フォルクスワーゲン ザ・ビートル ▲とにかくポップで愛らしい「ビートル」と名が付く車ですが、そもそもどんな種類があって、中古車として買うならどの世代をいくらぐらいで買うのが得策なのか、考えてみました!

まずは第二次世界大戦前から続く長い歴史をざっくりと

「ビートル」との愛称で親しまれた往年の名車の現代版として誕生した、フォルクスワーゲン ニュービートルとザ・ビートル。

そのポップで可愛らしいビジュアルで人気の両モデルですが、やたらと車に詳しいマニアの方はさておき、一般的には「その2つはどこがどう違っていて、買うとしたらどれを選ぶべきなのか?」というのは、もしかしたら今ひとつわかりにくいかもしれません。

ということで本稿では「ビートルのラインナップがよくわからん!」とお嘆きの人のため、ビートルファミリーの系図をわかりやすく整理するとともに、予算別・ニーズ別のオススメモデルをズバリ解説したいと思います。

まずはビートル一族の超基本的なヒストリーをご説明いたします。

第二次世界大戦前に企画され、終戦後から本格的に生産されたのが「元祖ビートル」ことフォルクスワーゲン タイプ1という世界的名車。その復刻版というか現代版として1999年に誕生したのが「フォルクスワーゲン ニュービートル」です。

ニュービートルは、同時期のフォルクスワーゲン ゴルフ(ゴルフ4)の車台をベースに、元祖ビートルによく似た感じのボディを載せた車です。また、オープンモデルである「ニュービートル カブリオレ」というやつもラインナップされていました。
 

フォルクスワーゲン ニュービートル▲こちらが1999年登場の「ニュービートル」
フォルクスワーゲン ニュービートル カブリオレ▲その屋根を電動ソフトトップに変更した「ニュービートル カブリオレ」
 

そのニュービートルは2010年に生産終了となったのですが、世界中で大ヒットした車でしたので、「あの感動をもう一度!」みたいな感じで「次のニュービートル」も企画されることになりました。

それが、2012年に発売された「フォルクスワーゲン ザ・ビートル」です。こちらも同時期のフォルクスワーゲン ゴルフ(ゴルフ6)の車台をベースとしていて、ニュービートルと比べると若干硬派なデザインのビートルっぽいボディを載せています。そしてこちらザ・ビートルにも、「ザ・ビートル カブリオレ」というオープンモデルが存在しています。
 

フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲こちらが2012年に「二度目のリバイバル」として誕生したザ・ビートル
フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ▲で、こちらはザ・ビートル カブリオレ
 

両者のキャラの違いを箇条書きでお伝えするとしたら、おおむね下記のとおりとなるでしょうか。

【ニュービートル】
・とにかく可愛い感じのデザイン
・走りはさほど本格的ではない(悪くはないが)
・今となっては年式的に少々古い
・が、その分だけ中古車相場は安い

【ザ・ビートル】
・可愛いが、可愛いだけではないちょい硬派なデザイン
・走りもけっこう本格的
・新しめな年式の中古車を選ぶことができる
・が、その分だけ中古車相場はちょい高い

以上が、かなりざっくりですが「ビートルファミリーの超基本」です。これを踏まえながら次章以降、予算別・ニーズ別のオススメモデルを探ってみましょう。
 

ニーズ1:ぶっちゃけ、総額50万円以内で買いたい!

総額50万円以下のお手頃予算で買いたい場合は「ニュービートルの一択」となります。より新しいザ・ビートルは、いちばん安い部類でも総額70万円ぐらいですので、総額50万円級の予算ではちょっと無理なのです。

手頃なプライスのニュービートルを探す場合、「最安」は総額20万円ぐらいですが、そのあたりの物件は走行距離がけっこう延びてしまっている個体も多いため、できれば「総額40万~50万円ぐらい」をひとつの目安としたいところ。

総額40万~50万円ぐらいで探せるニュービートルのグレードは、だいたい下記のとおりとなります。

ベースグレード(※2.0と表記されている場合が多い)|2Lエンジン+4速ATの、最も基本的なグレード
プラス|上記に電動スライディングルーフや革シート、シートヒーターなどがプラスされたグレード
EZ|「イージィ」と読むのですが、2004年9月に追加された、他のやつよりちょっと小さな1.6Lエンジンを搭載した簡素なグレード
LZ|2005年10月に追加されたトップグレード。エンジンは2Lで、革シートなどが採用されています
 

