダ・レーシング)に四輪レース活動機能を追加し、モータースポーツの体制を刷新。2022年シーズンにおけるPUの組立支援や、サーキットおよび日本におけるレース運営サポートの実施などはHRCが行うという。

つまり、2022年シーズンも実質的にはホンダのPUを搭載して走るレッドブルおよびアルファタウリのマシンを見ることができるというわけだ。唯一の日本人ドライバー・角田裕毅選手の活躍にも大いに期待したい。
 

文/藤野太一、写真/本田技研工業、ダイムラーAG、フェラーリ、アストンマーティン 、アルピーヌ