ハイパーカー▲モータースポーツの技術を注力したレーシングカー直系マシンがスーパーカーブランドから続けざまに登場。フェラーリの新型スペチアーレ「フェラーリ F80」(写真手前)には、F1やWECで採用されるV6ターボ+800Vハイブリッドシステムを取り入れ、WEC参戦マシン「フェラーリ 499P」(写真奥)と同じアーキテクチャーのパワーユニットが搭載されている

F80のパワートレインはWEC譲りで最高出力1200psを発揮

この数ヵ月、ほぼレーシングカーながら、公道走行を可能としたモデルが続々と登場している。そんなレーシングカー直系の最新スーパーカーをみてみよう。

2024年10月17日にフェラーリ史上最もパワフルなスーパーカー「フェラーリ F80」が発表された。これはF40やF50、エンツォ フェラーリ、ラ フェラーリなどの系譜を継ぐいわゆる“スペチアーレ”モデル。最高出力900ps、最大トルク850N・mを発揮する3L V6ターボエンジンに800Vのハイブリッドシステムによってフロント2基、リア1基のモーターを組み合わせ四輪を駆動する。
 

ハイパーカー▲F80は799台の限定で生産される特別モデルで、その車両価格は5億円超。パフォーマンスも価格もモンスターという形容がふさわしいスーパーカーだ

システム最高出力1200psを発生するこのアーキテクチャーは、現在WEC(FIA世界耐久選手権)に参戦するハイパーカーである499P譲りのもの。また、現在のF1マシンが採用するエネルギー回生技術のMGU-KやMGU-H(2種類のモータージェネレーターユニット)なども転用しているという。

そして、F1をはじめWECのハイパーカーなど現在のレーシングカーにとってパワートレイン以上に重要な意味をもつのが空力性能だ。

F80では499Pのノウハウを投入し、ドライブレーン型フロントウイングやアクティブリアウイング、リアディフューザー、フラットアンダーボディなど様々なエレメントが連携し、時速250km/hで1050kgものダウンフォースを発生。最高速度は時速350km/h、0-100km/h加速は2.15秒を誇る。なお、生産台数は世界限定799台。価格はおよそ5億8000万円というがすでに完売といわれている。
 

ハイパーカー▲たくましさを感じるボディのデザイン性だけでなく、レーシングカー譲りのエアロダイナミクス性能を追求。可変式の大型リアウイング、リアディフューザーなどを採用する
ハイパーカー▲シングルシーターのレーシングカーからインスピレーションを得たというインテリアは、ドライバーをメインにし、パッセンジャーシートはやや後方に配置

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フェラーリ 歴代スペチアーレ × 全国

マクラーレン W1は、F1&P1に続く「1」を背負う究極マシン

F80が発表された翌月となる2024年11月13日には都内で「マクラーレン W1」のジャパンプレミアが行われた。「W1」とは、マクラーレン F1とマクラーレン P1の継承モデルに位置づけられる、究極のパフォーマンスを追求する「1」モデルの最新型。公道走行可能なマクラーレンとして史上最速のモデルとなる。
 

ハイパーカー▲F1初優勝から50年のメモリアルイヤーに誕生したW1。マクラーレン史上最速を誇るという

パワートレインは最高出力928ps/最大トルク900N・mを発揮する4L V8ツインターボエンジンに、最高出力347ps/最大トルク440N・mのモータースポーツ由来のモーターを組み合わせ、システム合計出力は最高出力1275ps、最大トルク1340N・mに到達。

新型8速トランスミッションを介し、これだけのハイパワーながらも後輪駆動となっている。

W1専用のカーボンファイバー製モノコック「マクラーレン エアロセル」と「マクラーレン アンへドラル ドア」を採用。車両重量は1399kgでパワーウェイトレシオは911ps/tを実現。0-200km/hは5.8秒、0-300km/hは12.7秒を切る驚異の加速力は「スピードテイル」を上回り、同社が基準とするサーキットでは「セナ」のラップタイムを3秒短縮。最高速度は時速350km/hに達すると電子的に制限される。