フォルクスワーゲン ニュービートル▲総額50万円以下で狙える前期型ニュービートルのビジュアルはこんな感じ
フォルクスワーゲン ニュービートル▲「2.0」と表記されることの多いベースグレードの車内。シートはファブリック(布)です
フォルクスワーゲン ニュービートル▲革シートや電動スライディングルーフなどが付いている「プラス」の車内はこんな感じ
フォルクスワーゲン ニュービートル▲こちらは、2Lではなく1.6Lのエンジンを搭載した「EZ」というベーシックなグレード
 

で、「上記のうち、買うならどのグレードがオススメなのか?」という問いに対しては、「オススメグレードは特にありません!」というのが答えになります。

新車や、新車に近い状態の中古車であれば「グレード選択」というのはかなり重要です。しかし総額50万円以下のニュービートルというのはもはや15年落ちぐらいの車ですので、グレードうんぬんはもはやどうでもよくて、それ以上に「コンディションの違い」が重要となります。つまり「ボロボロのLZ(トップグレード)より、シャンとしてるEZ(エントリーグレード)を買った方がシアワセになれる可能性が高い」ということです。

総額50万円以下でニュービートルを購入する場合は、

グレードにはあまりこだわらず、
内外装がなるべく荒れていない個体で、
なおかつ正規ディーラーで定期点検を受けていたモノ

を探すようにしてください。
 

▼検索条件

フォルクスワーゲン ニュービートル×総額50万円以下

ニーズ2:ま、だいたい100万円以下ぐらいの予算感で……

総額100万円以下、具体的には「総額80万~90万円ぐらい」の予算感で何らかのビートルが欲しいという場合、進むべき道は二手に分かれています。

ひとつは、「ザ・ビートルの初期年式を狙う」という道。

もうひとつは、「ニュービートルの後期型を狙う」という道です。

これはどちらが良いとか悪いとかの問題ではなく「好みの問題」ですので、カタチや雰囲気が自分にしっくりくる方を選べば、それでいいと思います。

ただし選ぶ際の参考として、「雰囲気よりも“走り”を重視したい人はザ・ビートルを選んだ方がいい」ということだけは、いちおう知っておいてください。

この予算帯で選択できるグレードはおおむね下記のとおりです。

【ニュービートル】
●総額50万円級のところで説明したのと同じ「ベースグレード」「プラス」「EZ」「LZ」。ただしこの価格帯では2008年3月以降の、ATが4速から6速に進化した世代が狙える場合も。
ターボ|同世代のゴルフGTIと同じ強力な1.8Lターボエンジンを搭載したグレード

【ザ・ビートル】
デザイン|1.2L直噴ターボエンジン搭載の最もベーシックなグレード
デザイン・レザーパッケージ|上記に、前席シートヒーター付きレザーシートやレザー3本スポークステアリングホイールなどをプラスしたグレード

オススメは、ニュービートルであれば「プラス」か「LZ」、ザ・ビートルであれば「デザイン」でしょうか。ただしいずれにせよ、グレードよりもコンディションを重視しながら探してください。
 

フォルクスワーゲン ニュービートル▲総額100万円以下ぐらいの予算感になると、ニュービートルの場合、最高出力150psの1.8Lターボエンジンを搭載した「ターボ」も選択肢のひとつに
フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲こちらはザ・ビートルの前期型

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フォルクスワーゲン ニュービートル×総額100万円以下

▼検索条件

フォルクスワーゲン ザ・ビートル×総額100万円以下

ニーズ3:総額150万円以内ぐらいで「ちょっといいやつ」が欲しい

総額150万円以下の予算感、具体的には「総額140万円前後ぐらい」で何らかのビートルを買う場合は、基本的には「ザ・ビートルの一択」でしょう。

市場には総額140万円ぐらいのニュービートルも存在していて、それはそれでなかなかステキです。しかしニュービートルというのは、もはや「なるべく安価な予算で手に入れて、自分なりのカスタムをしながらカジュアルに楽しむ車」であるようような気がします。

まぁこのあたりの感じ方は人それぞれなので余計なお世話かもしれませんが、「総額150万円弱」というそれなりの予算を投下するからには、新しくてビッとしているザ・ビートルを選んだ方が、たぶん購入後の満足度は高いはずです。

この予算帯で選択可能なザ・ビートルのグレードはおおむね下記のとおりとなります。

●総額100万円以下のパートで説明したのと同じ「デザイン」「デザイン・レザーパッケージ
ターボ|2013年10月に追加された2Lのターボエンジンを搭載するグレード

飛ばし屋さんには「ターボ」が向いているかもしれませんが、基本的には「デザイン」または「デザイン・レザーパッケージ」でも十分以上です。
 

フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲150万円近くの予算を投じるのであれば、オススメはニュービートルではなく、より新しいザ・ビートルということになるでしょう
フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲前期型ザ・ビートルのベースグレードである「デザイン」の車内。シートはファブリックです
フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲こちらは前期型ザ・ビートルの「デザイン・レザーパッケージ」
 

