きっかけは幼稚園の頃に見た「のりものビデオ」。夢を叶え、念願のポルシェ 911オーナーに
2023/02/27
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
父がくれたポルシェカタログが宝物
かなり派手なポルシェだ。
「正直もうちょっと地味目の個体がよかったんですけど、そこは買ってから自分で手を加えていけばいいかなと思いまして、購入に至りました」
そう穏やかに語るオーナーの森さんはごく控えめな印象だから、愛車とのギャップがすごい。
幼稚園の頃に見ていた、バンダイの「のりものビデオ」でポルシェが好きになったという森さん。
しかも、子供の頃なぜか近所にはポルシェ乗りが多く、964も993も986も944も止まっていた。そんな中を歩いて中学・高校に通っていたら、すっかりポルシェのとりこになってしまった。
当時お父さんが何を言うでもなく、ポルシェのカタログを譲ってくれたというから、きっとはた目からも明らかなほど夢中だったのだろう。
特に好きなのは930、964、997といった、丸目のヘッドランプがぽこっと飛び出したカエル目系統の911だ。
中でも森さんが生まれた年にデビューした964には、「やはりポルシェといえばこれ」という思い入れがある。
いつかはポルシェと心に決め、将来金銭的な余裕ができたら必ずとは思っていたが、近年の車体価格の高騰ぶりに、「買うなら相場としてここがラストチャンスなんじゃないか」と危機感を抱き始めた。
身近な車好きの友人たちが次々にフェラーリやアルピーヌ、ロータスを購入したのにも背中を押され、本腰を入れて物件選びを始めたのが2021年の終わり頃。
しかし、希望するMTの964の価格はすでに高騰し、とても予算内では手が届かない状況だったという。
そんな折にカーセンサーで出会ったのが、この青い964型カレラ4だ。価格は「応談」で、修復歴あり。
一般的にはひるんでしまいそうな物件だが、森さんは「社外色で社外部品も使われていたので、もしかしたら予算内じゃないかと」期待して問い合わせた。
すると予算ぴったり。すぐに現車確認しにショップへ駆けつけた。
毎日の充実した生活を“後押し”してくれる911
晴れて愛車となった964が森さんのもとに来たのは、2022年の6月のことだ。
9月にはブレーキブースターの故障から整備に入り、12月まで長期入院となるトラブルもあったが、週末ごとに芦ノ湖スカイラインや湾岸線へとドライブに出かけている。
「ホントに後ろが固定されてるような感じで曲がっていくんですよ」と、独特のドライブフィールとフラットシックスのエンジン音を大いに楽しんでいる。
昨年のお盆と今年の正月には、神奈川県茅ケ崎の自宅から静岡の実家まで里帰りの足としても活躍した。
先代の愛車がSW型のMR2だったこともあってか、実家の面々はポルシェでの帰省にそれほど驚くこともなかったという。
でもきっと、中学生だった森さんにポルシェのカタログを譲り、幼い頃には箱根のポルシェ博物館に連れて行ってくれたというお父さんは、内心喜んでくれていたのではないだろうか。
今年はバンパーを純正に、ホイールもシルバーに戻す「地味化計画」を実行していくつもりだ。
また、かつてMR2で行って感動した、絶景の磐梯吾妻スカイラインにもドライブに行きたいという。
「購入金額の半分くらいローンなので今後払い続けるんですけど、それが仕事の励みになっています」という森さんは、やるべきことをやったというすがすがしさにあふれていた。
森 孝之さんのマイカーレビュー
ポルシェ 911(964型)
●年式/1990年
●購入してからの走行距離/約2000km(4ヵ月)
●マイカーの好きなところ/とにかく見た目が好き! サイズ感もちょうどよく、運転感覚が自分に合っていること
●マイカーの愛すべきダメなところ/前乗っていたMR2よりは頻繁に壊れます(笑)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ポルシェが好きな人。故障してもお金がかかっても、愛し続ける覚悟がある方
ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。