▲発売から2年半が経ち、マイナーチェンジした5代目ステップワゴン。今回はハイブリッドモデルが追加されたスパーダに試乗した ▲発売から2年半が経ち、マイナーチェンジした5代目ステップワゴン。今回はハイブリッドモデルが追加されたスパーダに試乗した

見た目だけではなく走行性能も大きく進化した

5代目へとフルモデルチェンジしたホンダ ステップワゴンに試乗したのが、2015年5月であった。その時の印象を思い出すと「おとなしい植物系」、つまり「派手さはなくやわらかい見た目」というイメージだった。顔付きを少々シャープにしたスパーダであってもそれほどアクは強くなかった。

個人的にはミニバンでありながら上品で良いと思っていたが、勢いは十分とは言えなかった。パワーユニットもちょっと遅れて出てきたダウンサイジングターボだった。

それがひとつのアピールポイントでもあったが、本当はハイブリッドもラインナップに加えてバリューを高めたかったはずだ。

そして2年半が経過し、ステップワゴンはしっかりと磨かれてリニューアルされた。どうやら今回は、ハイブリッドモデルが投入されたスパーダに力を入れたようだ。

以前よりもガッシリとした顔つきになり、目力もシャープになった。どことなく先代スパーダのエッセンスが注入されたグリルまわりだ。

▲マイナーチェンジ前のおとなしく草食系だった顔つきから、ガッシリとしたイメージへと変化したフロントフェイス ▲マイナーチェンジ前のおとなしめだった顔つきから、ガッシリとしたイメージへと変化したフロントフェイス

外観だけではない。シャシーから見直して剛性を上げ、トータルの性能を大幅に向上させたという。見た目だけを整えたコスメティックなマイナーチェンジではないのだ。

実際に乗り込んでドアを閉めた瞬間に、立てつけの精度が上がったような印象を受けた。試乗会場のパーキングエリアから高速道路へ向かう。とても静かだ。

低速時にはEVモードが自動的にセレクトされて走り出す。トルクが低速からグッと出るEVモードでも、アクセレーションのフィールは扱いやすく乗りやすい。全幅が1700ミリ以下ということも相まって、狭い道でも乗りやすく操作しやすい。

県道に入りアクセルを少し深く踏んで流れにのる。エンジンが始動して、EV走行に必要な電気をバッテリーに供給する。

基本的にはアコードと同様のシステムであるが、エンジンが始動したときの音や振動はアコードよりも静粛性が高いように感じられた。

高速道路のETCゲートを通過する。ずいぶんと左右にクリアランスがあるように感じられたのは、タイトな全幅のためであろう。一気に加速する。速い。この手のミニバンでは一番の加速力なのではないかと思う。

“スポーツ”ハイブリッドと名乗っているだけのことはある。しかも燃費はJC08モードで25km/Lというから、実際の走行を考えてもこの性能ならば決して悪くはない。

▲スパーダにはハイブリッドモデルが追加された。燃費の向上だけではなく、力強い走りにも貢献している ▲スパーダにはハイブリッドモデルが追加された。燃費の向上だけではなく、力強い走りにも貢献している

コーナリング時には剛性が向上したことがわかる。メインフロアパネルの恩恵でサスペンションも良く動き、安定感と快適性を生み出そうとしている。

バッテリーを搭載することで重くなると、フレームの剛性不足が否めなくなる傾向に陥るが、高速の本線に入るコーナーでは安定している。一気に100km/hまで加速するが、かなり力強い。

新東名高速はアスファルトの状態が良いということもあるが、とても静粛性が高い。防音のための研究・開発に、相当な時間を割いてきたのであろう。逆に風切り音は少し気になってしまった。

あまりに快適なので、いつも以上に他の部分にも気が回ってしまう。ふと感じたのはボディのバイブレーションだ。メインフロアフレームの剛性が高くなった一方で、キャビンとのバランスが少しずれていると感じることがある。

ホンダセンシングを試すべくオートクルーズでゆったりと走らせてみる。「なぜホンダは今までセンシング技術を投入していなかったのだろう」と思わせるほど、今のミニバンの中では最も良い出来栄えだと思う。

スポーツハイブリッドとミニバンという組み合わせは、ホンダだけのものである。もっとアピールしても良いのではと感じた。

スポーティなのはスタイルだけではない。性能も十分スポーティで、かつ快適性能もトップレベルにあることを感じられた。

▲室内の静粛性が高いこともあり、快適な時間を過ごすことができた ▲室内の静粛性が高いこともあり、快適な時間を過ごすことができた
▲3列目へのアクセスだけではなく、狭い場所での荷物の積み降ろしにも適している“わくわくゲート”は健在 ▲3列目へのアクセスだけではなく、狭い場所での荷物の積み降ろしにも適している“わくわくゲート”は健在

【SPECIFICATIONS】

■グレード:SPADA HYBRID G・EX Honda SENSING ■乗車定員:7名
■エンジン種類:直列4気筒DOHC+モーター ■総排気量:1993cc
■最高出力:107(145)/6200 [kW(PS)/rpm]
■最大トルク:175(17.8)/4000 [N・m(kgf・m)/rpm]
■モーター最高出力:135(184)/5000-6000[kW(PS)/rpm]
■モーター最大トルク:315(32.1)/0-2000[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FF ■トランスミッション:CVT
■全長x全幅x全高:4760x1695x1840(mm) ■ホイールベース:2890mm
■ガソリン種類/容量:レギュラー/52(L)
■JC08モード燃費:25.0(㎞/L)
■車両価格:355.968万円(税込)

text/松本英雄
photo/尾形和美