こちらは世界限定399台。価格は英国付加価値税を含めて200万ポンド(約3億9000万円)。フェラーリ F80と同様、発表の時点ですでに完売とのことだ。
 

ハイパーカー▲F1参戦車両のMCL38と同様に空力性能を追求。エクステリア上部にシュリンクラップドデザインを採用、さらに可変式ウイングなどの空力デバイスを備えている
ハイパーカー▲ドライビング時に最高レベルの視界と快適性を提供するというラップアラウンドインテリアを採用する

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マセラティやメルセデスのレーシングカー直系スーパーカー

ここで、もう少しリーズナブルかつ今からでも購入可能なモデルをご紹介。

2024年12月1日に、マセラティが「GT2ストラダーレ」を発表した。これはミッドシップスポーツカー「MC20」をベースにつくられたFIA GT2選手権用のレースカー「マセラティ GT2」のロードバージョンという位置づけのもの。

GTマシンにおいてもエアロダイナミクスは最重要項目であり、GT2ではフロントセクションをはじめ、アンダーボディやリアディフューザーの形状を変更。また、3段階に調整可能なリアウイングなどによって時速280km/hで最大500kgのダウンフォースを発生させる。
 

ハイパーカー▲GT2 ストラダーレはスパ・フランコルシャンGPなどで優勝を飾ったレーシングカーのマセラティ GT2に、グランドツーリングの快適性を与えたマシン

3L V6ツインターボ“ネットゥーノ”エンジンは最高出力640ps、最大トルク720N・mを発揮。トランスミッションは8速DCTの組み合わせで後輪を駆動する。カーボン製のボディパネルやバネ下重量の軽減により、車重を59kgも軽量化。0-100km/h加速は2.8秒、最高速度は324km/hに到達する。

車両価格は未定だが、およそ6000万円とのことで2025年後半のデリバリーを予定。生産台数は発表されていないが、こちらはまだ注文可能のようだ。
 

ハイパーカー▲時速280km/hで最大500kgのダウンフォースを発生させるエアロダイナミクスを実現。大型のマルチポジションリアウィングが最大370kgまでダウンフォースを生み出す

これまでにも「メルセデスAMG ONE」や「アストンマーティン ヴァルキリー」など公道を走るハイパーカーが発売されてきた。

実はトヨタも開発を進めていたもののハイパーカーに関しては開発中止となったという。ただし「GR GT3 Concept」の市販モデルの開発が進められており、おそらく来年にはお披露目されるということだ。

先日、ランボルギーニは国立競技場を貸し切って新型ハイブリッドスポーツ「テメラリオ」のアジアプレミアを行うなど、スーパーカーの世界はどうやら不景気知らずのようだ。
 

ハイパーカー▲新型4.0L V8ガソリンツインターボエンジンに、3基のモーターを組み合わせたパワートレインを搭載したランボルギーニのテメラリオ。システム最高出力920ps、最大トルク730N・mを発揮し、最高速度は時速343km/hを実現。0-100km/h加速は2.7秒に達する
ハイパーカー▲メルセデスAMG ONEは、1.6L V6電動ターボエンジンと4つの電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用したハイパーカー。F1の高いパフォーマンスを継承し、フロントフェンダーの可動式ルーバーや大型可動式リアウイングなどを装備する公道走行可能なマシンとして275台限定で生産された
ハイパーカー▲F1テクノロジーを公道仕様車に持ち込んだアストンマーティン ヴァルキリー。自然吸気の6.5L V12エンジンの最高回転数は1万1100rpmを実現。リッター当たり154bhpの出力を誇り、運動エネルギー回生システム(KERS)と組み合わせ、その合計出力は1130bhpに至る
ハイパーカー▲2022年に発表されたTOYOTA GAZOOレーシングのGR GT3 Concept。欧州のサーキットでテストしている様子がスクープされている
文/藤野太一 写真/アストンマーティン、トヨタ、フェラーリ、マクラーレン、マセラティ、メルセデス・ベンツ、編集部