NA型 ユーノスロードスター は速くないけど楽しい車! 中谷明彦も思わず欲しいと唸る、その魅力は?【カーセンサー中谷塾】#3
2025/04/26

過去の名車にZ世代のモータージャーナリストが試乗!
「昔の車のことをもっと知りたい!」
そんな一言から始まった本企画は、駆け出しモータージャーナリストの瀬イオナが、師匠と仰ぐ中谷明彦さんから、車のことはもちろん、デビュー当時のエピソードなどを振り返りながら教えてもらおうという企画!
その名も「カーセンサー中谷塾」
懐かしい車たちの魅力を掘り下げ、その輝かしい歴史を後世に引き継がせてもらおう。
第3回となる今回は、思わず中谷氏も「欲しい!」と唸った、NA型 マツダ ユーノスロードスターだ。

自動車ジャーナリスト
瀬イオナ
車メディアの雑誌編集部員を経て、2024年にフリーランスとして独立。「走って書ける」自動車ジャーナリストを目指して修行しながら、若手ジャーナリストとして活動している。車業界に入ったきっかけは、某動画で中谷明彦師匠を見つけたこと。現在に至るまで「ドライビング」はもちろん「ジャーナリスト」の心得など業界におけるすべてを教わりながら日々鍛錬中である。趣味はドライブ、レーシングカート、サウナ。

レーサー/モータージャーナリスト
中谷明彦
武蔵工業大学工学部機械工学科卒(塑性工学専攻)。大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍中。自動車関連の開発、イベント運営、雑誌企画など様々な分野でのコンサルタントも行っている。高性能車の車両運動性能や電子制御特性の解析を得意としている。1989年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員として就任。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設しF1パイロット・佐藤琢磨らを輩出。
グリーンのボディカラーで懐かしさ倍増!



カーセンサー中谷塾3回目の今回は、多くの名車が誕生したことでビンテージイヤーと呼ばれている1989年に登場した「NA型ロードスター」を用意してみました!

お! 懐かしい。ユーノスロードスターじゃないか。僕の世代は今でもNA型には「ユーノス」って付けて言っちゃうね。 「ユーノス」は元々マツダが展開していた販売店の名前なんだけど、アメリカでは贈り物という意味がある「ミアータ」という名前で出しているんだよ。

確かによく見ると、マツダのエンブレムじゃなくて、ユーノスのエンブレムが付いていますね。

いや~それにしても、よくこのグリーン塗装のボディカラーを用意してくれたね! 改めて見てブリティッシュグリーンは正式名じゃないけどオシャレだし、今でも通用しそうだよ。グリーンのボディにタンカラーの内装。MGAやMGBといった英国系のクラシックで典型的なカラーだね。発売当時はよく街中で見かけたもんだよ。

ボディカラーで歓喜していただけるとは意外でした。グリーンって最近の車ではあまり見かけないし、中古を買うなら無難でかっこいい白や黒、目立てるようなイエローやレッドなどといったカラーに手を出してしまいそうになりますが、なぜグリーンに反応したのでしょうか?

イオナ君、理論を学ぶのもいいけど、その車の歴史的背景や室内外装カラーについても勉強すると奥深くて中古車の見方が面白くなるよ! 昔のモータースポーツ界には「ナショナルカラー」というのがあってね。ブリティッシュグリーン、イタリアンレッド、フレンチブルー、日本は白地に赤い丸で日の丸カラーとか。ドイツは白だったけどシルバーに変わってメルセデスがシルバーアローと呼ばれていたり。大衆が乗るような車にもそうしたイメージカラーが採用され、それを日本メーカーもオマージュしたりして、初代のロードスターにも採用されたんだ。

その話を聞いて、一気に高級車に見えてきました!

内装もタンのレザーで英国風。 車好きが憧れだった当時の輸入車は高いし台数も少ないし、なかなか入手できなかった。壊れたらどうしようとかで敬遠していたけど、初代ロードスターが登場して、こんなオシャレなカラーバリエーションも出したもんだから、もう日本に限らず世界中がこの組み合わせに飛びついた印象だったね。メイドインジャパンだったら雨漏りしないだろうとか、万一壊れたとしても高くつかないしね。


あとは、NAのデザインで外せないことといったら、やっぱりリトラクタブルヘッドライトが象徴的ですよね?

1990年代から今でもアメリカ市場が意識されていて、当時のアメリカの衝突安全基準で作るにはフロントの先端にクラッシャブルストラクシャー(衝撃吸収構造)があって、流線形のボディを作りたいけど通常の高さにヘッドライトを付けたら邪魔で、当時はLEDライトとかなかったし、じゃあ収納できるリトラにしようってなった経緯がある。


リトラにしたくてしたデザインじゃなくて、仕方なくそうなった、というのが意外です。(ボンネットを開けて)エンジンのある位置もちょっと高めに感じますね。

実はブリティッシュライトウエイトオープンスポーツでロータスエランという名車があってね、エランがリトラクタブルヘッドライトを採用していたこともあって、それをイメージした部分でもある。真似したと言われたくないから、いろいろな理由が語られていたんだよね。
エンジンルームはボディ全体を下げているからエンジン位置が高く見えるだけで、シャシーに対してエンジンはこれでも一番下げている高さなんだ。エンジン本体が最近の車みたいな樹脂カバーで隠されてないから見た目のカッコ良さもメカマニアにはたまらない。ツインカムのシリンダーヘッドカバーが主張してて、ボンネットを開けてみたくなるのは車好きのハートにグッとくるよ!