▼検索条件

フォルクスワーゲン ザ・ビートル×総額150万円以下

ニーズ4:なるべく新しめの、でもコスパ良好なやつが欲しい

もしも金に糸目はつけないのであれば、選ぶべきはザ・ビートルの後期型(2016年9月以降の世代)で、より具体的には2016年11月に追加された「R-Line」というグレードでしょう。

このR-Lineというのは、ベーシックな1.2L直噴ターボよりちょっと余裕がある1.4Lの直噴ターボエンジンを搭載していて、それでいて2Lのターボエンジンほど仰々しくないという好バランスなグレードです。外観も、ボディ全体の下部に黒いパーツがあしらわれていてちょっとスポーティ。悪くない感じです。

相場は総額220万円からと、ちょっとだけお高いのですが、294万5000円という新車時価格から考えれば「まあまあお買い得」と考えることはできます。
 

フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲2016年11月に追加された、1.4Lのターボエンジンを搭載する「R-Line」。車体の下部がぐるっと黒いパーツで覆われているのもR-Lineの特徴のひとつ
 

しかし「ザ・ビートルに220万円は高いよ!」とお感じになる場合は、わざわざ1.4LターボのR-Lineを選ぶ必要はないでしょう。その場合は、1.2Lターボ搭載グレード(デザイン/デザイン・レザーパッケージ/ベース/その他の限定車)の後期型(2016年9月以降)こそがベストチョイスです。

なにせ1.2Lターボの後期型であれば、走行距離がきわめて短い物件であっても総額150万円ぐらいから探すことができます。筆者も、もしも個人的にザ・ビートルを買うとすれば後期1.2Lターボを選ぶでしょう。走りも、1.4Lターボの方が余裕があるのは確かなのですが、実は1.2Lターボでもぜんぜん十分です。
 

フォルクスワーゲン ザ・ビートル▲こちらが後期型ザ・ビートル(2016年9月~)の1.2Lターボ搭載グレード。総額150万円ちょいぐらいの予算を用意できるのであれば、たぶんこれこそが最強コスパ

▼検索条件

フォルクスワーゲン ザ・ビートル×R-Lineグレード×支払総額表記あり

▼検索条件

フォルクスワーゲン ザ・ビートル×1.2Lターボ搭載グレード×支払総額表記あり

ニーズ5:ビートルはビートルでも「オープンのビートル」が欲しい

オープンモデルが欲しい場合は、当然ながらニュービートル カブリオレとザ・ビートル カブリオレのどちらかになるのですが、これはもうズバリ「予算次第」で決めるほかありません。

「総額200万円以上」の予算を投入できるのであればザ・ビートル カブリオレがオススメとなりますし、そうでないのであれば、具体的には「予算は総額100万円以下!」ぐらいでイメージしているのであれば、ニュービートル カブリオレを選ぶしか手はありません。

しかし想定している予算の大小に関わらず、もしかしたらオープンモデルに関してはザ・ビートルよりニュービートルの方が「らしい」のかもしれません。

ザ・ビートルというのは肩に力が入った感じのマジメな設計で、ニュービートルの方はそれとは真逆の、ちょっととぼけた部分もなくはない設計です。しかしオープンカーという「ユルさを楽しむ乗り物」においては、肩に力が入ったザ・ビートルよりも、ちょっと抜けたところもあるニュービートルの方が、オープンエアの世界観をのんびり楽しめるような気がしてなりません。

ニュービートル カブリオレの相場は総額60万~200万円といったところですが、ボリュームゾーンは総額80万円前後。決して超格安ではありませんが、オープンエアという高尚な趣味を楽しむうえでは「まあまあ手頃な予算」だとは言えるでしょう。
 

フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ▲車の出来としては当然、こちらのザ・ビートル カブリオレの方が上なんですが、ちょっとマジメすぎるというか、オープンカーにしては「肩に力が入っちゃてる感じ」が難点といえば難点かも
フォルクスワーゲン ニュービートル カブリオレ▲こちらはデザインも走りも適度にユルいニュービートル カブリオレ。オープンカーというのは、このぐらい「とぼけた感じ」である方がしっくりくるのかも?
 

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フォルクスワーゲン ニュービートル カブリオレ×総額100万円以下

▼検索条件

フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ×支払総額表記あり

以上、駆け足ではありましたが「ビートルファミリーの超基本的な選び方」というか、選ぶうえでの考え方みたいなものをご紹介しました。これをある程度の参考に、ポップで可愛い「なんらかのビートル」を手に入れていただけたならば幸いです!
 

文/伊達軍曹、写真/フォルクスワーゲン
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。