※この記事はカーセンサー関東版44号(2000年11月30日発売)に掲載されていたものをWEB用に再構成したものです

単なる後継モデルでなく走りを追求した別セダン

  • トヨタ マークII 走り|ニューモデル試乗
  • トヨタ マークII リアスタイル|ニューモデル試乗
↑グランデiR-V。乗り心地と“キレ”を両立した走り重視のスポーツセダン(左)リアビューでは、リアコンビの真ん中をボディカラーが横切る構成になっているため、色味によってはかなり印象が異なる。また、車名とグレード名の位置もポイント(右)
走りを追求するなら、やっぱりセダンであるというのが、新マークIIのコンセプトだ。
そして、既存のマークIIの後継車をどう作るか? ではなく、そうしたセダン(より正確には、3ボックスタイプ)のあるべき姿をまず確認し、結果として、それにマークIIという名前をつけたのが、このモデルの開発の流れだったという。

とはいえ、クルマの大きさとか排気量は見事に「マークII」という場所を継承しており、その開発の話はちょっと言いすぎという気はするが、ともかく開発側のスピリットとしては、そういうことだった。そういえば、インテリア全体に見られる今回の素っ気なさは、非マークII的な光景ということもできるだろう。

そして、コンセプトは、少し高められたヒップポイント(シートの地上高)の設定にも表れている。しかし、スタイリング全体の印象は、これまでのマークII路線の中にあるといえよう。

NA 感覚のターボにより快適にセダンを楽しむ

  • トヨタ マークII iR-V インパネ|ニューモデル試乗
  • トヨタ マークII iR-V 運転席|ニューモデル試乗
↑iR系の木目調インパネはダークなワインレッドでブラックとコーディネート(左)座ってたっぷり“厚み”を感じるシートは、腰のサポートもいい(右)
新マークIIは、いわば“セダン好き”(走り好き)が世の中に存在することを信じてのモデルチェンジといえそうで、それを示すのが、新設された「iR」というシリーズであろう。
これは従来のツアラー系の継承でもあるが、ただ、乗り心地のしなやかさと走りの“キレ感”との両立という点では、全体にちょっと荒っぽい部分もあったツアラー時代よりもワンランク上になっている。

そのiR系の足とターボの組み合わせになるのがiR-V。今回のターボは、パワーがドカッとこないNAライクな設定になっており、いつでも安心して(?)アクセルを踏める。
この辺にも、全体的な走りのバランスにこだわった姿勢がうかがえ、このターボユニットのトルク感を楽しみつつ、快適なスポーツセダンとしての走りができる。

また、どうしてもマークIIをマニュアルシフトで走らせたいということになれば、このiR-Vを選ぶしかない。しかし、こうしたMT 仕様は、ターボよりも、むしろNAエンジンに設定してほしい、というのは少数派の意見なのだろうか!?
ちなみに、iR-VでのMTとATとの価格差は3万円、またノンターボ仕様iR-S(AT)とは41万円差。

これまでの“らしさ”ならiR系以外がオススメ

  • トヨタ マークII G-tb インパネ|ニューモデル試乗
  • トヨタ マークII G-tb リアシート|ニューモデル試乗
↑グランデ系の木目調は、かなり明るいベージュ色でまとめられている(左)膝回りの空間が拡大された後席は、足が組める。カーテンエアバッグは後席も装備(右)
新マークIIのグレード設定は、主に足の設定において、iR系とそうでない仕様(グランデ系)とに大きく分かれると考えておけばよい。

そして前述のように、iR系といっても乗り心地面での問題は特にないのだが、ただ、やっぱり“マークIIらしさ”(……って何だ!?)を求める人はいるということで、ノーマル仕様(グランデ系)が用意されている。 このノーマル仕様でも、走りにおけるヤワな感じなどはないのだが、一方でiR系がある以上、どうしても比較の対象になる。

この2 種の足では、ステアリング(手のひら)に伝わる接地感という点においてはiR系に分がある。一方でノーマル仕様は、ロールをうまく使って、しなやかに走れるセッティングになっている、という点ではなかなかのデキだ。

そのセッティングでバランスがいいのは2Lエンジンのグランデである。 また、iR系の場合、エンジンの音を、特に高回転域ではそれなりに“聞かせる”というセッティングになっている。したがって、あくまでも従来のマークII的な静粛性を重視するなら、iR系にはしないといい。

2.5L直噴エンジンは燃費もスムーズさも向上

  • トヨタ マークII 2.5L 直6DOHC ターボ|ニューモデル試乗
  • トヨタ マークII 2.5L 直6DOHC|ニューモデル試乗
↑過給に段つきのない滑らかなターボ、あくまでもNA感覚で、というのが狙い(左)直噴エンジンも進化し、全域でのスムーズさが大幅向上。これなら使える(右)
スポーツマークIIというべきシリーズがiRとして継承されている。 これは今日のマーケットでは、マークIIからの代替というよりも、もう少しお金を出してもいいですよ、というアルテッツァユーザーの上級移行にも対応できそう。

ビシッとタイトなiR系の走りは、その役目を十分に果たすはず。ハードとしては、筒内直噴エンジンとして、2.5L D-4の初登場がニュース。

公表燃費は、従来型2Lを上回るもので、スムーズさが大幅に向上している。また、通常の運転で多用する2000rpm付近でのゴロゴロ感が、きわめて少なくなったのは評価できる。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード グランデiR-V(5MT) グランデG-tb
駆動方式 2WD
トランスミッション 5MT 4AT
全長×全幅×全高(mm) 4735×1760×1460
ホイールベース(mm) 2780
車両重量(kg) 1520 1530
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直6DOHC ターボ
総排気量(cc) 2491
最高出力[ps/rpm] 147ps/6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 25.5kg-m/4000rpm 26.0kg-m/3800rpm
10・15モード燃費(km/L) 9.8 9.4
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/70
車両本体価格 333.0万円

家村浩明の責任採点

コンセプト 3点 取り回し 4点 加速性能 4点 ブレーキ性能 4点
フィニッシュ 5点 操作系の使い勝手 4点 乗り心地 5点 環境対策 4点
前席居住性 5点 ラゲージルーム 4点 操縦安定性 4点 燃費 4点
後席居住性 4点 パワー感 4点 高速安定性 5点 ステータス 4点
内装の質感 5点 トルク感 5点 しっかり感 5点 コストパフォーマンス 5点
得点合計 87/100
(Tester /家村浩明 Photo /桜井健雄、渡邉英昭)