相当バズったんですね!

当時はロードスターだらけといってもいいくらい、よく見かけたよ。デビュー当初、カタログ1ページ目のキャッチコピーが「だれもが、しあわせになる」だったんだけど、そのとおり万人受けしているし、走りに対して「人馬一体」とマツダが言うようになった車でもあるんだよ。

ガワだけでなく、中身もしっかり作り込まれているのは、バズるの納得です。乗り込んでみましたが、やっぱりステアリングやシフトノブがナルディでオシャレですね! 最近、レトロブームだから、こうしたアイテムにも惹かれる方が多そう。もちろん私も好きです!!


これはマツダがやっている復刻パーツかな。他にもホイール、センターキャップ、タイヤ、ソフトトップ(生産終了)など用意しているね。ちなみにアルミホイールのデザインは、ミニクーパーなどに装着されていた「ミニライト」という英国のホイールブランドのデザインをオマージュしたものなんだ。
速くはないけどスポーティ! これは本当に欲しい!


せっかくだからオープンにして走ってみましょう! それにしてもシートに包み込まれる感じがたまりません!!

オープンにしてもオーディオが聴こえるようにヘッドレストにスピーカーが付いているんだ。シートも本革で登場してから30年以上経ってるし馴染んでるんだろうね。


発進もスムーズにできるし、癖がなくて万人受けなドライブフィーリングを感じました。

どんな世代にも愛される車作りで、ピーキーさを全く感じさせないよね。

マツダは、NAが発売した1989年から「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」を開催していて、私も2024年度に新型NR-Aでレースに出させていただき2位を獲得できたんです。そのときから運転しやすいなとは感じていたんですが、初代から続く乗り味だったとは!

万人から愛されたのもそうだけど、NAが出たときに国内外のメーカーは、NAが受けるならうちのコンパクトクーペも売れるんじゃないか、とかいろいろ試行錯誤したりして業界的にも盛り上がったんだよ。結局ロードスターに敵うモデルはなくて、長年愛される名車になったんだけど、それはイオナ君も感じている走りに癖がなくちゃんとしているからなんだよ。

信号待ちしても結構見てくる方がいますね。ちょっと恥ずかしいくらい注目度が高いですが、それだけ人気が衰えてないんですね。海外からの観光客の方も世代問わず見てくれるんですね。

注目されるのも悪くないね。ビンテージイヤーってちょうどバブルの真っ最中だったから、速かったりどんどんすごい車が出てきて、そんな中でポッとNAロードスターが出てきたから、当時は全然パワーないし速くないじゃん、サーキットでもラップタイムそんな速くないし、ターボ付ければいいのにとか、2リッターにすればいいのにっていう意見がすごい多かった。

確かにスポーティではありますが、「すごい速い車!」という感じではないですね。

当時の僕もそういうふうに思っていたけど、今改めて乗るとあの時代が行きすぎていただけなのかなと。もう性能だけを追い求めるんじゃなくて、走る喜びとかオープンカーの楽しさ、心地よさやちょうどよさみたいなものが、今の時代にはあっているのかもね。そりゃみんな再注目するはずだよ

一周回って良いってやつですね! レトロフューチャーとかで、Z世代には新鮮に映り、中谷さん世代はレトロで懐かしいと感じる。なんだか年齢という垣根を越えてとてもエモいです!

これ乗ったら本当にNA欲しくなっちゃったな。カーセンサーで探してみよう(笑)。

いやいや、お家の駐車場、もういっぱいなんじゃないですか(笑)?


【イオナの感想】マツダ ユーノスロードスター(NA型)
2025年現在、ロードスターはデビューして36年! 歴史ある車のひとつとして語り継がれている名車を今回初めてじっくりと触れてみて、ただ古くてカッコいいからというだけではない魅力ある深さを感じることができました。
推しポイントは、見た目でまず惹かれる「リトラクタブルライト」と言いたいところですが、今回はあえて「ボディカラー」を推したいです。ブリティッシュグリーンにタンカラーの内装という組み合わせは、ただのオシャレではありませんでした。中谷さんから教えてもらった「ナショナルカラー」や英国車の系譜といった背景を知ったことにより、単なる好みだと思っていたセレクトが、実は歴史や文化をまとう意味のあるものだったことを気づかされ、とても視野が広がりました。

試乗してみて感じたのは、デザインも走りもとにかくバランスが良いということ。見た目のレトロな可愛さだけでなく、包まれるようなシートの座り心地や、ノンアシストのステアリングやシフトの扱いやすさ、ペダルのフィーリング、全体の軽快さがとても好印象。癖がなくて、すんなり馴染めるところもこの車が愛され続ける理由なのだと感じます。
今回は、マツダR&Dセンターのある横浜市内をゆったりと流すようにドライブ。速さを競うわけでもなく、ただただオープンにして街の空気や喧騒をBGMに走る――そんな大人な時間がとても心地よく、これはこれで贅沢な車時間!
カーセンサー中谷塾に“長距離編”があるなら、今度は高速道路やワインディングを走って当時のままの乗り味をもっと味わってみたくなりました。