ブルーバード

【連載:どんな車と、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんな車と、どんな時間を?
 

子育てがひと段落したからこそ! 自分のために選んだ大好きな旧車のブルーバード

30代の頃はハチロクに乗っていたという塗装業を営む梶原研二さんだが、上の子はバスケットボール、下の子は野球を小学生の頃からがんばっていたから、週末はひたすらミニバンで部活の送り迎え。

時間もないし、家を建てたばかりということもあって、とても好きな車を買うことはできなかった。それでもいつか好きな旧車に乗りたいと思い続けていた。

「嫁さんにはもうずっと、何年も言い続けましたよ。いつか買いますって」

しかも、ほぼ同時期に家を建てたお隣さんも旧車党で1980年式のチェイサーを買ったものだから、お隣さんと顔を合わせ、お隣さんの愛車を見るたびに「いいな、いいなあ」「買いなよ、買っちゃいなよ」なんて会話をしていたという。
 

ブルーバード
ブルーバード

そして8年前、ついに下の子が高校3年生となり、部活を引退する。さっそく梶原さんは第一候補だったハコスカを探したが、予算が見合わず探し続けていると、たまたまこのブルーバードに出合った。

どうやら前オーナーが手間とお金をかけてきれいなフルノーマルスタイルに仕上げたところで、満足して手放したといったふうで、とても状態がいい。

即決だった。奥さんも「いいじゃん」と二つ返事だったそうだ。手に入れるとさっそくちょっとヤンチャ系にカスタムしたそうだが、「今は510の形をくずさないように」改めて仕上げている。
 

ブルーバード

きれいなサファリブラウンのボディと同色のリップスポイラーは、色合わせした塗料を発注して、ガレージに塗装ブースを組み、自分で塗装したという。さすがは塗装業ですねと言うと、「いや建築の塗装が仕事ですけど、車は大変。もうやらない、疲れた(笑)」とのこと。

磨き上げられたボディの美しさはもちろんのこと、エンジンルームのまばゆいばかりの美しさは圧巻。エンジンは一度降ろしてエンジンパーツメーカーに送り、すっかりバラしてメンテナンスしてあり、ネジ1本までメッキをかけて組んである。

あまりの美しさに、トラブルもなさそうですねと聞くと、さすがに梶原さんより年上の1970年生まれのブルーバードだけあり、「トラブルはいっぱいあります。ブレーキとエンジンのトラブルでレッカーにも2回乗りましたし」と苦笑い。

「今ようやく快調に走るので、なんとか現状維持していきたいです。それでも冬は朝30分は暖気が必要だし、出かけようと思ってもエンジンかからないこともあるし」
 

ブルーバード

気安く安心して乗れる車ではないから、普段走りを楽しむのはもっぱらバイク。ブルーバードが出動するのは旧車イベントが中心だ。希少な510型ブルーバードは、ぜひイベントに来てほしいと、よくお声がかかるそう。

「特別な車で仲間と集まって、一緒に走って、車の話しながら飲むのはやっぱり楽しいですよね。欠点もいっぱいある、クセのある子ですけど、一生モノです」

このブルーバード、息子さんは一回だけ乗せたが、お嬢さんと奥さんは一度も乗せたことがないそうで、「こんな車乗れるかっちゅう感じですわ」と笑う。長年しっかりパパの務めを果たして手に入れたご褒美の宝物は、自分だけのサファリブラウンの輝きだ。
 

ブルーバード
ブルーバード▲旧車イベントに参加した際に仲間がプレゼントしてくれたもの。参加するたびにつながりが増えていくそう

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日産 ブルーバード×全国
文/竹井あきら、写真/山辺学
ブルーバード

梶原研二さんのマイカーレビュー

日産 ブルーバード(3代目)

●購入額/380万円
●マイカーの好きなところ/クーペボディとサファリブラウンのボディカラー
●マイカーの愛すべきダメなところ/夏に乗れないところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/旧車好きの人
 

竹井あきら

ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。