マツダ ロードスター

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
 

車遊びを諦めていたが、四駆で新境地を開拓

トラックドライバーとして全国を走る白澤翔太さん。運転を仕事に選んだだけあって、子供の頃から乗り物が大好きで、16歳になったらすぐに運転免許を取得。まずは原付、そしてビッグスクーターに乗り、18歳になり車の免許を取得してからは、R33型日産 スカイライン、トヨタ アルテッツァ、スズキ アルトワークスなど、様々な車を乗り継いできた。車歴の中には軽トラックも入っている。

「軽トラも仕事ではなくプライベートの遊び車として選びました。4WDのSUV以外はほとんどのボディタイプに乗ってきたと思います」

白澤さんの車選びの基準は「走らせて楽しいこと」。だから車歴はスポーツカーが多いし、軽自動車やセダンも必然的にスポーツタイプを選んできた。

そんな白澤さんの車選びが変化したのは結婚して子供が生まれたことだった。仲間に子供が生まれ、1人、2人とスポーツタイプの車から降りていった。“結婚”という幸せを手に入れたら、代わりに何かを諦めなければいけない。そう思っていたから、自分が子供を授かったときも走りの車を捨てることに抵抗はなかったという。

白澤さんは家族で使う車としてミニバンをチョイスしたが、正直、車に対する感情はまったくなかった。スライドドアは子育てに便利。車は楽しむものではなく家族みんなで移動するための道具。そう割り切って日々を過ごしていたそうだ。

でも、どこかで未練もあったのだろう。SNSのタイムラインに流れてくる車関係のポストを眺める日々が続いていた。そんなとき、たまたま友人のポストが目に留まった。

「95プラドのディーゼル、今はこれくらいの相場か」

そのポストを見た瞬間、白澤さんにはひらめきのようなものがあった。これまでの人生で見向きもしなかった四駆の世界。しかも少し古いSUV。これなら家族で車を使えるし、面白い世界かもしれないと思ったそうだ。
 

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「当時はすでにオシャレにカスタムされた古い四駆が当たり前のように500万円以上の価格で売られていました。でも、95型のランドクルーザープラドのノーマルなら200万円以下で手に入ることを知り、これしかないと思いましたね」

プラドを見たときに思い出したのが、白澤さんが子供の頃に父親が乗っていた三菱 デリカスターワゴンだった。父親と一緒に車で河川敷に行くだけでワクワクした。同じような気持ちを自分の子供にも感じてもらえたら。それもプラドを選んだ理由だという。
 

マツダ ロードスター

普通の車だとちゅうちょするような未舗装路も進んでいくことができる。若い頃は自分が楽しむために走りの車を選んできたが、今は父親が白澤さんを楽しませてくれたように、家族で楽しめる車を選ぼう。プラドはその最適解だと感じた。
 

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「プラドはトラックにも通じるところがあります。万が一事故に遭っても屈強なラダーフレームが乗員を守ってくれる。僕は仕事で家を空けることが多いので、留守中に何か遭ったときの安心感という面でもプラドは頼りになると思いました」
 

プラドは走ること自体がアドベンチャー

白澤さんは2023年5月に走行距離約10万kmの95プラド TXリミテッドを購入。オーナーになって乗り心地のよさと走りのよさに驚いたという。舗装路はもちろん未舗装路でも快適。3Lのディーゼルターボは粘りがあり、2000回転以下でトルクフルな走りを味わえるから、街中でのスタートや高速道路の巡航まで気持ちよく走れる。

白澤さんが留守中に地元が大雨に見舞われた際、奥様がプラドで出かけた際に冠水路に遭遇してしまったことがあるという。普通の車ならまず走るのが難しい状況だったが、最低地上高が高いプラドだったので、事なきを得たという話を聞いたときは、やっぱり家族を守ってくれる車だと感じたそうだ。
 

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「もちろん本気でトライアルなどをやろうと思ったら、ランクル70などにそれなりのチューニングを施す必要があると思います。でも、僕はそこまでの性能は求めていません。家族でキャンプ場などの未舗装路なども安心して走れることが重要。出かける目的地を作らず、とりあえず家族で出かけて、ドライブしながら『こっちに行ってみようか』と林道を走ったりするのが楽しいんですよ」
 

マツダ ロードスター
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白澤さんのドライブの楽しみ方は、家族――特にお子さんにとって最高のアドベンチャーになっているに違いない。そして車を操る父親を頼もしく感じるとともに、家族でのドライブが記憶に残るイベントになるとともに、どんな遊園地でも味わえないスリリングなアトラクションになっているはずだ。

プラドのボディには林道を走った際に小枝でついた傷がいくつもあった。でも、それはひな壇に飾っているのではなく、ちゃんとオフロードを走っているという証し。勲章のようなものだと考えている。
 

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「製造から25年経っているので、普通に考えたらかなり古い車。でもエンジンは一発でかかるし、ATの調子もいい。もちろん日常点検はしていますが、動かなくなりそうっていう不安がまったくないんですよね。僕はこの車の最後のオーナーになるつもりでいます。これから20万km、30万kmと走っていって、家族や仲間と四駆ライフを存分に楽しみたいと思っています」

白澤さんの夢は、子供が運転免許を取得したときにこのプラドを引き継ぐこと。それまでにどれだけの思い出を作ることができるか、楽しみだ。
 

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トヨタ ランドクルーザープラド(2代目)×全国
文/高橋満、写真/篠原晃一
ホンダ NSX(初代)

白澤翔太さんのマイカーレビュー

トヨタ ランドクルーザープラド(2代目)

●年間走行距離/2万km
●マイカーの好きなところ/車の全体のシルエット
●マイカーの愛すべきダメなところ/4速ATなので、パワーバンドが使えないときはもたつく
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ファミリーカーで遊びたい人

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESELとスズキ ジムニー