トランプ大統領 ▲アメリカのトランプ大統領は自動車の輸入に25%の追加関税をかけただけでなく、「日本はもっとアメリカ車を買え!」という旨の発言もしています。この主張に対しては賛否両論あるでしょうが、アメリカ車の中にも素晴らしいモデルがあることはたしか。トランプさんのことははさておき、「もっともっと売れてしかるべきアメリカ車」について考えてみることにしましょう!

「アメ車=デカいだけの代物」では決してない

「タリフマン(日本語に訳すなら「関税男」か?)」を自称するアメリカのトランプ大統領は日本時間2025年4月3日午後1時すぎ、米国へ輸入される自動車に25%の追加関税を課す措置を発動した。

トランプ大統領は「アメリカ人は毎年何百万台という日本車を買っているのに、日本人はアメリカの車をほとんど買わない!」と非難しているが、それに対して「わざわざデカいだけのアメ車を買うやつなんて日本にはいないよ!」という日本人側からの反論もある。

たしかにアメリカ車は一般的にボディサイズが大きいため、日本の道路では使いづらい場合がある。だが「アメリカ車=デカいだけ」というのは少し違うように思う。トランプ大統領の肩を持つわけではないが、「日本でもっと売れてしかるべき素晴らしいアメリカ車」もあるはずなのだ。

この記事では、そんな「もっと売れてしかるべきアメリカ車」5車種を、輸入中古車評論家を自称する筆者の独断と偏見でもってピックアップする。
 

 

もっと売れるべきアメ車①|ジープ ラングラー(現行型・JL型)
新車価格:799万~889万円/中古車価格:370万~1700万円

「もっと売れるべき」というか、すでに十分売れている人気車種ではあるが、販売台数的なポテンシャルはもっとあるはずの1台がこちら、ジープ ラングラーだ。
 

ジープ ラングラー▲こちらが現行型ジープ ラングラー アンリミテッド

ご承知のとおりジープ ラングラーは、米国陸軍が第二次世界大戦中に軍用小型車として使用した「ジープ」の直系子孫。2018年に登場した現行型は、ジープ ラングラーとしては4代目にあたる。

ボディサイズは全長4870mm×全幅1895mm×全高1845mmで、パワーユニットは3.6L V6または2L直4ターボが基本。デザインは従来型のイメージを踏襲――というか、第二次世界大戦の頃からそう大きくは変わっていないようにも見えるが、この世代から中身は大幅に刷新された。

現行型は悪路走破性能がより磨かれたのは当然として、日常的な性能も劇的に向上。具体的には舗装路における乗り心地がかなりよくなっており、鬼門だった最小回転半径も従来型の7.1mから6.2mに改善。もちろんまだまだ「小回りが利く車」とは言い難いが、日本の狭い道でも普通に使えるぐらいの小回り性能は獲得されている。

そして前述のとおり悪路性能は「ジープ」だけあって抜群であり、都市部で普通のSUVとして使う場合でも、そのシンプルゆえに美しい造形と「雰囲気」は、多くの日本人にとっても普通にグッとくるものであるはず。
 

ジープ ラングラー▲先代まではインテリアもシンプル系というかやや無骨なニュアンスだったが、現行型はラグジュアリーSUVにも若干近い世界観の内装に刷新された

中古車価格は上に記したとおり総額370万~1700万円といったところだが、よほどのことがない限り1000万円以上もの大金を拠出する必要はない。総額450万円前後にて、走行4万km台あたりのアンリミテッド スポーツ(最高出力272psの2L直4ターボ搭載グレード)が狙えるだろう。流通量も豊富なので、ぜひ色にこだわって探したいところだ。
 

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もっと売れるべきアメ車②|シボレー コルベット(現行型・C8)
新車価格:1420万~1845万円/中古車価格:1000万~2600万円

もしもシボレー コルベットというスポーツカーのことを「古くさいV8OHVエンジンを積む、直線が速いだけの車」だと思っているとしたら、認識が古いと言うほかない。
 

シボレー コルベット▲C8こと現行型(8代目)シボレー コルベット

2020年に上陸した最新世代のシボレー コルベットは、通常グレードのエンジンの方式こそ依然OHVではあるものの、高回転域に向かって快音とともに鋭く吹け上がっていくきわめてスポーティなユニットを、フロントではなくミッドに搭載。そして乗り心地とコーナリング性能も非常に優秀なスーパースポーツに変貌しているのだ。

