田端F邸 +弓場章史 + LDKホーム(後編)

ヤマトの司令室をイメージさせる書斎とそこから眺める英国車

約14坪の土地にクルマ2台が停められるガレージを作りたい。そんなリクエストに応えるために採用したのが、リフトを使った独創的なガレージだった。

ガレージを挟んで上下に配置したプライベート空間

2階へ向かう階段を右手に見ながら正面の扉を開けると、そこはピアノ室。階段を数段下りた半地下の空間には、グランドピアノが。どうやって入れたんだろうと不思議に思うのはピアノが設置された部屋を目にしたときの常だが、専門業者がまるで手品のようにスルリと収納してしまうことは周知のとおり。住空間とは隔絶されたここは、音楽教師である奥様だけのプライベートルームだ。

ピアノ室を出て階段を上ると、中2階(厳密には踊り場!)がFさんの書斎となっている。デスクに座ると正面には、手前にスラントした広い窓が設けられていて、ガレージを見下ろすことができる。

「宇宙戦艦ヤマトの司令室のよう」同行した編集担当者がいうと、「まさに、それをイメージしました」と弓場さん。ここは、クルマを眺められる場所が欲しい…というFさんの希望に応じ、弓場さんが提案した空間だ。ガレージからリビングへ続く動線上にありながら、プライベート感は確保され、まさに趣味の部屋という印象。「司令室」の窓からは、リフト上段に置かれたMGの全景を俯瞰することができる。

英国車にこだわりが?

「とくにこだわりはありませんが、英国車の内装が好きなんです」

とFさん。あえてMGのルーフを開け放したままにすることで、英国車らしいインテリアをいつも眺めていられるというわけだ。

田端F邸

2階のリビングルームは、縦長の土地が最大限に生かされている。広いワンルームの中心にはオーダーメイドのテーブルが置かれ、同じくオーダーメイドの長イスが組み合わされている。5~6人は楽に腰かけられる広さは、リビングルームとして寛ぐもよし。親しい友人を招いてディナーパーティを開くもよし。見ているだけで、いろいろな使い方が想像できる楽しい空間だ。

「ここがリビング、ここがキッチン…と明確に分けず、自由に多機能に使えることが希望でした」 と、F夫人も満足している様子だ。

Fさんご夫婦はお2人とも仕事をお持ちだが、帰宅すると2人揃ってリビングルームで食事をし、その後Fさんは中2階の「司令室」へ。奥様はガレージ奥のピアノ室へとそれぞれ分かれ、就寝時は3階の寝室へ。このように、F邸はお2人のライフスタイルを巧みに反映し、時間帯で使用するスペースを明確に分けることで、お互いのプライベートも確保しているのだ。

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村 博道 photos / KIMURA Hiromichi
構成・石井 隆 editorial / ISHII Takashi

中2階にある書斎を階段スペースから見た様子。ガレージ側から続くL字形のデスクがあり、その横にはFさんの趣味であるミニカーが展示される

中2階からキッチン&リビングスペースへと上がってくる階段。ちょっとした空間を使って収納スペースが設けられている。上のメインカットは、この空間からキッチン&リビングを見たもの

上の写真にある階段を上って3階に行くと、そこに広がるのはバスルームや寝室などがあるプライベートな空間。1階から上に上るほど、プライベート色の強い空間がレイアウトされている

田端F邸 建築家・弓場章史 + LDKホーム
弓場章史建築設計事務所
tel.03-3989-8522
http://yuba-arch.com

所在地:東京都北区 主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦 構造:鉄骨造 規模:3階建
敷地面積:41.34㎡ 延床面積:100.12㎡
設計・監理:弓場章史建築設計事務所/弓場章史
プロデュース:LDKホーム
(tel.03-5468-9775 http://ldk.co.jp/