ジムニー釣り場への移動やタックルを積み込む車は、もはや釣具だ。釣りを極める者はいかにして車を選び、どのように使っているのか? トップアングラーに釣車へのこだわりを聞いてきた

カスタム次第で、積めて寝れる釣車になる

ランカーハンター、つまり「おおむね80cm以上のシーバスを仕留める男」として知られる釣り人・久保田剛之さんの釣車は、軽オフローダーであるスズキ ジムニーの先代モデル。

スズキ ジムニーはきわめて小さな軽自動車ではあるものの、そもそもは林業などで使う作業車として開発された車だ。それゆえ走破性能は世界トップレベルであり、「この世にジムニーで走って行けない道はない」とすらいわれている。

久保田さんも、「大雨の後、歩くとヒザぐらいまでズボッとはまってしまうような状態の河川敷でも、ジムニーなら何の苦もなく走っていけちゃうんですよね」と証言する。

ジムニー

悪路走破性能については疑問の余地がないスズキ ジムニーではあるが、アングラーが釣車として使う場合には、その“小ささ”があだになる可能性もある。要するに「走れるけど、サイズの関係で十分なタックルが積めないし、寝れないし」みたいな話だ。

そのあたり、アングラーとしての久保田さんはどう対応しているのだろうか?

「リセールを考えている場合は別ですが、もしも売ることは考えず、自分なりに乗りつぶすつもりであるなら、いろいろと釣り仕様に改造しちゃえばいいんですよ。そうすればジムニーだって『十分積めて、普通に寝れる釣車』に変わります。そしてジムニーはそもそもの作りがきわめてシンプルだから、割と簡単に改造できちゃうんですよね」

久保田さんの場合、まずは荷室内のホイールハウス(タイヤがある部分の出っ張り)の上部をカットしてルアーボックスをすっぽり入れられるようにし、その他の小物類は荷室の床面に、まるで釣具屋さんの棚のように(?)並べて置いている。

で、その上に荷室サイズのアルミパネルを敷くことで、ジムニーの小さな荷室を広く有効に使えるようにカスタマイズしているのだ。

ジムニー▲ラゲージスペースの床面に釣具が収納できるように自身でカスタム。中にはルアーやラインなど必要な釣具が詰まっていた。コンパクトスペースをカスタムして有効活用している
ジムニー▲ベッドキット下にはたくさんのウェーダーやルアー、クーラーボックスが詰め込まれている

「車内の天井に設置したロッドホルダーはさすがに既製品ですが、とにかくいろいろと工夫すれば、小さなジムニーでも普通の量のタックルを積んだうえで、普通に車中泊もできちゃうものなんですよ。ちなみに夏場に車内で寝るときは、アルミパネルの上の頭の横ぐらいにロックアイスを1袋置いておくと、熱伝導でひんやりして気持ちいいですよ(笑)」

ジムニー▲久保田さんがプロデュースしたメガバスの大ヒットルアー「KAGELOU(カゲロウ)」

遠征釣行でも苦にならない最高の相棒に

新潟や福島ぐらいであれば、ジムニーを使って日帰り釣行をしてしまうという久保田さん。ただしそういった長距離を走ると、先代ジムニーの古い純正シートでは腰が痛くなってしまうこともある。そのため運転席のシートは「RECARO」という、自動車レースの世界などでも有名な「腰に優しいシート」に交換している。

ジムニー▲運転席は長距離移動を考えレカロシートに変更

「知り尽くしたホームで釣るのももちろん楽しいですが、“知らない川”で1本上げるのが楽しいんですよね。そのためにも、ホームからは遠い未知の川へ行きたいんです。そんなとき、なんでも積めて、どこまでも走っていける“自分仕様のジムニー”は最高の相棒になるんですよね」

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ジムニー
文/伊達軍曹、編集部 写真/柳田由人
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。