ちなみに、2023年に追加されたハイパフォーマンスグレード「Z06」は、1989年に登場したZR1以来となるDOHCユニットを搭載している。

「車両価格が高い」「ボディサイズがデカい(全長4630mm×全幅1940mm×全高1225mm)」という問題はあるものの、高いのとデカいのはフェラーリやランボルギーニであっても同じこと。

そして今や東京あたりではフェラーリに乗っていても「ありがち」「さっきも見た」のひと言で終わってしまう可能性もあるが、現行型シボレー コルベットであれば、日本では比較的希少ゆえ、間違いなく異彩を放つことができるだろう。
 

シボレー コルベット▲ジェット戦闘機を思わせるデザインのコックピット。現行型ではコルベット史上初の「右ハンドル」が設定されている

トランプ大統領の意見にもとづき(?)新車を買う場合は最安でも車両価格だけで1420万円になってしまうが、中古車であれば、総額1100万~1200万円付近の予算で走行数千kmレベルの2LT(北米仕様における中間グレード)を検討可能。

カーボンパーツやコンペティションスポーツバケットシート、エンジンアピアランスパッケージ、カラードブレーキキャリパーなどを備えた3LTを狙いたい場合は、約100万円高い総額1200万~1300万円が目安となる。
 

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もっと売れるべきアメ車③|キャデラック エスカレード(現行型・5代目)
新車価格:1640万~1800万円/中古車価格:970万~1600万円

トランプ大統領ならずとも「もっと買われるべき!」と感じるのがこちら、キャデラックのフラッグシップSUVである現行型キャデラック エスカレードだ。
 

キャデラック エスカレード▲全長5.3m以上となるフルサイズSUV、現行型キャデラック エスカレード

2020年11月に上陸した現行型エスカレードは全長5382mm×全幅2060mm×全高1948mmという、まさにアメリカンなサイズの3列・7人乗りSUV。日本では「デカい」とされているトヨタ アルファードのスリーサイズが全長4995mm×全幅1850mm×全高1935mmでしかないことを書き添えれば、エスカレードのサイズ感をイメージしていただけるかと思う。

パワーユニットは最高出力426psの6.2L V8ガソリンエンジンで、トランスミッションには10速AT。駆動システムにはセレクタブル4WDが採用されている。グレードは、ラグジュアリーな意匠の「プラチナム」と、精悍なイメージの「スポーツ」の2種類でまずはスタートし、2024年1月に3列・8人乗りの「プレミアム」を追加した。

巨大なガタイと迫力がありすぎるフロントマスクを備えているゆえ、現行型キャデラック エスカレードを運転しているといわゆるオラオラ運転をしたくなってしまうのでは? という懸念もあるかもしれないが、実際はまったく心配いらない。

なぜならば、周囲を走る車たちとは体格と存在感があまりにも異なるため、エスカレードを運転していると、トラック以外の車はすべて「守ってあげるべき存在」に見えてくるからだ。園庭で遊んでいる保育園児10名の中に、大人が1人いるようなものである。

そんなとき、園児に対して「オラオラーッ!」などとやる大人は(たぶん)1人もいない。ニコニコしながら、園児たちがケガをしないよう見守ったり、手助けをする大人がほとんどだろう。あまりにも巨大であまりにもラグジュアリーなエスカレードに乗っていると、ドライバーのマインドは自然とそういう方向へ傾いていくのだ。

これこそがアメリカンスピリット――かどうかは知らないが、巨大な国土を持つ超大国のメンタリティーのようなものを、我々は現行型キャデラック エスカレードを通じて体感できるのである。ならば、買うしかあるまい。
 

キャデラック エスカレード▲明るいイメージだが重厚でもあるエスカレードのインテリア。縫製は職人による手作業で行われている

直近の中古車は総額970万~1600万円ということで、もちろん安い車ではない。だが新車と比べればお手頃ではあり、いわゆる富裕層にとっては屁でもない金額であるはず。

国産のLサイズミニバンも悪くないが、どうせならLサイズを超えて3Lサイズぐらいまで突っ走り、超大国気分を体感してほしい。狭い道は走りづらいが、そういった場所へ行く際は別の車で行けばいい。エスカレードとは、そういう生活ができる人のための車だ。
 

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もっと売れるべきアメ車④|ジープ レネゲード(現行型・初代)
新車価格:455万~640万円/中古車価格:100万~540万円

ここまでに挙げたジープ ラングラー アンリミテッドとシボレー コルベット、そしてキャデラック エスカレードはいずれも「日本でもっと売れてしかるべきアメリカ車」だと確信するが、サイズと価格の面で現実的ではないと感じる人も多いだろう。

ならば「ジープ レネゲード」でどうだろうか?
 

