Hondaの技術者が、「第65回自動車技術会賞」の「技術貢献賞」「浅原賞学術奨励賞」「論文賞」「技術開発賞」の各賞において計5件を受賞しましたのでお知らせします。
自動車技術会賞は、公益社団法人自動車技術会により、1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的に創設され、現在、「学術貢献賞」、「技術貢献賞」、「浅原賞学術奨励賞」、「浅原賞技術功労賞」、「論文賞」、「技術開発賞」の各賞において表彰されるものです。
今回受賞した技術、技術者および受賞理由※1は次の通りです。
なお、授賞式は、本日14時15分よりパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて行われます。

※1 公益社団法人自動車技術会発行「第65回自動車技術会賞 受賞者発表用パンフレット」より引用

●浅原賞学術奨励賞

・受賞テーマ   「Numerical Modeling Study of Diesel Exhaust Catalyst on Various Precious Metals」
・受賞者  山本 修身(やまもと おさみ) 株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター
・受賞理由
排気浄化触媒の開発では、触媒反応シミュレーションが活用されているが、反応モデルが代表的な反応式から構成されているため、触媒の構成材料と各素反応の関連付けが難しい。受賞者は触媒上の表面反応を吸着・分解・離脱などの詳細過程を表した科学反応モデルに加えて、貴金属担持量による触媒性能への影響を推定するため、貴金属担持量と反応サイト数の関係を表す貴金属モデルを構築した。このモデルを活用し、窒素酸化物(NOx)の浄化反応における各素反応の感度解析を行い、触媒材料の改良の方向性を見出したことは、新たな触媒開発や排気浄化技術の進歩へ大きく寄与するものであり、今後の発展が期待される。

●論文賞

・受賞テーマ   「移動境界法CFDを用いた逆止弁自励振動メカニズム解析」
・受賞者  渡部 尚(わたなべ たかし)  株式会社本田技術研究所  二輪R&Dセンター
若生 宏(わこう ひろし)  同上  同上
直井 康夫(なおい やすお)  同上  同上
中野 政身(なかの まさみ)  東北大学 流体科学研究所
・受賞理由
車両燃料ポンプから発生する騒音・振動の原因解明を実験的に行い、ポンプ逆止弁自励振動に起因することを特定した。その数値モデルとして移動境界法CFDと弁プラグ運動の連成解析手法を構築して流体−構造連成振動メカニズムを数値的に再現して、振動抑制に対して弁形状などの一連の設計要件を明らかにした。これらの成果は車両要素設計にしばしば現れる流体−構造連成現象の原因究明からメカニズム解析および改良設計に至る一連の設計開発プロセスにおいて有効な手法であり、高く評価される。

●技術開発賞

・受賞テーマ   「燃料電池車向けスマート水素ステーションに適用可能な差圧式高圧水電解システム技術の開発」
・受賞者  岡部 昌規(おかべ まさのり)  株式会社本田技術研究所  四輪R&Dセンター
中沢 孝治(なかざわ こうじ)  同上  同上
針生 栄次(はりゅう えいじ)  同上  同上
・受賞理由
燃料電池自動車の普及にあたっては、燃料である水素の供給ステーションの整備が大変重要である。しかしながら、機械式コンプレッサーを用いる従来型の水素ステーションでは、システムが大型で設置のための工事期間が長く、水素を昇圧するためのエネルギーロスが大きいなどの課題があった。そこで、水の電気分解だけで35MPaの高圧水素を発生できる差圧式高圧水電解技術を開発した。この技術により、システムを10フィートコンテナサイズまで小型化し、基礎工事を除く工事期間を約1日に短縮化しただけでなく、水素昇圧に必要なエネルギーロスを約1/4に低減した。これによって、燃料電池自動車の普及と水素供給を含めた総合的な効率の向上に大きく寄与したことは高く評価される。

・受賞テーマ   「電動サーボブレーキシステムの開発」
・受賞者  波多野 邦道(はたの くにみち)  株式会社本田技術研究所  四輪R&Dセンター
岡田 周一(おかだ しゅういち)  同上  同上
大久保 直人(おおくぼ なおと)  同上  同上
松下 悟史(まつした さとし)  同上  同上
西岡 崇(にしおか たかし)  同上  同上
・受賞理由
電動化車両の回生協調ブレーキに着目し、より多くの減速エネルギーを回収できる電動モーターを動力源とする、ブレーキバイワイヤ式の回生協調ブレーキを新規に開発した。
本システムはペダル操作部とブレーキ動作部が独立していることを特徴とし、ペダル操作部には反力シミュレーターを採用することにより、ドライバーに違和感を感じさせない自然なブレーキフィールを実現した。ブレーキ動作部には、ブラシレスモーターと減速ギア、ボールネジを採用して、踏み始めから停止間際までの減速エネルギーの回収を実現し、回生量の大幅な向上を可能としたことは高く評価される。