オートモビル・カウンシル▲今年で8回目となる「オートモビル カウンシル」が、4月14日から16日の3日間にわたり千葉県の幕張メッセで開催された。ヘリテージカーの展示をはじめ、新型車両やコンセプトカー、自動車関連グッズの販売、音楽ライブなども行われた

世界中で自動車イベントの存在理由が問われるなか進化し続ける!

人や街、社会と同じく、イベントもまた成長し衰退する。緩やかに、けれども目に見えて。

世界の名だたるモーターショーが衰退し、自動車イベントそのものの存在理由が問われる中、成長しはじめた自動車イベントをここ日本で体感できることほど嬉しいことはない。

今回で8回目となった「オートモビル カウンシル 2023」が4月14日から16日の3日間、幕張メッセにおいて過去最大規模で行われた。テーマをこれまでの「クラシック ミーツ モダン」から「クラシック ミーツ モダン&フューチャー」へと“マイチェン”しての開催にその“進化”が見てとれる。

過去と現在のみならず、未来をも見据えていこうという主催者の意気込みであり、3つ揃ってこそ真にヘリテージの醸造、自動車文化の創造であることを意識したものだと思う。
 

オートモビル・カウンシル▲日本の自動車メーカーおよびインポーターは9社が出展。ヘリテージカー販売店は42社と、過去最多の出展数となった。とくに今回のオートモビル カウンシルで注目したいのは、ヘリテージカーだけでなく次世代のコンセプトカーも登場したことだ

その象徴的なプレミアがあった。愛知県に本拠を置くエンジニアリング企業のAIM(エイム)が、元日産デザイントップの中村史郎氏率いるSNDPと組んで発表した次世代スポーツカーのコンセプト、「EV SPORT 01」だ。

AIMは自動車メーカーやティア1級サプライヤーにエンジニアを派遣する企業であり、以前より自社での開発能力に磨きをかけてきた。自社製エンジンでル・マン24時間耐久レースを戦い、ピュアなガソリンエンジン搭載車で最高位を獲ったこともある(2008年から参戦して3年連続完走。2010年は総合4位でガソリンエンジンで第1位)。

エンジン開発で頂点を極めた後、次世代を見据えて電気モーター開発にも取り組み、APM140、そしてAPM200と高性能モーターの開発に成功した。モーターを作ったのなら次は走る車を……。自動車開発に関わる派遣型のエンジニアリング企業だからこそ、自社の人材が経験を積み新たな技術を学んで腕を磨く循環を作りたい、AIMという会社に夢と誇りを持ってほしい。社長の鈴木幸典氏は「自動車メーカーになりたいわけじゃないんです。私たちの技術力を見てほしい」と語る。

「60年代のスポーツカーに憧れた世代が素直にかっこいいと思ってくれるようなスタイルを若いデザイナーが描いてくれました」と中村氏。AIMが自力で作り上げたBEVのベアシャシーにカーボンモノコック製のボディパネルを被せて作り上げた。床下にバッテリー積むゆえ、ややもすると腰高に見えそうなところを美しいライン構成とルーフデザインの工夫によって見事なスポーツカールックスに仕立てている。インテリアデザインもまた、車好きに刺さる。事実、クラシックカー好きが多く訪れるこのイベントでも「こんなEVなら欲しい」という声をたくさん聞いた。
 

EV SPORT 01▲エンジニア集団のAIMが発表した次世代スポーツカーのコンセプト「EV SPORT 01」は「自分たちが今乗りたいと思うEV」をコンセプトに開発したオリジナルEVだという
EV SPORT 01▲EVらしさの中に、あえて60年代のクラシカルなスポーツカーの雰囲気を漂わせる。なお、今年7月には英国ウェスト・サセックス州で行われるGoodwood Festival of Speedで実走行させる予定だという
EV SPORT 01▲AIM NEV(New Energy Vehicle) PROJECTとして製作されたEV SPORT 01のデザインを担当したのは、元日産自動車のデザイントップであり専務執行役員CCOを務めた中村史郎氏(写真左)。AIMの鈴木幸典代表取締役(写真右)は「私たちの技術力を見てほしい」と語った

もったいないことに今のところ市販の予定はない。「少量生産ならあり得るでしょうけれど、認証の壁は大きい」(鈴木氏)。代わりと言ってはなんだけれど、AIMには次のプロジェクトも控えており、それはもっと現実的な電動コミューターに関係するらしい。もっともその昔から「モーターショーでの評判があまりに良くて市販化を決定」などという例はたくさんある。ランボルギーニ ミウラなどはその際たる例だろう。

クラシックとモダンの展示では、主催者によるテーマ「ポルシェ 911の60周年、初期ナローからカレラGTまで」と「エンツォ フェラーリ生誕125周年記念、フェラーリ スペチアーレ」が圧巻の一言だった。もちろん、メーカーによる最新モデルの披露や過去最大の出店数となった42社によるヘリテージカー販売も相変わらず本イベント最高のコンテンツであり続けている。
 

ポルシェ▲主催者によるテーマのひとつが「ポルシェ 911 60周年記念企画、初期ナローからカレラGTまで」。1966年式911にはじまり、73年式の911 カレラ RS 2.7、93年式の959、06年式のカレラGTが展示された
ポルシェ▲1973年式ポルシェ 911 カレラ RS 2.7
ポルシェ▲2006年式ポルシェ カレラGT

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ポルシェ 911 × 全国
フェラーリ▲もう一つの主催者テーマが「エンツォ フェラーリ生誕125周年記念、フェラーリ スペチアーレ」。フェラーリが各時代に生み落としたスペシャルモデル(1984年の288GTOから20年式のモンツァSP1までの計6台)が展示された
フェラーリ▲1984年式フェラーリ 288GTO
フェラーリ▲1990年式フェラーリ F40
フェラーリ▲2020年式フェラーリ モンツァ SP1

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フェラーリ × 全国

文化的な発展を目指す姿勢は車両展示のみならず、コンサートやアート展示にも積極的に取り組んだことからうかがえよう。

幕張メッセのカーイベントといえば「東京オートサロン」がある。方向性としてはその対極に位置すると言っていい「オートモビル カウンシル」。いずれも車を愛する自動車イベントであることに違いはない。「オートモビル カウンシル」には「東京オートサロン」と並び立つ、日本の代表的な“車文化イベント”に成長してほしいと願っている。
 

文/西川 淳、写真/AUTOMOBILE COUNCIL 実行委員会、篠原晃一、編集部