ケンドリック・ラマーの愛車 ビュイック GNXの中古車流通“0台”に絶望した人に贈る「このイケてる車、グラミー受賞ラッパー愛車モデルの代わりにどうですか?」5選
カテゴリー: 特選車
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2025/04/24

ケンドリックみたいにイケてる車で街を流したい……がしかし!
2025年のグラミー賞で5冠を達成したアメリカのラッパー、ケンドリック・ラマー。その愛車である「ビュイック リーガルGNX」が、2024年11月にリリースされたアルバム『GNX』のタイトルおよびジャケットで起用され、さらには2月10日に開催された第59回スーパーボウルのハーフタイムショーのパフォーマンスにも実車が登場したことで、大いに話題となった。
1987年に登場したビュイック リーガルGNXは、伝説的なアメリカンマッスルカー。2代目リーガルの上級スポーツモデル「グランドナショナル」をベースに、マクラーレン・エンジニアリングがセラミックタービン採用のギャレット製ターボチャージャー等々を3.8L V6 OHVエンジンに装着。その結果、最高出力は280psをマークし、0-1/4マイル加速は当時のフェラーリやポルシェ 911をも上回る12.7秒を記録した。

だが約500台のみが限定生産された超希少車であるため、今や入手はきわめて困難。カーセンサーnetの掲載台数も0台であり、仮にあったとしても、その価格は「セレブ向け」といえる水準になるはずだ。試しに下記のカーセンサーnetのリンクをチェックしてみてほしい(2025年4月23日時点で0台となっている)。
だが「どうしてもケンドリックみたいなイケてる車で街を流したい!」と願う人はいるのかもしれない。この記事ではそんな人々のため、中古車として普通に買える「ビュイック リーガルGNXの代わり」になり得る1台を考えてみたい。
▼検索条件
ビュイック リーガルGNX × 全国GNXの代わり①|シボレー カマロ Z28(2代目)
→想定予算:総額350万~1300万円
街でケンドリックを気取るのであれば、彼と同じように「アメリカンマッスルカー」を選ぶのが定石だろう。マッスルカーというものについての厳密で公的な定義はないが、一般的には「大排気量V8エンジンを搭載するFRの2ドアクーペ。主には1960年代から70年代にかけてアメリカで製造された」というのが統一見解となるはずだ。
そういった見解に合致するアメリカンマッスルカーは2代目シボレー カマロだけでなく、フォード サンダーバードやシェルビー GT350など様々なモデルが存在するが、比較的入手しやすいのが2代目カマロ。怒涛の5.7L V8 OHVエンジンをドロドロいわせながら街を流せば、ある程度のケンドリック気分は味わえるだろう。

▼検索条件
シボレー カマロ(2代目) × Z28 × 全国GNXの代わり②|ダッジ チャレンジャーSXTまたはSXTプラス(4代目)
→想定予算:総額320万~600万円
1970年代の2代目シボレーカマロは相当ステキだが、ケンドリックが乗っているのはもう少し最近の年代のマッスルカーであり、そもそもビュイック リーガルGNXの搭載エンジンはV8ではなく V6だ。であるならば我々も、もっと新しい年代のV6マッスルカーでもってケンドリックを気取るべきではないか?
そう考えた場合のベストは、4代目のダッジ チャレンジャーであろう。

2008年に登場した4代目ダッジ チャレンジャーは、当然ながらV8 HEMIエンジン搭載グレードが中心にはなるが、SXTと名が付くグレードが搭載するのは最高出力309psの3.6L V6DOHC。OHV方式ではないが、排気量的にはケンドリックの愛車に近く、なおかつ1960年代や70年代のマッスルカーと違ってメンテナンスも比較的容易。これを選べばある意味イージーに、ケンドリック・ラマーの境地にたどり着ける可能性はある。
▼検索条件
ダッジ チャレンジャー(4代目) × SXT × 全国▼検索条件
ダッジ チャレンジャー(4代目) × SXTプラス × 全国GNXの代わり③|スバル フォレスター STiバージョン(2代目)
→想定予算:総額160万~220万円
2代目シボレー カマロも3代目ダッジ チャレンジャーも、大いにステキな選択肢であるとは思う。だがそれらに関する原稿を書いているとき、筆者の脳内にいるケンドリック・ラマーが語りかけてきた。
「ヘイ・ユー。君はいつまでそうやってヒョーソーテキに物事を見るつもりだい? もっとホンシツを見ないと、オレ様の境地には到達できないぜ」
……ヒョーソーテキというのは「表層的」のことだろう。そしてホンシツは、おそらくは「本質」だ。
確かに筆者は、物事の表面だけを見ていたのかもしれない。ケンドリック・ラマーが愛したビュイック リーガルGNXという車の魅力の本質は「マッスルカーか否か?」などといった表層的なものではない。「見た目は地味なのに、中身は実はすげえ!」という点や、「小排気量なのにすげえ!」「とにかくレアである!」などといった部分こそを、ケンドリックは愛したはずなのだ。我々は、そこを見なければならない。
そう考えたときにビュイック リーガルGNXの代わりになり得る車種のひとつは、アメリカンマッスルカーではなくジャパニーズSUV、2代目スバル フォレスターのSTiバージョンだ。

