▲7月に登場した、ハイブリッドシステムを搭載したスイフト。JC08モード燃費は32.0km/Lを達成している ▲7月に登場した、ハイブリッドシステムを搭載したスイフト。JC08モード燃費は32.0km/Lを達成している

100万円台のコンパクトカーとは思えない出来の良さ

コンパクトカーで理にかなったハイブリッドシステムと聞かれれば、迷わず新しくなったスイフトのフルハイブリッドと答えるだろう。今回のシステムはソリオのハイブリッドモデルに使われたのが最初だが、実に理にかなっている仕組みなのである。なぜならば、MTのギア比で生じるトルクの谷を見事にモーターの動力で解消してスムーズに効率よく動力としてタイヤに伝えるからだ。そのシステムがコンパクトなスイフトに装着されたというので試乗してみた。

フルハイブリッドの車両重量はマイルドハイブリッドよりも60kg重いのだが、そのパフォーマンスはいかがであろうか。ぱっと見た感じは普通のスイフトとなんら変わりはないが、よく見るとサイドに取り付けられた“hybrid”のエンブレムが豪華になっていることに気がつく。

車に乗り込んで走り出すと、とにかく静粛性はとてもいい。ハイブリッドの恩恵であることはもちろん、エンジンの性能も実にいいのだ。ボディ剛性が高く、振動は気にならない。搭載しているのは1.2Lの4気筒エンジンだが、走りはマイルドスーパーチャージャーを装着しているかのようにトルクを上乗せした印象だ。

そして、やはりモーターの威力は素晴らしい。冒頭でも述べたように、モーターによるトルクがギア比で生じるトルクの谷を埋めている。ターボやスーパーチャージャーと違い、トルクの増幅時の燃料は使わないので、燃費にも貢献している。加速もスムーズで、連続的な速度の立ち上がりがコンパクトカーながら一つ上の印象を与える。

3名乗車した状態でも試乗したが、エンジンの嫌なバイブレーションもなく力不足も感じない。 さらに、アイドリング状態からの発進時もトルクが必要となるとモーターが力強く動き出す。エンジンの始動の素早さは高級車のハイブリッドのようだ。小型ながら最新の技術が詰まっている印象を与えることだろう。ハイブリッドということで重量も気になるところだが、試乗していてはその重さは感じない。

ただし、ハンドリングはコンパクトカークラスとしては落ち着いているものの、1人の試乗ではリアのバタバタとした部分は少々感じた。とはいえ、これほどのパフォーマンスで静粛性にも優れた快適なコンパクトハイブリッドカーが200万円以下というのだから驚いた。“恐るべしスズキの底力”という印象がますます強まった。
 

▲K12Cデュアルジェットエンジンに、発電も可能な駆動用モーター(MGU)と伝達効率に優れたトランスミッションであるオートギアシフト(AGS)を組み合わせている ▲K12Cデュアルジェットエンジンに、発電も可能な駆動用モーター(MGU)と伝達効率に優れたトランスミッションであるオートギアシフト(AGS)を組み合わせている
▲ブルーの加飾を施したシフトノブやブルーイルミネーションを備えたメーターなど、ハイブリッド車専用デザインとなっている ▲ブルーの加飾を施したシフトノブやブルーイルミネーションを備えたメーターなど、ハイブリッド車専用デザインとなっているた
▲HYBRID SLにはパドルシフトを標準装備している ▲HYBRID SLにはパドルシフトを標準装備している

【SPECIFICATIONS】
■グレード:HYBRID SL ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直4DOHC+モーター ■総排気量:1242cc
■最高出力:67(91)/6000 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:118(12.0)/4400 [N・m(kgf・m)/rpm]
■モーター最高出力:10(13.6)/3185-8000[ kW(ps)/rpm] ■モーター最大トルク:30(3.1)/1000-3185[N・m(kgf・m)/rpm] ■駆動方式:FF ■トランスミッション:5AGS
■全長x全幅x全高:3840x1695x1500(mm) ■ホイールベース:2450mm
■車両価格:194.94万円(税込)
 

text/松本英雄
photo/奥住圭之