好ましい高性能。タメのある大人の車

  • アウディ S3スポーツバック 走り|ニューモデル試乗
  • アウディ S3スポーツバック インパネ|ニューモデル試乗
↑アクセルを踏み込んでも暴れない足回りは懐が深く、大人らしさを演出(左)フラットボトム形状のパドルシフト付き本革巻きステアリングやシフトノブ、アルミ調ペダルなど、インパネ回りにも専用品が数多く装着される(右)
アウディのエントリーモデルA3スポーツバックにフラッグシップS3が追加された。外観上の専用部品は格子柄シングルフレームに、前後バンパー、スポイラー、18インチアルミ、2本出しマフラーなど。これ見よがしではなく品良くまとまっているのが「S」らしい。

中身のほうはかなり手が入っており、ベースモデルに比べ56psアップの256psを発揮する2L直噴ターボに、フルタイム4WDのクワトロとアウディ版DSGたる6速Sトロニックの組み合わせ。さらに連続可変ダンピングシステム「アウディ マグネティックライド」もオプションながら設定があり、昨今の流行もの(?)は全部用意されている印象だ。

先代の末期にもS3はラインナップされていたが、そちらは3ドアで6MTだった。今回のモデルは5ドアかつ2ペダルMTのSトロニック。より多くの人にアピールする素質に恵まれている。

ライバル不在の剛性感や精度の高さはさすがアウディ

  • アウディ S3スポーツバック シート|ニューモデル試乗
  • アウディ S3スポーツバック エンジン|ニューモデル試乗
↑ほどよくサポートしてくれる電動シート。本革の表皮はオプションとなる(左)CO2排出量を抑えた環境配慮型のエンジンというが、十二分にパワフルだ(右)
以前設定のあった3.2Lモデルが、グランドツアラーなのかスポーツモデルなのか、やや性格不明な点があったのに比べて、今回のS3はオトナのスポーツモデルで首尾一貫した仕上がりである。エンジンもアシも「タメ」のある乗り味だ。

TTSに搭載されているエンジンに比べてパワーダウンしている点はスペックフェチには気になるところかもしれない。しかし高出力を追求したあまりターボラグが気になるTTSよりも、S3のパワーとレスポンスの調和したセッティングのほうが個人的には好ましく思える。2500rpmから湧き出る豊かなトルクは明らかにタダモノではないし、勇ましい排気音、アクセルオフにするたびに聞こえるブローオフバルブの音など、五感に訴えかけてくる刺激は「S」の名に恥じぬものだ。

256psを叩きつけても暴れない懐深い足回りも大人らしさの演出に一役買っている。試乗車にはマグネティックライドが装着されていたこともあって、ノーマルモードでの乗り味はむしろ良い部類に入る。スポーツモードに切り替えると引き締まったフットワークを披露するが、それでも野蛮な乗り心地ではない。車全体から伝わってくる剛性感や精度の高さはさすがアウディ、ライバル不在だ。

欠点の少ないこの車にあえて苦言を呈するとしたら、相変わらず過敏すぎるアクセルと、TTSより150万円以上安いとはいえゴルフGTIより150万円以上高い、515万円というプライスタグくらいではないだろうか。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード S3スポーツバック
駆動方式 4WD
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4300×1765×1450
ホイールベース(mm) 2575
車両重量(kg) 1540
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1984
最高出力[ps/rpm] 256ps/6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 33.7kg-m/2400〜5200rpm
10・15モード燃費(km/L)
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/60
車両本体価格 515.0万円
(Tester/馬弓良輔(インポートカーセンサー副編集長) Photo/桜井隆幸)