2002年から2007年にかけて販売された2代目スバル フォレスターは、非常に実直な出来の素晴らしいSUVではあるが、「地味か派手か?」と問われれば、比較的地味な部類に入る。ある意味2代目ビュイック リーガルと似たような存在だ。
だが2004年のマイナーチェンジ時に追加されたSTiバージョンは、ノーマル比で40mmローダウンさせたボディにSTiの専用ボディパーツをまとい、最高出力265psの2.5L水平対向4気筒ターボエンジンと6MTを組み合わせた1台。ホイールからちらりと覗くゴールドのブレンボ製ブレーキキャリパーもステキな、ビュイック リーガルGNXのコンセプトにどことなく近い「羊の皮を被った狼」的SUVである。
これに乗っていれば、仮にどこかの街でケンドリック・ラマーと出くわした場合でも「ユー、オレの車とフォルムはぜんぜん違うけど、物事の趣味は近いかもしれないな!」と言ってくれるのではないだろうか。

▼検索条件
スバル フォレスター(2代目) × STiバージョン × 全国GNXの代わり④|日産 スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY
→想定予算:総額800万~1500万円
「羊の皮を被った狼」の典型であるビュイック リーガルGNXを愛したケンドリック・ラマーの本質を、リスペクトしたうえで模倣するのであれば、「ジャパニーズ羊の皮を被った狼」の極北であるコレを選んでみるのも悪くない。
知らない人からは「ごく普通のセダン」にしか見えないかもしれない、R33型日産 スカイラインGT-Rの4ドアセダン版だ。

日産 スカイラインGT-Rセダン オーテックバージョン 40th ANNIVERSARYは、スカイライン誕生40周年を記念して1998年に発売された400台限定モデル。
「大人のための最高性能スポーツセダン」をコンセプトに、R33型スカイラインGT-Rに単に4ドアボディを流用しただけでなく、2ドアGT-Rのブリスターフェンダーを4ドアでも再現するため、リアのドアとリアフェンダーは新たに製作した専用品だった。そしてリアシートは専用のバケットタイプで、乗車定員は5名ではなく4名となる。
リアスポイラーはあえて装着せず、フロントスポイラーも小型であるため、一見する限りでは「ごく普通のスカイラインセダン」にも見える。だがよく見れば、それはビュイック リーガルGNXと同じくタダものではない造形であり、心臓部は2ドアクーペのGT-Rとまったく同じ、最高出力280psの2.5直6DOHCツインターボ「RB26DETT」だ。

新車当時の販売価格は498万5000円だったが、現在の中古車価格は800万円以上。しかしこれに乗っていれば、ケンドリック・ラマーも「ヒューッ! ユーの車、イカしてるな。オレのGNXと交換しないか?」――とは言わないだろうが、まぁそれに類する冗談のひとつや二つは、言ってくれるかもしれない。
▼検索条件
日産 スカイラインGT-Rセダン × オーテックバージョン 40th ANNIVERSARY × 全国GNXの代わり⑤|三菱 エアトレック ターボR(初代)
→想定予算:総額50万~110万円
「GT-Rのエンジンを積んだ4ドアセダン」がアリならば、「ランエボのエンジンを積んだ普通のSUV」もアリなはず。そう考えるのであれば、全長4.4m級のコンパクトなクロスオーバーSUVに、三菱 ランサー エボリューションの4G63T型エンジンをぶち込んだ「三菱 エアトレック ターボR」に注目したい。

2001年にデビューした三菱 エアトレックは「スマートオールラウンダー」をキャッチコピーとする汎用的なクロスオーバーSUVだったが、何を思ったのか、ランサーエボリューションVIIのGT-Aと同じエンジン&トランスミッションを搭載した「ターボR」を追加。ごく一部でカルト的な人気を誇った。
通常グレードの三菱 エアトレックは今やほぼ絶滅してしまったが、ターボRだけはしぶとく生き残っている。とはいえ流通量は全国で3台ほどと超希少だが、希少なのはビュイック リーガルGNXと同じであり、GNXの0台と比べれば、3台というのは「多い!」と強弁することもできる。

ビジュアル的にやや地味であるため、街で出くわしたケンドリック・ラマーが「ボンネットの下にはランエボのエンジンが収まっている」ということに気づいてくれるかどうかはわからない。だがオーナー自身は常に、自分だけが知っている密かな喜びをかみしめることができるだろう。
▼検索条件
三菱 エアトレック(初代) × ターボR × 全国
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。