ジープ レネゲード▲ジープ初の小型SUVであるレネゲード。写真は2019年初頭に行われたマイナーチェンジ後の後期型

レネゲードは、2015年に上陸したジープブランド初のコンパクトSUV。全長4255mm×全幅1805mm×全高1695mmという日本の道でも扱いやすいボディサイズで、ジープ一族の伝統を感じさせながらポップでもある全体のデザインは、多くの日本人にも刺さるはずだ。

カタログモデルはガソリンエンジンを積むリミテッド(FF/1.4Lターボ)とトレイルホーク(4WD/2.4L自然吸気)の2種類でスタートしたが、2019年のマイナーチェンジ時にパワーユニットを1.3Lターボに一本化し、ベーシックグレードである「ロンジチュード」を追加。そして2020年10月にはプラグインハイブリッドの「リミテッド4xe」と「トレイルホーク4xe」を追加している。

ジープ レネゲードという車の魅力は、内外装デザインがきわめて素敵であることに加え、「運転しやすい」というのがある。1805mmという全幅は日本ではやや広いといえるのだが、全長はきわめて短く、そしてボディ形状がスクエアであるとともに着座位置も高めであるため、とにかく車両感覚を把握しやすいのだ。「アメ車はデカすぎるから日本では乗りづらい」と言っている人には、こんなアメ車もあるということをぜひ知ってほしい。
 

ジープ レネゲード▲後期型ジープ レネゲードのインテリアはおおむねこのような世界観。上質感は十分だ

そんなジープ レネゲードは総額100万円程度から探すことができるが、今から買うのであれば、2019年2~4月に行われたマイナーチェンジ後の後期型がオススメとなる。その場合のグレード別注目相場はおおむね下記のとおり。プラグインハイブリッド車である4xe系を除けば、ジープ レネゲードは「お手頃価格なアメリカ車」でもあるのだ。

●ロンジチュード:総額220万~280万円
●リミテッド:総額240万~300万円
●トレイルホーク:総額280万~320万円
●リミテッド4xe:総額330万~430万円
●トレイルホーク4xe:総額330万~490万円

 

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もっと売れるべきアメ車⑤|フォード ブロンコ スポーツ(現行型)
新車価格:正規輸入なし/中古車価格:610万~630万円

2016年に日本市場から撤退してしまったフォードだが、当然ながらアメリカ本国では進化を続けながら様々なモデルをラインナップしている。その中でも特に「これは日本でも売れるでしょ!」と思うのが、現行型のフォード ブロンコ スポーツだ。
 

フォード ブロンコ スポーツ▲日本への正規輸入は行われていないフォード ブロンコ スポーツ

フォード ブロンコは1960年代から販売が続いている本格SUVで、現在は2021年に登場した6代目のブロンコがアメリカではしっかり売れている。そして「ブロンコ スポーツ」は、6代目ブロンコとほぼ同じデザインだが、ラダーフレーム構造ではなくモノコック構造を採用した都市型コンパクトSUVだ。

5ドア版のボディサイズは全長4390mm×全幅1940mm×全高1780mmで、車幅はけっこう広いのだが、レネゲードの場合と同様に「全長は短く、アイポイントは高い」ということで、全幅の数値から想像するよりは圧倒的に運転しやすいといえる。そして最高出力181psの1.5L直3エコブーストターボまたは同245psの2L直4エコブーストターボの力感も十分であり、それより何より「圧倒的におしゃれ!」という点において注目したくなるのがこの車だといえる。
 

フォード ブロンコ スポーツ▲ブロンコスポーツの運転席まわりはこのようなデザイン。トランスミッションは8速ATで、24直4ターボ搭載グレードはパドル付きとなる

前述のとおりフォードが日本から撤退してしまったため、ブロンコ スポーツの正規輸入新車や認定中古車を買うことはできない。しかし、専門店が並行輸入した物件を総額620万円前後で見つけることは普通に可能。

皆さまにおかれてはそういった物件に注目してほしいのと同時に、「もっとアメリカ車を買え!」と叫ぶトランプさんに対しては、一休さんのように「それではフォードの拠点を日本に戻してください。もっと多くのブロンコ スポーツを買ってご覧にいれます」と申し上げたい。
 

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文/伊達軍曹 写真/ステランティス、GM、フォード
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。